
「本物の熱狂」か、それとも「計算」か
「どうやら人気が出て売れているし、価格も上がりそうだから買っておこう」
コロナ禍のアートプチバブルの最中、巷に溢れていたのはこうした「計算」に基づく行動であった 。
江口寿史に酷似したイラストアートが高騰したのも「分かりやすいから」という理由と「オークションで上がっているから」とう理由からであった。
しかし、断言しよう。
それは本物の熱狂ではない 。
物事が大きく動くとき、そこには必ず、狂気とも呼べる一人の熱狂がある。
アートの世界も同様だ。
まずギャラリストが作家に対して異常ともいえる情熱を注ぎ、その熱狂に心から賛同したコレクターが作品を買う。
そして、その熱狂がまた別のコレクターへと伝播していく 。
これこそが、本物の市場が形成されるプロセスである。
作品を前にして硬直し、声が出なくなった経験はあるだろうか。
雷に打たれたような感動、身体が震えるほどの衝撃。
優れたアートコレクションを築き上げ、その感動を世に伝えている人々は、例外なくアートに対して「熱く」なっている。
それは決して経験を積めば身につくような小手先の技術ではない 。
一方で、売買の価格差にしか興味を持たず、転売のタイミングを計るような向きは、作品の価値ではなく「数字」を見ているに過ぎない。
そのような薄っぺらな動機で買われた作品は、熱狂が冷めればすぐに手放され、市場に放り出されることになる 。
生成AI時代に求められる「鋭敏な感性」
なぜ今、この「熱狂」や「感動」が重要なのか。
それは、我々が生成AIという巨大な知性と共存する時代に突入したからである。
AIは、あらゆる問いに対して瞬時に最適な「解答」を提示してくれる。
しかし、AIには決定的にできないことがある。それは「問い」そのものを生み出すことだ。
シンギュラリティの時代においては、解答を出す能力よりも、何を問うべきかというアート的な思考が決定的な価値を持つようになる。
アートに触れ、心から感動できる鋭敏な感性(センス)を持つことは、この時代を生き抜くための最も強力な武器となる。
作品から発せられる「社会的な問い」を敏感に察知し、自らの知性と共鳴させる 。
その感性こそが、AIには決して真似できない人間だけの領域を形作るのである。
競争優位性としての独自性
日本を代表する投資家・清原達郎氏は、投資先を選ぶ際にその企業にしかできないことを重視した。
アート投資においても、この代替不能な競争優位性こそが資産価値の核となる。
他の誰かのフォロワーであったり、流行を模倣しただけの作品であったりすれば、それは資産にはなり得ない 。
見た瞬間にその作者であるとわかる圧倒的な独自性、そして一貫した世界観が重要なのだ。
清原氏が企業の中身を徹底的に精査したように、コレクターもまた、作家が持つ「思想の深さ」と、それを形にする「表現する力」を冷静に見極める必要がある。
安易に「今流行っているから」という理由で投機に走るのではなく、まだ評価されていないが、確実に本物の熱狂を孕んだ作家を安いうちに見つけ、長期で保有する 。
これこそが、アートにも応用できる「負けない投資」の鉄則である。
百年後も残る「代表作」に集中せよ
資産防衛の観点から、あえて戦略的な提言をしたい。
最初の一枚こそ、妥協せずにその作家の「代表作」を選ぶべきである 。
優秀な投資家が割安な優良株に確信を持って投資するように、50万〜100万円という価格帯の、作家の本質が凝縮された代表作に資金を集中させること 。
安価な小品を数多く集めるよりも、一点の強い作品を持つ方が、将来的に価値を落とさないための最も合理的な市場戦略となる 。
我々がアートのプチバブルで猛省すべきなのは流行りのイラストアートに乗ってしまったこであり、これから必要なことは本質的な価値への回帰である。
美術史の文脈に連なる歴史に残る系譜と、現代を撃ち抜く社会的な問いを備えた作品を、自らの鋭敏な感性で見極めてほしい 。
その感動の瞬間に立ち会うことこそが、知的な投資の始まりであり、文化を継承する第一歩となるのだ。
【次回の予告】
第3回では、現在のインフレ・円安という過酷な経済環境において、なぜ優秀な経営者が「現金」を捨てて「アート」を持つのか。投資家目線で、より実利的な資産防衛のロジックを解き明かします。
【tagboat Art Fair】
2026年4月24-26日 開催の「tagboat Art Fair 2026」のチケットお申込フォームです。
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