サイトウユウヤは宮城県気仙沼市で生まれました。米国オクラホマ州立セントラルオクラホマ大学を卒業後、現在は横浜を拠点に活動しています。
湾曲した支持体と混沌とした画面作りが特徴のサイトウの作品には、14歳からはじめたスケートボードの動的な感性と、日々滑り抜けていた都市への意識が投影されています。2011年の東日本大震災で直面した「天災との共存」を基調にし、伝統的な『曲木』と現代的な『ラッププリント』という技法を組み合わせることで、人間社会をユニークに切り取る作品を発表しています。
ⒸPepper
サイトウユウヤ Yuya Saito |
ー作品を作り始め、アーティストを目指したきっかけは何ですか?
篠原有司男さんの巨大壁画を見た時です。大きな衝撃を受け、他人の人生にドライブをかけてしまうアーティストの役割に強い興味を持ちました。
ー今の作品形態になるまでどのような過程がありましたか?
加工性が高い素材という理由で木材で製作していましたが、最初は平面の木材でした。途中から自分自身のルーツであるストリートスポーツを抽象化したことで、”曲面”が重要な形状であることがわかり、曲木技法を取り入れ現在のスタイルに至ります。
ー以前の作品から比べてどのような変化がありますか?逆に変わっていないところはありますか?
曲面へのアプローチだけは変わっていませんが、最近では金箔銀箔や、スプレーワーク、3Dモデリングなど様々な手法との組み合わせを試みており、都市論の展開方法に変化が生まれつつあります。
ースケートボードを始めたきっかけを教えてください。
14歳に父親の友人に教えてもらいました。青天の霹靂でした。
ーアーティストステートメントについて語ってください。
湾曲した支持体と、多重にモチーフがレイヤー化された画面作りが特徴の作品には、原体験である14歳からはじめたスケートボードの動的な感性と、日々滑り抜けていた都市への意識が投影されています。人、モノ、出来事が過密に交わり、二度と同じ景色を繰り返さない都市を、無数のドラマが同時発生しては消えていく、混沌と儚さを内包した空間としてとらえてきました。
また、2011年の東日本大震災では、サイトウ自身も津波によって被災したことで、人と都市の関わりについて考えなおす契機になりました。「過密であるが故に生じた混乱と、過密であるが故に醸成されてきた文化」。この矛盾の中に存在する都市は、非合理で、文化的な生き物としての人間を言い表す鍵であると感じました。
現在、また新たな天災と直面しています。古来から、そして今後も天災と共存していく中で、それでもなぜ人は集い、モノを建て、出来事を生み出し続けるのかという問いを『都市』という視点からとらえ直すことで、人間の文化創造に対する欲求を新たな形で露わにすることができると考え、活動しています。
ー作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
工芸品や家具などに活用される”曲木”という伝統技法です。”曲面”という自分自身のルーツを表現する上で非常に相性が良い手法であると気づき、積極的に作品へ取り込んでいます。表面は曲面に強いプリント材を使用することが多いです。変形部分を継ぎ目なく張り込んで仕上げるため、プリントという簡単な印象とは逆に非常に細かい手仕事が必要になります。プリントへの関心については、昔実家が本屋だったこともあり、雑誌の切り抜きやポスターを部屋に貼ったり、常に印刷物に囲まれていた環境が影響を与えています。また、ステッカーを自転車やスケートボードに貼るなど、ストリートにおける印刷物からの影響も大きく、プリント材によって感性が育まれていたのだと思います。
ー作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
作品の自立と維持です。既成の画材を使用せず、土台作りから設置方法まですべて自分で設計します。長期の展示で作品が安全に自立し続けるか、購入したお客様が最小限の手間で組み立てと設置が可能かなど、ビジュアルのユニークさを作ることと同じくらい頭を悩ませる課題です。つまり僕にとっての作品はアート以前に建築なんです。なので相談先のほとんどが建築家です(笑)
ー1番魅力的、印象的な街はどこだと思いますか?
順位付けは難しいですが、ニューヨークです。不安定で、問題が多く、常に混乱している。実は文化醸成とっては良い環境だからです。
ーサイトウさんが思う日本とアメリカのちがいを教えてください。
あえて大味な回答をすると、日本はSomething betterを好み、アメリカはSomething different を好むと考えています。「前例の更新」と「前例を作成」とも言い換えられます。前者は基本1つのグラフの中でどうパラメータをいじって数値を変化させるかのプロセスですが、後者はそもそも別のグラフを作る力を意味します。全く異なるグラフを立ち上げて、それを自分なりの仮説と工夫で証明していくことです。何事も両輪が必要だと思いますが、アーティストとしては、3:7くらいの割合で心構えています。
ー今気になる話題・出来事で、今後作品に取り入れたいことを教えてください。
都市というテーマが、天災や混乱が加速する現代をどう引き受け、変化していくのかが非常に気になりますし、それでも人間の生き抜く力を信じた作品に転換したいです。
ー今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
現在3Dデジタル作品へ取り組んでいます。これまで物理空間で建築的な考えで作品を製作してきてましたが、作品を支えるネジ1つとっても、種類、数、長さなどを選ぶ時「どれが最も美しくスマートか」という点を考えてきました。しかしデジタル作品になった途端に作品を支えるネジの必要性がなくなり、逆にネジがあるとかっこ悪く見えたんです。つまりネジ一本で自立している作品がかっこいいと思えたのは、”重力”という条件(課題)が重要だったということなんです。こういった気づきから、物理空間と非物理空間を往復する作業により、それぞれの空間における感性をアップデートしたいと考えています。現在3Dデザイナーと共に奮闘中です。
2022年4月12日(火)-5月2日(月)
営業時間:11:00-20:00
*最終日は17時close、他,館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
これから米国に拠点を移すサイトウユウヤにとって、個展「Curving City」は渡米前最後の日本での個展となります。是非ご高覧ください。
サイトウユウヤ Yuya Saito |
受賞:
2021
TRiCERA Award / 100人10 2021
審査委員賞 / IAG AWARDS 2021
2020
審査員特別賞 / Independent Tokyo 2020
個展:
2021
Disaster Slide, Contemporary Tokyo, 東京
2020
同時性と共に , Lyuro東京清澄, 東京
展示:
2021
100人10, Shinwa Auction, 東京
GIFT展, What Cafe, 東京
What is Art ?展, What Cafe, 東京
SICF 22, スパイラルホール, 東京
NIHON Super Flat Solution, Ye Fine Art Gallery, 上海
「TAGBOAT ART SHOW」× 阪急 MEN’S TOKYO,東京
Non-Address, Gallery Tagboat, 東京
artworks fukuoka, Whask, 福岡
いい芽ふくら芽リターンズ, 松坂屋, 東京
IAG AWARDS 2021 ,東京芸術劇場, 東京
いい芽ふくら芽, 松坂屋, 東京
アート解放区, LAUNCH, 東京
2021
Guangzhou Contemporary Art Fair 2021, 広州, 中国
ART021 Shanghai Contemporary Art Fair 2021, 上海,中国
JINGART 2021, 北京, 中国
Art Beijing 2021, 北京, 中国