先日は大阪で開催されたUnknown Asiaというアートフェアに行ってきた。
アートフェアということにはなっているが、出展単位はギャラリーではなくアーティストで、作家それぞれが個別ブースを借りて作品を展示している。
タグボートが主催するIndependent の大阪版ということだ。
紀陽銀行がメインスポンサーでFM802が主催していることもあり、規模の大きいアートイベントとなっている。
出展者数は290名と過去最大で、場所も梅田のグランフロントのコンベンションセンター全面を使った広々とした空間である。
アート、写真、イラスト、デザインなどのクリエイターが数多く出展しているが、ファインアートの割合が少ないのがある意味で商業都市の大阪らしい。
アジア各国から審査員が多くいる一方、ギャラリストの審査員はタグボートを含めてあとは帝塚山画廊だけなので、将来的に作品を売って食べていきたいと考えているアーティストにとっては目立つのにハードルが高く、主に企業からのイラストやデザインのお仕事が欲しい人にとって有利な展開となっている。
ギャラリースペースのような白い壁に少し余白を残したような展示をするクリエイターは少なく、みな壁一面を余すところなく使った展示をしており、なるべく多くの作品を見てほしいという意思を感じた。
ここでは、アートとデザインにおける明確な区別はないし、区別を付けようとすることにさほど意味はない。
よい意味でのカオス感が心地よいのだ。
アートとデザインの違いは、クライアントがいるかいないかで区別されるのが一般的だ。
クライアントからの依頼で作品を作るのがデザインやイラストで、一方、作家の自発的な思いで作りたいものを作っているのがアートだ。
アートとは簡単に言えば「表現と創造」である。
表現の中に制約はなく、アーティストは自分や他者の感情や体験、もしくは日常や歴史的な事柄をアートとして表現することができる。その作品の鑑賞者は必ずしも必要でなく、最終的なアート作品に作り上げるのに決まった工程も無ければルールもない。
いつもはイラストやデザインの仕事をしているクリエイターが今回のUnknown Asiaでは自発的な思いで作った作品を展示しているのを多く見かけた。
クライアントを意識していないのであれば、そこで発表された作品は紛れもなくアートなのだ。
とはいうものの、これまでクライアントワークばかり作ってきた人にとってはどうしても作品の作り方が、デザインやイラストっぽくなってしまうのは仕方ないだろう。
タグボートはあくまで自社で取り扱うアーティストを探すことを目的として今回も審査をさせてもらったのだが、そうなると思いのほかアート市場で通用しそうなアーティストは多くないことを感じた。
また、ファインアートの作家達はデザインやイラスト色の強いUnknown Asiaの中でやや肩身の狭い思いをしているようにも感じた。
そのような中で、タグボートがどんなアーティストを選ぶのか、今後デザインとアートとの関係の中で考えるアーティストの選出方法について以下のコラムの中で明らかにしていきたいと思う。