最近はアーティストが自らInstagramで作品を投稿することが多く、そうすると頻繁に外部から直接声がかかるようだ。
また、Facebookの法人ページを作家自身で運営する場合も外部からのアクセスが多い。
その中には国内はもとより海外のギャラリーやコレクターから出展依頼や購入に関するメッセージが届くことも少なくない。
声がかかるのはよいとはいえ、海外の顧客への支払い方法や作品の発送をはじめ、契約などのやり取りは煩雑なものが多く、慣れていなければ不安なこともあるだろう。
アーティストが食べていこうとすれば小さな国内マーケットだけを相手にしていては十分ではなく、早めに海外での認知度を広げることを望むことになると思われる。
しかしながら、不慣れなアーティストを狙って高額な出展料を要求する業者がいたり、売れた作品の代金を払わないないような業者もいるようだ。
語学の問題もあるが、海外からのうまい話に乗って有頂天になってしまうこともあるので最大限注意すべきだ。
しかし、実際には素晴らしい出会いがあるのも事実である。
アーティスト側からみると判断基準が分からないため、どのようなギャラリーと付き合うべきかを決めきれないことも多いだろう。
一般的には日本の場合はギャラリーと書面にて契約をすることがあまりない。
最近は闇営業問題で、芸人とプロダクション会社の契約関係が口頭のみであることが明らかになっているが、実は日本のアート業界も同じで、書面での契約がないギャラリーがほとんどだ。
もしギャラリー側からの要請で、他での展示ができない専属(独占)契約を結ぶのであれば、ギャラリーはアーティストの制作する作品を全部買い取りしなければならないはずであり、国内市場が小さな日本では独占契約の実現はなかなか難しい。
しかしながら、海外のギャラリーは販売市場がケタ違いに大きいこともあって、専属契約を依頼される場合もある。
そうなると日本国内で展示したりする場合にも海外ギャラリーからの承認が必要など、何かと干渉されてしまうようだ。
そればかりではない。
海外のギャラリーの中にはコマーシャルギャラリーではなく、法外な貸し料金を要求するギャラリーもあると聞く。
従い、海外のギャラリーから展示について依頼があった場合に必ず事前に確認すべき点は以下の5つとなるだろう。
① 場所のレンタル費用を払う必要がないか
② ギャラリーの料率
③ 配送費の負担
④ 当該ギャラリーのアートフェア出展経験
⑤ 支払い期日、作品返却期日など
以上の条件を確認したうえで覚書を作成しておくのがベストだ。
さて、日本のギャラリーであれば言葉が通じるということで海外と比べると安心するかもしれないが、状況は海外と同じであり、上記①~⑤までの項目についてはかならず確認すべきだ。
特に作品の支払い期日については、所属しているアーティストからの噂などで事前にチェックするほうがよいだろう。
作品が売れているにも関わらず平気で支払いを遅らせたりするギャラリーとは組むべきでないのは言うまでもない。
すでに作品が売れているにも関わらず、作家が作品の返却を求めてくるまではそれを黙っているギャラリーもあると聞くので、展覧会が終われば速やかに作品を返却することを確約するほうがよいだろう。
また、一般的にはギャラリーとしてはアーティストと長期的な関係でプロモートすることを望むだろうから、双方の出発地点は重要だ。
アーティスト側としても、実際に展示される空間を確認したうえで、取り扱いアーティストの面々を見たうえで自分自身との相性を改めて確認したほうがよいだろう。
アーティストとは作る人、ギャラリーは売る人という役割分担であったのは昔の話であり、現在は両者が二人三脚でプロデュースする時代となっている。
短期的な関係でギャラリーを移り変わっていくのはアーティストにとっては有利なことではなく、時間をかけてギャラリーを巻き込みながらキャリアを積み重ねることが重要である。
アーティストとは結局は個人事業主であり、ギャラリーとの付き合いは最終的には人と人とのコミュニケーションに尽きる。
ギャラリーの存在を自分の作品を販売する場所であるという考えから脱却し、アーティストの表現する世界観を世に広げることを一緒に企てていくパートナーとしての存在とすることが、これからのアーティストに求められることだろう。