作品だけでなくアーティストも見る
作品だけを見てアートを買うことが一般的ではあるが、本当に間違いのない作品を買おと思うとそれだけでは十分ではない。
このコラムで何度も言っているように、出来ればアーティストを知って作品を買ってほしいと思う。
というのは、作品というものはアーティスト個人の歴史の欠片であり、アーティストが成長する過程にて残されたものにすぎないからだ。
我々が見ている作品は、アーティストが生きていく過程の一部を映したものであると考えると、アーティストの成長が垣間見える作品を買うだろうし、そういったアーティストを応援したいと思うだろう。
これまでもコラムの中では、将来的に資産価値が上がりやすい作品の特徴として、「発明品」、「インパクト」といった2つ特徴について言及しており、美術史の歴史に残るような発明品や、圧倒的なインパクトがある既視感のない作品を選ぶことを勧めている。
しかしながら、作品が発明品であるか、これまでにないインパクトのものであるかは、実際に相当数の作品を世界中で観ないことにはすぐには理解できない。
であれば、作家個人のキャラクターを知って買うというのも一つの選択肢になるだろう。
これまでも、成長するアーティストの特徴としては
1.感性のアンテナが高い、 2.コミュニケーション力がある、 3.あきらめない忍耐力
というものをあげてきた。
もちろん、直接アーティストと接することで上記の特徴を知ることはできるだろうが、展覧会のオープニングくらいしかアーティストと会える機会はなかなかないのが実情だ。
そこで、もうひとつの成長が期待できるアーティストの特徴として、実際に会わなくても分かるものが「行動力」である。
作家略歴や活動などを見ることでアーティストの行動力を推し量ることができる。
アーティストの行動力
思いついたことをすぐに実行にうつせるアーティストは圧倒的に強い。
それは作品制作についてもそうだが、作家活動についても行動力があるアーティストとそうでないアーティストとの差は大きい。
アーティストは作るだけだった時代はすでに終わっており、活動量の多いアーティストは積極的に制作のためのインプットを増やすし、自分自身のセルフプロデュースのために汗を流す。
もちろん、そのインプットはアウトプットの絶対量を増やすことにつながり、アーティストとしての視野が広がり、より人々の共感を生む作品制作につながっていくのだ。
海外体験が作家を動かす
国内在住のアーティストは作品が売れない現実ばかり見ているが、実際には日本のアート市場は世界の0.7%程度しかなく、日本の60倍の市場がある米国とはまったく状況が違うことを知らない。
アート作品が売れる現実もあるということを知ることが重要だ。
作品が何十倍も売れる市場を知ることで、それまで自分の周りにある常識から解放されて、売るための方策を探ることにつながるのだ。
奈良美智、草間彌生、村上隆などの巨匠とよばれるアーティストはすべて自ら海外へと飛び出し、そこでいかに戦うかの知見を得ていった。
日本から動かないことの弊害のほうがアーティストにとっては大きいのかもしれない。
日本の常識は世界の非常識
例えば、テレビを見ると、G7首脳会議、アカデミー賞、メジャーリーグ、マスターズゴルフなどでは周りは誰もマスクなんてしていないし、アクリル板も存在しないことが分かるだろう。
入国制限やマスク厳守を訴えている先進国は日本くらいであり、狭い世の中で生活していると井の中の蛙になりかねないことを如実に示している。
アーティストも同じであり、じっと考えるよりまずは動く、そして動きながら考えていくことが将来の成長につながるのだ。
周りの状況を確認してから動いたのでは周回遅れになることは今の日本の実体経済を見てみれば分かるだろう。
サイトウユウヤの行動力
タグボートのアーティストであるサイトウユウヤは、抜群の行動力を持つアーティストである。
米国のオクラホマ州で青春時代を過ごした彼は、今回のタグボートの阪急での個展が終わるとアートの聖地であるニューヨークへと移住することになる。
また、話題のNFTアートもすぐに手掛けて販売につなげるなど、圧倒的なスピード感で動いていくタイプであり、世の中の趨勢を俯瞰的に見ながら即座に行動にうつすアーティストだ。
彼の作品は、14歳から慣れ親しんだスケートボードを使ったアートであり、移りゆく都市の景色や時間をスケートボードの上に一挙に表現している。
圧倒的に先を行く彼にそろそろ時代が追いつくことになるだろう。
2022年4月12日(火) ~ 5月2日(月)
営業時間:11:00-20:00
*最終日は18時close、他、館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
個展ウェブサイトはこちら↓
http://tagboat.co.jp/curving-city/