井口エリーは1989年名古屋市生まれ。2015年 愛知県立芸術大学大学院美術研究家彫刻領域修了。
現代を生きる人々の、取り澄まして着飾った一見スタイリッシュな外見。しかしその内面には、普段秘めている動物的な本能や感情が渦巻いています。
社会を生きる上で規則に縛られ、厳重にコントロールされているはずの人間でも、ふとしたときに姿を現すのは「獣」の姿です。
作家はtagboat Art Fair 2023(2023年4月14日-16日開催予定)に出展予定。人々が隠し持つ本能の姿をとらえ表現しようとする、魅惑的な作品をご紹介します。
井口エリー Erie Iguchi |
*本記事は2020年公開の記事です。
戦うハイヒール
作家の作品にたびたび登場する「ハイヒール」というモチーフ。それは現代を生き抜く女性の姿でもあり、作家自身の姿でもあります。
艶やかな靴のヒール部分は様々な獣の脚となっており、取り繕った外面とは裏腹な怒りや憤りを象徴するかのようです。
日常生活に隠された人々の本当の顔を、作家は作品を通して表そうとしているのです。
ミクストメディア(樹脂、木、フェイクファー), 50x 110 x56cm, 2015
FRP・フェイクファー・合成皮革・木材, 32x 35 x16cm, 2017
FRP・合成皮革・木材, 30x 35 x15cm, 2015
理性では抑えきれない獣の姿
折り合いをつけて生きていても、ふとしたときに隠しようも無く露出する本性を、誰しも見たことがあるのではないでしょうか。
Hidden nails「隠された爪」と題された作品は、美しく塗られた爪や口紅の裏に隠された、心の内にある武器を思わせます。
また、マン・レイの作品へのオマージュが込められた作品「Drown in you」では、異性に抱く感情に溺れる人々の姿を克明に表しています。
ミクストメディア, 24.8x 15 x4.5cm, 2021
ミクストメディア, 27x 33 x17cm, 2021
ミクストメディア, 27x 33 x17cm, 2021
日常にひそむ本能
体裁を保つため美しく整えられたものは、隠したい醜いものの裏返しとも考えることができます。
完璧なメイクを施した顔でもあくびをすれば歪み、スーツを着こなす政治家は野次を飛ばしお互いの話を聞こうとしません。
しかし、時折どうしようもなく現れる剥き出しの本性は、ある種目を離すことができない魅力を放っているのかもしれません。
ミクストメディア, 14x 11 x12cm, 2023
真空成型・水性樹脂, 21x 29.7 cm, 2020
ミクストメディア(水性樹脂、塩ビシート、合成皮革、羽根など), 16x 16 x4.5cm, 2020
tagboat Art Fair 2023
〒105-7501
東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝
東京都立産業貿易センター 浜松町館 2F,3F
JR/東京モノレール 浜松町駅(北口)から徒歩5分
ゆりかもめ 竹芝駅から徒歩2分
都営浅草線/都営大江戸線 大門駅から徒歩7分
井口エリー Erie Iguchi |
1989 名古屋市生まれ
2012 愛知県立芸術大学美術学部彫刻科卒業
2015 愛知県立芸術大学大学院美術研究家彫刻領域修了
受賞歴
Tokyo midtown award2014 優秀賞&オーディエンス賞
LUMINE meets art award2016
第15回TAGBOAT award 準グランプリ
私の作品における重要なモチーフの一つに「ハイヒール」があります。ハイヒール作品群は現代を生き抜く女性のイメージの投影且つ、私自身の投影でもあり、最大の特徴としてヒールの部分が獣の足になっています。
ヒール部分を獣にする背景には「社会に対し憤った女性が履いていた片方の靴を衝動的に投げ、ふと、我に返った時に、押さえつけられなかった憤りや行い、周りからの目線が醜く、もう片方の靴を見たら、まるでそれが獣の足のように見えた。」というストーリーが込められています。
ポップな外見のハイヒールと内に秘められた獣性という二面性を持たせることで、日常生活において意識されない人の本質というものを間接的に気付かせること目的としています。