タグボートの事業ミッションには以下のような文言があります。
「競争はしない。差別化とかではなくて、他社とは完全に違うことをする」
このミッションは徹底しておりまして、アート業界では常識とされていることでも、それをあえて疑うことで独自の道を進んでおります。
競争がないというのは非常に健全かつ独占的に事業を運営できますので、正直言ってこのミッションを徹底することはメリットしかありません。
ある意味でアート業界の常識の逆張りを行くことで、優位な展開ができると信じて事業をやっております。
現在タグボートがやっていることを他の業者が真似ることで参入者が増えてくると、タグボートは現在のビジネスモデルをやめて別の業態を探すこともありえます。
タグボートはオンラインギャラリーとしては国内最大ではございますが、最近は多くのスタートアップ企業がアートのECを始めており、この業界が熾烈な競争となる前に違うことを始めているかもしれません。
さて、先日CADAN(日本現代美術商協会)のアートフェアに行ってきました。協会に所属する30ギャラリーによるプチアートフェアです。
天王洲にある寺田倉庫のおしゃれなスペースを活用して各ギャラリーが3メートルほどの壁に区切って比較的小ぶりの作品を展示しているのが印象的でした。
このアートフェアでは展示している作品の価格を出さないどころか、作家名までも表示されておらず、まさに目で見て感覚的に楽しむ「美術館の展覧会」の様相を醸し出していました。
もちろん作品自体は販売していますし、そこにいるギャラリストに聞けば作品の価格も教えてくれますので、アートフェアとしての体はなしているとは思われますが、購入する初心者にとってはやや不親切かもしれません。
アート通の方で且つ展示作家をほとんど知っているような熟練コレクターにとっては面白い展示だったのかもしれません。
30ものCADAN所属ギャラリーはこのやり方に納得してフェアに参加されていたようですが、おそらくタグボートはこのようなアート業界の逆を行くことになるかと思います。
タグボートが現代アートの業界で常識となっている逆張りとしては以下のようなことがあります。
■ 価格を明記する
タグボートはオンラインギャラリーからスタートしたこともあり、ウェブ上で価格を見せるのは当然です。
阪急メンズ東京にあるギャラリースペースも、百貨店の中にある店舗ですから当然価格を表記しております。
展示において価格の表記が作品を邪魔すると言うギャラリーの方もいらっしゃいますが、タグボートは顧客の利便性を第一に考えて価格の明記を義務と考えています。
■ 情報をオープンにする
展覧会で展示する作品は基本的にSNSやウェブサイトですべて見せるようにしています。
メイン画像となる一枚のみを見せて、「あとは来てのお楽しみ」とするギャラリーが多いのですが、それはおそらく、「すべてウェブやSNSで見せるとギャラリーに来てもらえない」ことを気にかけているのかもしれません。
タグボートはそのような情報の出し惜しみはせずに、作家の情報、インタビュー、動画など必要な情報はなるべく出すことを心がけています。
すべての情報を見せることで、気になってしまう顧客に来てほしいのです。
■ 従来の従来の美術メディアを使わない
日本にいる現代アートのコレクターは10万人程度と言われています。
また美術誌で現代アートのみを専門的に取り扱っているのは、美術手帖だけですが現在は隔月発行となっています。
ほかにもいくつかの美術誌がありますが、アート専門誌全体としての規模はさほど大きくはありません。
コレクターとその予備軍を含めても現代アートファンの数は日本の労働人口の1%未満ですので、コアなファンだけを対象としてもマーケットは広がりません。
今後広がりの可能性がある99%以上の層にリーチするためには従来の美術メディアでは十分ではありません。
タグボートのミッションである「一人でもアートで食べていけるアーティストの数を増やす」ことを実現するためには、美術メディア以外の有効活用が必要となります。
■ アートフェアには参加せずに自分で作る
ギャラリーが自社のスペースで作家を展覧会形式で見せる以外での販売方法としては、アートフェアへの参加が一般的です。
ギャラリー1社ができるプロモーションには限界があるので多くのギャラリーが集まってブース型の展示販売会を開催するものがアートフェアです。
しかしながら、このアートフェアは弱肉強食の競争の世界であり、資本力のあるギャラリーが中小ギャラリーの顧客を奪ってしまっているのが現実です。
タグボートはこのような競争を避けたいと思っておりますので、アートフェアに参加することはいたしません。
コレクターに対し作家のプロモーションを拡散させるために、自らアートフェアを主催するのがタグボート流となります。
競争を避けるのは簡単ですが、その環境の中で独自の道を実施するのは難しいのですが、やりがいのある仕事です。
このようにタグボートは自社の事業ミッションに基づいて、業界の逆張りをしながら独自路線で事業を進めておりますが、次回以降もタグボートの事業ミッションについてもう少し突っ込んだお話をしたいと思います。