吉田樹保は1997年東京に生まれ、東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻に現役で入学、2020年に卒業しました。
2022年3月に開催された「tagboat art fair2022」では発表した作品が全て完売するなど、注目の若手作家の一人です。
作品の多くは、極彩色の昭和レトロなキャラクターたちと、湿度たっぷりに描かれた写実的な背景で構成されています。強烈な違和感を与えるその組み合わせは、いったい何を表現しているのでしょうか。
古くから伝わる民話に取材しながら、現代における語り部のように物語を紡ぐ作品をご紹介します。
吉田樹保 Mikiho Yoshida |
風土に根差した物語
「新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚」2020年, インスタレーション
吉田樹保の作品は、ある地方に伝わる民話を徹底的に取材の上、その実態を解き明かし再構築しながら制作されています。
現代の私たちが耳にすると一見荒唐無稽に思える古い物語の中には、いくつもの鋭い示唆が隠されています。
習俗やそこから派生した物語は、何代も語り継がれる中で変化し、より良く磨かれたもののみが残り、今日まで語り継がれています。
「新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚 壱」2020年, キャンバスに油彩 、アクリル, 1303×1940mm
コンテクストと概念のキメラ
背景を油絵具で写実的に描き、前景にはアクリル絵具で昭和レトロなキャラクターやモチーフが描かれます。
これは作家が独自に編み出した「キメラ画」という手法で、油絵具は文脈や状況などの説明、アクリル絵具は概念を表しているのです。
舞台の書割のように描かれた背景とキッチュでポップなイメージが合成された、一見ちぐはぐで突飛な画面が、そこにある物語への興味を掻き立てます。
「新訳風土記集 其ノ参 石楠花 弍」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 455×455mm
過去から語り継がれる今へのてがかり
「物語」は、文字のない口伝の時代から人々の暮らしのなかに存在してきました。誰しもに訪れる死について考え、人生をよりよく生きていけるように、現代に生きる私たちは物語から大切なことを学びます。
鑑賞者は作品と向き合うことによって、文化の継承ツールである物語から、そこにある知恵を伺い知ることができます。
長い時間をかけて取捨選択され、伝えられてきた情報の変遷を見つめることで、作家は人間の本性に迫ろうとしているのです。
「新訳風土記集 其ノ参 観月峠 四」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 直径500mm
「新訳風土記集 其ノ参 観月峠 参」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 直径500mm
吉田樹保「Naughty」
2022年5月24日(火) ~ 6月13日(月)
営業時間:11:00-20:00
*最終日は18時close、他、館の営業時間に準ずる
入場無料
会場:阪急MEN’S TOKYO タグボート
〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 7F
銀座、阪急MEN’S TOKYO 7F、タグボートのギャラリースペースにて、現代アーティスト・吉田樹保による個展「Naughty」を開催致します。
競争率20倍の東京藝術大学油画専攻に現役で入学という類まれな才能を持っている吉田樹保。
彼女は「文化の継承・変異」をテーマに、固有の昔話に出てくる寓話や風習を自ら再度作り直し、文化の継承ツールとして、物語をポップに昭和レトロな色彩で表現します。
今年3月に開催された「tagboat art fair2022」では発表した作品が全て完売するなど、注目の若手作家の一人です。キメラ画という異なる画材で描いたものをひとつの画面に同居させる手法を用いて、人間が創造してきた文化とその伝達方法を探り、人間の本性に迫ります。
タグボートでは初の個展となる本展では、新作を含む油絵作品を展示・販売いたします。古い書物の昔話を現代的な感覚に訳した吉田樹保渾身の作品をどうぞご高覧ください。
CONCEPT
「わんぱくな繁茂」
ヒトは、個、個と個、個と集団、集団と集団と生存の在り方が豊富ですが、他との関係性が生じると、途端に奔放ではいられなくなります。共通項や差分を探り合いながら、恐る恐るわんぱくさを出したり引っ込めたりしていくのです。
今回のテーマ「わんぱくな繁茂」では、奔放でのびやかな太いアウトラインのビジュアルイメージとモチーフの連続性から、キャラクターたちが活発に増殖していく姿を通して、あるがままの存在の肯定や輝きを活写することによって、ヒトの中にあるおっかなびっくりを解放するような、わんぱくな展示にしたいと思います。
吉田樹保
展示予定作品
「新訳風土記集 其ノ参 観月峠 什仇」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 1940×1303mm
「新訳風土記集 其ノ参 観月峠 什壱」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 455×455mm
「新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚 四」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 530×410mm
「新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚 六」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 530×410mm
「新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚 七」2022年, キャンバスに油彩、アクリル, 直径500mm
吉田樹保 Mikiho Yoshida |
1997 東京都生まれ
2016 東京藝術大学 美術学部絵画科油画専攻 入学
2020 東京藝術大学 美術学部絵画科油画専攻 卒業
《受賞》
2017 久米桂一郎奨学基金(久米賞) 受賞
《展示》
2017 「KUME SHOW」(久米賞受賞者展) 東京藝術大学学内展示スペース、東京
2020 「第68回東京藝術大学卒業制作展」 東京都美術館、東京
2021 「ART TAIPEI 2021台北国際芸術博覧会」 世界貿易センター一館(台北市信義区信義路)1階 、台湾