現在のNFTアートの課題
現段階ではまだ黎明期のNFTアートであるが、本格的にマーケットが拡大するまでには多くのハードルがあると我々は考えている。
その様々な課題を克服することによって、NFTアートがデジタルアートという領域での新しいマーケットを作ることに繋がるのだ。
まずは現時点でのNFTアートのマーケット拡大における課題を整理してみよう。
一つ目が、購入するためにはイーサリアムという仮想通貨のアカウントを持つ必要があることで、現状ではクレジットカード決済ではNFTアートを買うことができないという問題がある。
同じ仮想通貨でも日本人の多くが持っている「ビットコイン」では決済できないため、ビットコインホルダーは仮想通貨の取引所で手数料を払ってイーサリアムを購入しなければならないのだ。
もう一つの問題が、どのNFTアートを買えばよいのか分からないということである。
Open SeaやNifty Gatewayといった海外のNFTを売買する巨大プラットフォームには、何十万点ものNFTのゲームキャラクターや音楽など様々なアイテムがある中でデジタルアートも数多く掲載されている。
実際にサイトをのぞいてみると分かるのだが、ぱっと見ただけではファインアートと呼べるものは少なくイラストのようなものが大多数なので、一般的な現代アート愛好家にとっては、画像検索しても欲しい作品にたどり着くのは至難の業だ。
3つ目の問題が、現在はほとんどのNFTアートがオークション取引となっているため、希望の価格での購入が難しいことだ。
前回のコラムでも書いたが、販売する側も買う側も投機目的がほとんどであるため、オークションという競りが一つのゲームとして捉えられている。
さらに購入者の多くはイーサリアムの仮想通貨が上昇した含み益で買っているため、あまり価格を気にせずに買っているのが現状なのだ。
一方、一般的な作品購入者にとっては、いくらで買えるかが想像がつかないオークションという購入方法に慣れないこともあるだろう。
以上のような点を克服することで、NFTをとりあえず流行りだから乗っかっておこうという考えではなく、将来的に拡大する市場として長期的に取り組むことが可能となるのだ。
タグボートが目指すNFTアートの姿
タグボートはNFTを単なる投機対象として捉えるのではなく、以下のとおり、デジタルアートの信頼性を上げ、流通の領域を広げ、安心して購入できる手法で、且つ、コレクターが作家をパトロン的に応援する考え方を浸透させることが重要であり、その施策が長期的にNFTの市場を広げることにつながると考えている。
そうすることによって、デジタルアートの価値だけでなく、同時に作家が作る他の平面作品などの価値を上げる要因になっていけば、新たなマーケットが作られる可能性があると考えている。
1)デジタルアートの信頼性を上げる
多くのマーケットプレイスにあるNFTアートが現代アートの文脈からは評価が付けにくい中、タグボートは自社のサイトの中で選別した取り扱い作家によるNFTアートを販売していきたいと考えている。
つまり、タグボートが積極的に作品を展示しプロモーションする厳選された作家のみを販売の対象とするのだ。
そうすれば、どの作品を買ってもタグボートがサポートし続けていくので間違った作品投資となることは少なくなるだろう。
2)流通の領域を広げる
イーサリアムのアカウントがなくても、クレジットカードで簡単に買えることが多くの購入者にとっての利便性と流通量を広げることにつながるだろう。
現在は仮想通貨の流通量の過半数を超えるビットコインに対抗してイーサリアムの所有者のメリットを最大化するためにイーサリアムのアカウントからしか買えない施策となっているが、初心者にとってはハードルが高いし、長期的に見ると利便性が高いとは思えない。
イーサリアム中心の世界から離れることでしかマーケットは広がらないと考える。
タグボートのお客様が通常のECで買うのと同じように簡単にクレジットカードで決済することが必須なのだ。
3)安心して購入できる方法
いくらで買えるが確定しないオークションという価格をつり上げる手法は、顧客にとっては安心はできないだろう。
通常オークションはセカンダリー作品を買う手段であり、一方ギャラリーで買うのは定価販売という違いがある。
コレクターにとっては決まった定価で買えることはメリットの一つだ。
しかも、デジタル作品であるからこそ、通常のキャンバスやドローイング作品の数分の1の価格で買えることにお得感があるのだ。
また、タグボートでNFTを買った顧客が、一定の年月が経った後にセカンダリーとしてタグボートでも再販できるようにしたいと思う。
その場合は、デジタルアートが同じ作家の通常作品と同じくらいの値上がり率で販売していきたいと思っている。
もちろん、Open Seaなどの他のプラットフォームを活用した二次販売も可能であり、そこで価値が上がった価格も考慮してセカンダリー価格を設定していくこととなるだろう。
つまり、一般のアート市場のように、プライマリーの定価販売とセカンダリーのオークション販売の組み合わせによってマーケットを長期的に拡大することが可能なのだ。
4)コレクターが作家をパトロン的に応援する
作家から作品の使用許諾権を得て、それを商業利用することで作品の露出を高めることは基本的には作家のプロモーションにつながる。
作品画像を活用したポスター展、Tシャツ、トートバッグの販売だけでなく、SNSでの発信も容易となるため、コレクター自身が購入作家の価値を上げることが可能となるのだ。
これまで作家の価値を上げるのはギャラリーの専売特許であった時代から、直接コレクターが作家のパトロンとして価値を上げるサポートができる時代になるのは目の前となってきている。
タグボートとしてはこのような機能をNFTに入れることだけでなく、セカンダリーで作品売買があったときに金額の一部を作家に還元できる機能(欧州での追求権)を入れることにも将来の可能性があると考えている。
以上のような4つの施策を行うには、タグボート単独では難しいため、他社との協業によって実現が可能だ。
なるべく早い段階で、実現への道のりを発表できればと思っている。