大山貴弘は1993年岩手県生まれ。2018年東北芸術工科大学・芸術文化専攻・彫刻領域 修了。
“Drag Queen”(ドラァグクイーン)という主にゲイ男性による女装パフォーマーをモチーフにした、彫刻作品を制作しています。
近年ではメディアで取り上げられることも多く、認知度は上がってきています、しかし奇抜な容姿やキャラクター性が取り上げられ、その文化や成り立ちを知る機会はまだまだ少ないのが現状です。
Drag Queenの文化や歴史を美術的側面から再考察し、彫刻という確かな存在として表現し残していきたという作家。様々な思いが込められた作品をご紹介します。
大山貴弘 Takahiro Oyama |
煌びやかな存在、Drag Queen
転んでしまいそうなほど高いハイヒール、派手なメイクに長いドレス。それらを身に纏った女装パフォーマーやパフォーマンスを指すDrag Queen(ドラァグクイーン)。「女性性」に象徴されるものを過剰に表現した見た目で近年注目が高まっています。しかし、もともとセクシャルマイノリティの人々が築き上げた文化であるDrag Queenは、常に偏見や差別がつきまとい、その背景への理解が広まっていません。
作家はその姿を、美術的側面から彫刻として表現しようとしています。
色鮮やかな8体の彫刻シリーズ「珍宝虹色女王像」は、LGBTQ +コミュニティの多様性を象徴する”Rainbow Flag(虹色の旗)”の8色に込められた意味をそれぞれの彫刻に託しています。
木彫(楠木)に油彩, 25x 25 x71cm, 2021
【 pink 】: セクシャリティ
木彫(楠木)に油彩, 32x 32 x75cm, 2021
【 purple 】: 精神
楠(くすのき)に確かな形を彫りこむ
作家は加工しやすさと丈夫さを好み、楠(くすのき)を彫刻の素材として用いています。
平安時代の仏像制作をきっかけに確率されたとされる、いくつかの木のパーツを継ぎ合わせた”寄木造”と呼ばれる技法で制作しています。
何十年も何百年も後まで形に残る彫刻というメディアを通して、今の世に存在するDrag Queenの美しさを、時間を超えて問いかけようとしているのです。
木彫(楠木)に油彩, 21x 25 x69cm, 2021
【 blue 】: 平和/調和
木彫(楠木)に油彩, 25x 26 x68cm, 2021
【 turquoise 】: 魔術/芸術
今と未来を生きる人々へ
Drag Queenは常に逆風にさらされてきた歴史を持ちます。しかし絶望の淵にありながら、悲しみや苦しみを笑いへと昇華し、人々を鼓舞する存在として愛されてきました。
人々が今の多様で複雑な世界をどのように生き抜いてきたか、それを形に残すことは、未来で逆境を生きる人々への着実な影響力をもたらします。
作家は”人間の美しさ”を彫刻することで、未来を生きる人々に向けた力強いメッセージを放ち続けます。
木彫(楠木)に油彩, 17x 30 x70cm, 2021
【 orange 】: 癒し
木彫(楠木)に油彩, 20x 25 x75cm, 2021
【 green 】: 自然
木版画(和紙に油性インク).金箔, 118x 84 cm, 2022
大山貴弘 Takahiro Oyama |
【 経歴 】
1993 岩手県生まれ
2018 東北芸術工科大学・芸術文化専攻・彫刻領域 修了
【 展示歴 】
2020.9 「MONSTER Exhibition 2020」入選/渋谷ヒカリエ8/東京
2021.8 「Independent Tokyo 2021」/東京ポートシティ竹芝/東京
2021.10 「岩手芸術祭美術展」現代美術部門 部門賞/岩手県民会館/岩手
2021.12 「Epilogue 2021」/Gallery Art Point /東京
2022.3 「中央公民館アートフェスタ2021」/盛岡中央公民館/岩手
2022.8 「Independent Tokyo 2022」審査員特別賞 /東京ポートシティ竹芝/東京