柳早苗は、過去から未来へと続く世代を超えた繋がりを、木という素材に毛糸などを縫うことで表現しています。
自然から生まれる素材である木を使い、子供のころに慣れ親しんだリリアンで縫うことは、母から娘へ代々継承される、ずっと変わらないものを表現しているかのようです。
第15回 TAGBOAT AWARDにて見事グランプリを受賞し、ますます高まる表現への飽くなき探求心。
優しく深い思いが込められた作品をご紹介します。
柳早苗 Sanae Yanagi |
木から感じる時の重なり
木を針、紐、リリアンで縫い、木から得られたインスピレーションやイメージもとに作品を制作する柳早苗。
リリアンの柔らかい手触りや、ぬくもりを感じさせる色彩は、無邪気だった幼いころの記憶を呼び起こすようです。
長い時間を過ごしてきた木に紐を通すため、ドリルで穴を開けるとき、
作家は時代をワープしていくかのように感じるといいます。
糸が示す、人との繋がり
作家が木をリリアンで縫いながら表現するのは、人から人へ、時を超えて受け継がれるもの。
震災後の不安定な状況の中、バランスをテーマに紐や縄で吊る作品を作ったことから糸を使うようになり、
理想の女性像としての母を作品に表現したことをきっかけに、ますますこのコンセプトを追求するようになります。
コロナ禍を経て、人と人とのコミュニケーションの形が見直される現在、
作品の根幹にある思いが、人々のこれからを探るきっかけや助けになると考えて制作しています。
木と人をとりまく環境
田植えをしながら暮らす作家は、身近にある木と人々の付き合いについて日々考えています。
森林から切り離された木は、作品となり、都会や人の暮らす空間に運ばれます。
木が生まれ変わり新しい姿になること、それによって変わっていく環境を想像しながら、
時の流れを作品の中に込め、過去から未来へと変わらないものを受け継ごうとしているのです。
柳早苗 Sanae Yanagi |