武蔵野美術大学造形学部映像学科卒。
東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。
映像が持つ「密度」に着目したイメージ創造を行っています。
彼がカメラによって切り出すのは、日常の中ではあまり目に留めないような光景です。よく見ると解体中や建設中の現場が建物の反射に映り込んでいたり、奥行きが歪んで虚実が交錯したかのような画面が創り出されています。
それは、わたしたちが普段見ている/見えているものについて、その不確かさを問いかけているようです。
前田博雅|Hiromasa Maeda |
写真のような映像
こちらの作品をご覧ください。一見すると写真作品のようです。
しかし、しばらく眺めていると、ビルの窓ガラスに隙間を縫うように走る車が映りこみ、その間を人々が歩いている様子が徐々に目に入り、
それが映像であることに気づきます。
幼少期からカメラに親しんでいた前田は、学習院初等科に入学後写真部に入り、高等科まで所属。その間に写真に関する基礎的な知識を得ました。
その後、武蔵野美術大学造形学部映像学科(現在は造形構想学部に映像学科が移設)に入学し、写真と映像の両方を学びました。
さらに、映像や写真をはじめとしたメディア表現への理解・実践を深化させ作品の社会性を探求すべく、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻へと進みました。
この独特な、映像でありながらも写真のような性質を持つ作品は、幼いころからの写真というメディアへの興味と知識を反映しています。
「The City Layered (Shibuya #1 Nov. 4th, 2019 ED-1)」17.8 x 30.6 cm, 映像(1ショット、ループ)。小型再生機接続済。使用電力:最大25W
「The City Layered (Shibuya #2, Nov. 4th, 2019)」 17.8 x 30.6 cm, 映像 (1ショット、ループ)。小型再生機接続済。使用電力:最大25W
「The City Layered (Shibuya #4 Nov. 4th, 2019 ED-1)」17.8 x 30.6 cm, 映像(1ショット、ループ)。小型再生機接続済。使用電力:最大25W
発展し、重なり続ける都市のレイヤー
映像が持つ「密度(情報量)」に着目し、制作しているという前田。
代表作である「The City Layered」シリーズでは、「都市」の姿を映します。
整然と立ち並ぶビルの垂直・平行のラインと、窓ガラスに映りこむ雑踏の組み合わせで、密集した都市の風景を巧妙に切り取っています。
前田は隅田川沿いに生まれ育ち、下町の風景と都市開発で続々と建てられるビル群に親しみながら過ごしました。
次々とビルが積みあがって、壁のようにそびえたって空を埋め尽くしていくという様子が、ある意味前田にとっての「原風景」であるといいます。
「都市」というテーマの中には、違和感のあるものが、慣れ親しんだ風景でもある、という両面性ある実感がこめられています。
「The City Layered (Marunouchi #1, Oct. 30th, 2019)」 30.5 x 25.4 cm, 写真/インクジェットプリント
「The City Layered (Shibuya #3, Nov. 4th, 2019)」 25.4 x 30.5 cm, 写真/インクジェットプリント
ふと立ち止まって、都市と社会を見つめる
計算された構図と映像の密度に裏打ちされた、ずっと眺めていたくなるような作品の魅力。
絶妙な構図は一歩引いた冷静さと同時に、不思議な没入感を与えます。
一見何気ない映像を鑑賞する体験は、小さな驚きと、どこか穏やかな空白の時間をもたらし、観る人によって様々な記憶や感情を呼び起こします。
自分がよく知っている、あるいは知らない都市を俯瞰することで、新たな気づきが生まれるかもしれません。
「The City Layered (Daiba #1 Nov. 1st, 2019 ED-1)」17.8 x 30.6 cm, 映像(1ショット、ループ)。小型再生機接続済。使用電力:最大25W
「The City Layered (Ginza #1, Aug. 26th, 2019)」 25.4 x 30.5 cm, 写真/インクジェットプリント
前田博雅|Hiromasa Maeda |
2018年武蔵野美術大学造形学部映像学科卒。
2020年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。
映像の時間軸と、その構図やライブ性など他のあらゆる要素との関係を探る制作を行う。特に映像が持つ密度、すなわち情報量に着目したイメージ創造を行う。
<主なグループ展>
2020 年
CANBIRTH (アート解放区GINZA)|銀座髙木ビル
MEDIA PRACTICE 19-20|東京藝術大学 元町中華街校舎
2019 年
アート解放区DAIKANYAMA|TENOHA代官山
藝祭 2019|東京藝術大学 上野校舎
岸に立つ|横浜市民ギャラリーあざみ野
OPEN STUDIO 2019|東京藝術大学 元町中華街校舎
MEDIA PRACTICE 18-19|東京藝術大学 元町中華街校舎
2018 年
OPEN STUDIO 2018|東京藝術大学 元町中華街校舎
2017年度武蔵野美術大学卒業制作展|武蔵野美術大学
2017 年
映像は死んだのか|武蔵野美術大学課外センター