アーティストのキャリアのために我々ができるサポートは、ひとことで言うと「購入すること」につきる。
展示する場所を貸したりといったこともサポートの一つではあろうが、作家にとっては購入してくれる人がいて初めて生計が成り立つのであり、購入が最大の賛辞でありサポートだと我々は思っている。
もちろん一人のコレクターが作家一人を支えているわけではないので、購入者個人が気負う必要は全くない。
まずは気軽に面白くて手ごろな作品を買ってみることだ。
できれば作品を買うときに作家と実際に会ってみてどんなキャラクターなのかを知ることは重要だ。
自分が本当に支援したいアーティストであるかをチェックしたほうが安心して作品購入に踏み切れるだろう。
作品だけを見て直感的に買うよりも、アーティストの人となりを観察して将来的に伸びるだろうと感じて買うことをおススメしたい。
そういった意味では、今週末の17日(土)、18日(日)の両日に開催されるIndependent Tokyoというタグボート主宰のアートフェアには若手のアーティストが150名以上参加しているので、そこで2千点ほどの作品を一気に見た上で自分好みの一品を選ことができるのは一挙両得である。
通常、ギャラリーの展覧会の個展やグループ展で見れる作品数は30点くらいが限界であり、それに比べると数千点から選ぶことができるIndependent Tokyoはアートフェアならではのメリットがある。
また、Independent Tokyoに出展しているアーティストは駆け出しの若手が多いことから、展示している作品の価格もリーズナブルで、ギャラリーを通して買うよりも安く買えることは言うまでもない。
今回30名近いギャラリスト審査員が出展アーティストの作品を審査するのであるが、アーティストのキャリア支援の主役は彼らだけではない。
ギャラリストなので自らのギャラリーで展示が可能なアーティストを探しに来ているのは間違いないが、実は来場者そのものがアーティストにとって大きな存在となりえるのだ。
というのは、アーティストをサポートするのはキャリアの最初の段階ではコレクターの存在が非常に大きいからだ。
コレクターとしては、なるべく早いうちからアーティストの金の卵を探すのがよいだろう。
そして、まだ安いうちに作品を買って所蔵しておくことだ。
若くてこれからのアーティストにとっては、ギャラリー所属になる前の段階では購入者こそが唯一のサポーターなのだ。
今は巨匠と言われている人たちもキャリアの初期の展示では数万円程度で作品を販売していたはずであり、それが今では数百倍にもなることもありえるのだ。
自分の好きなアーティストに投資して、それがいつしか大化けするといったことほど知的で面白いゲームはないだろう。
育成段階からアーティストの活動に関わり、ギャラリーに所属される前の段階で格安で買えることの醍醐味はほかに代えがたいものだ。
さて、次のコラム「アーティストとキャリア ーその5ー」では、キャリアの育成段階でコレクターが関わることの重要さにについて考えていきたい。
それはギャラリーの持つ芸能プロダクションのよな機能から推察したことであり、タグボートの事業もその部分に力を入れていきたいと考えている。