先週、台北に出張していたのであるが、そこで感じたことは、たまたまアートが売れたギャラリーと戦略的に作品を売る準備をしてアートフェアに臨んでいるギャラリーとではその差が明らかになっていくということだ。
アートフェアは主催者側が顧客を集めるので、出展者が来場者を集めなくても購入を目的としたお客様に来てもらえる。
つまり出展者は何もしなくても、他のギャラリーと同じように来場者と出会えるので、販売が成立するかどうかは、作品次第で決まるのかもしれない。
しかし実際には、アート作品が売れるかどうかは来場者がフェア会場に来るまでにほぼ決まっているのだ。
もちろん何も決めずにふらっと会場に来て目に留まった作品を買う顧客もいるだろう。
しかしながら、その「たまたま」の部分に可能性を見出そうとしているギャラリーはみるみるうちに他のギャラリーに顧客を奪われることになる。
地元から出展しているギャラリーのメリットはすでに作品を買ってもらっているお得意様がいるだけでない。
もしお得意様だけで商売ができるのであれば、自社ギャラリーに来てもらった方が費用がかからないだけ効率的なのでアートフェアに出展しなくてもよいはずだ。
お得意様は重要であるが、それよりも新規の顧客にどれだけ購入してもらえるかがアートフェアに出展する目的だといえるだろう。
そのためには将来の見込み顧客にアプローチして、アーティストの紹介、作家の世界観を伝えるといった事前のプロモーション活動がアートフェアには必要なのだ。
地元のギャラリーという強みを活かしてその地域で効果的なメディアが何かを分かっていてきちんと押さえているところはますます強くなるだろう。
つまりどれだけ準備を周到にしてるかがアートフェアの結果に跳ね返ってくるわけであり、フェアでの勝率も上がってくるのだ。
実際にアート台北に出展している日本のギャラリーを見てみると、知り合いのギャラリーから「台湾は日本の作品は結構売れるらしいよ」といったような噂だけを聞いて台湾で受けそうな作品を出品しているところも少なくない。
最初はビギナーズラックで売れるかもしれないが、それは一発目だけで、戦略的にメディアを通して見せているギャラリーとは力の差がどんどん開いていくに違いない。
一朝一夕で販売につながるものではなく、じっくりと長い時間をかけてその地域に根差した販促をすることが継続的な勝率を上げるのである。
作品の展示方法ばかりに気を配っていて、会期中は何もせずにブースでぼーっと腕を組んで待っているギャラリーはアートフェアでの勝ち方がわかっていないのだと今回の台北で強く感じた。
タグボートは他ギャラリーとの競争を避けることが会社の基本方針ゆえ、アートフェアに出展することはないのだが、今後は様々な形で海外での展示をする機会がある。
そこで、具体的にどのようなメディアを使って、どのようにアプローチをすればよいかについて考えていきたい。
ここでもっとも重要なのはコミュニケーションの質と量であると言えよう。
例えば広告費を払ってメディアに掲載するときの効果は一時的なものゆえ、長期的なファンになってもらうことが重要なアートの分野では広告はやや使いづらい。
どちらかというと広報活動とSNSなどのソーシャルメディアの活用が重要となってくるだろう。
以下にある次のコラムの中ではコミュニケーションの質と量を担保した販促とはどのようなものとなるか考えていきたいと思う。