松森士門は2020年に東京藝術大学絵画科油画専攻を卒業したばかりの若手作家。
筆の勢いを生かし、ライブ感あふれるストロークを生み出しながら、作品の鮮度を何よりも大切にして制作しています。
その実力は着実に評価され、2021年3月に開催されたtagboat art fairではオープンと同時にコレクターが駆け付け購入するほど。
一目見たら忘れられない、独特の色彩があふれる作品の魅力に迫ります。
松森士門| Shimon Matsumori |
その瞬間の勢いを描き切る
大胆なストロークを得意とする松森士門。
筆の軌道を瞬時にコントロールし、緊張感あふれる筆跡を生み出します。
ライブ感あふれる筆さばきで、見ていて気持ちが良くなるようなストロークを繰り出せるのは、確かな技術力があるからこそ。
妥協を許さず、貪欲に表現の可能性を探っています。
「Shear Me」100 x 80.3 cm, パネルに油彩
「人をプラスチックのような質感で描く事で、描かれた人物の表情や個性より絵に視点がいくよう試みました。」
「タイドプール」91 x 116.7 cm, キャンバスに油彩
「あまり地元での出来事を作品にしないのですが、コロナで帰る機会が減ったので海に行った時の記憶を探ってみました。」
独自の色彩感覚と着眼点
強烈なインパクトを放つ作品は、一目見ただけでは、何を描いているのかすぐには分かりません。
誰もが知っているようなモチーフでも、独特な色の捉え方や、アクロバティックなアングルで描いているのです。
描かれているもののイメージを打ち壊すような鮮やかな色彩や、何層の色が重ねられているのか想像もつかない奥深い色合い。
独特な発想で解釈したモチーフは、松森にしか表現できない色・形となって私たちの前に現れます。
「歯磨き粉チューブ」 91 x 63.2 cm, キャンバスに油彩
「毎日手にする物だと思ったので、手にする度に考え迷えるよう、おもいっきり原形を崩して描きました。」
「たまたま飛行帽(北海道の方が被っていた)を目にして、描いたら面白い表情になりそうだと思い描きました。」
「『うましお味』という美味しい事を自負した名前って最高だなと感じ、絵にしようと思いました。」
無難な絵はぶっ壊す
松森は、筆の勢いを大切にする一方、冷静に全体の調和に意識を向けながら制作しています。
そのモットーは、「無難な絵はぶっ壊す」。
以前は明確な完成イメージを持って一気に描き上げていた作品は、今では時間をかけてじっくりと筆のタッチを重ねるようになったといいます。
予定調和を避け、瞬発力ある筆跡を織り交ぜながら慎重に作られていく画面は、いつ見ても新鮮な驚きを与えます。
松森は凝り固まった表現を打ち壊しながら、どこまでも飽きない作品を追い求めていきます。
「菜箸がモチーフの絵を見たことがなかったので、一番になろうと思い描きました。」
「構造色ぽっぽ」 103 x 72.8 cm, パネルに油彩
「人を恐れず果敢に近寄って来る鳩が苦手でした。ただ、鳩の構造色だけはつい見てしまうのでその色を影で表現してみました。」
「オタマタマ」72.7 x 116.7 cm, キャンバスに油彩
「昔は触れた虫やカエルはもう嫌いなものになってしまいました。おたまじゃくしはまだ大丈夫みたいです。」
松森士門| Shimon Matsumori |
1996年生まれ
2020年 東京藝術大学 卒業