昨年は多くのアーティストが展示の機会を失うこととなった。
予定していた展覧会が中止となり、アーティストは稼ぐ術をなくして路頭を迷うことにもなった。
リアルでの展示ができなかったことでネットでの作品紹介や販売に切り替えたアーティストもいたが、付け焼刃ではネットビジネスがうまくいくはずもない。
我々ができることはそのようなアーティストを守ることであり、販売機会を増やすことにある。
海外での展示が物理的にできなかったので、昨年は国内での展示の規模と日程を大幅に増やすこととした。
おそらく2020年はタグボートが規模的には日本で一番展示をしたギャラリーだろう。
その考え方は今年も変わることはない。
タグボートの基本理念であるtagboat wayの中でもっとも重要なのは、一人でも多くのアーティストが食べていけるようにすることである。
もちろん、タグボートの取り扱い作家が優先されるのは仕方がないことだが、それ以外でもタグボートのイベントに参加されるアーティストも同じように支援していきたいと考えている。
だからこそ、昨年12月に開催したIndependent Tokyoというイベントでは、タグボートとは関係なく30名のギャラリスト審査員が作家をスカウトできるようにしているし、来場するコレクターに対し作家は直接作品を売ることができる。
そこにおいて一切の手数料は発生しない。
こういう活動は2021年も引き続きやっていきたい。
まだまだやれることはあるはずだ。
才能があるアーティストの活動を止めてしまうことは、アーティストという職業に対する希望がなくなることにもつながる。
そもそもアーティストという職業は不安定で儲からないと言われる中で、展示するスペースやイベント主催者側の都合によって活躍する機会を奪われることは死活問題だからだ。
アーティストはほとんどの場合が一人で行う職業なので、モチベーションを失うことはそのまま職を失うことにつながる。
さらには、作品には旬があり、作ったばかりの作品をなるべく早くお客様に見てもらう必要がある。
なぜかというと、そこには作家のモチベーションの問題があるからだ。
アーティストを続けるよりも、コンビニでアルバイトをするほうが確実にお金になるので簡単にあきらめることができるのだが、それでは夢がない。
才能がないから夢をあきらめるのと、周りの環境によって夢をあきらめるのとは意味が違うのだ。
コロナ禍では誰もがイベントに対してリスクを感じるだろう。
どれだけ対策を講じていても、ゼロリスクはありえないからだ。
しかしながら、多くの若手アーティストの発表の機会が失われて、アーティストという職業で生きていく希望をなくすというリスクもあるはずだ。
感染リスクがあるという理由で、アートの展示を中止にすることは誰にでもできる。
しかしながら、リスクがある中でいかにして実施するか、お客様を集めるか、販売につなげるか、というのは非常に難しい課題であるが、やらなければならない責務を私たちは感じている。
今年は、1月20日から2週間、阪急メンズ東京の1階で開催する「TAGBOAT ART SHOW」のほか、3月上旬に開催する「TAGBOAT ART FAIR」など、イベントが盛りだくさんだ。
また、 Independent Tokyoは来年8月7、8日と東京オリンピックに合わせての開催を予定している。
特にTAGBOAT ART FAIRは、リアルのビジネスをオンライン化するのではなく、リアルとオンラインのどちらでも利用できるようなマルチチャネルで楽しめるアートイベントを日本で初めて構築する予定だ。
もちろん、ひとつのギャラリーが単独でアートフェアを開催するのも日本初である。
イベントの中止を決定することは誰でもできるが、タグボートは誰もがやれないイベントを作っていくことで、折れやすいアーティストの夢をつないでいきたいと考えている。
http://www.tagboat.com/artevent/tagboat-art-fair2021/