アーティストには、いい作品を作っているのに、なかなか人気が出ない人がいる。その人の作品を見たら「すごいなあ」と思う。
でも、SNSではバズっていないし、テレビにも出ていない。
つまり、多くの人がその存在に気づいていないのだ。
では、どうすれば「知ってもらえるアーティスト」になれるのだろうか?
もちろん、SNSで毎回きちんと作品をアップしている人は多い。
だけど、それだけでは足りない時代になってきた。
他のアーティストたちも同じことをしているから、同じやり方では差がつかないのだ。
ここで考えたいのは、「空中戦」と「地上戦」というふたつの戦い方である。
空中戦とは、テレビに出たり、有名な人とコラボしたりして、一気に多くの人に名前を知ってもらう方法である。
これは、いわば空から爆弾を落とすようなやり方だ。
いっぺんに多くの人に届くので、注目を集めやすい。芸人さんやタレント出身のアーティストが、まずはそのキャラクターで人気を集め、あとから作品を知ってもらう、というケースがこれに当たる。
一方、地上戦とは、ひとりひとりと深くつながっていく戦い方である。
展覧会で来場者と話したり、心に残るような展示を工夫したりすることで、少しずつファンを増やしていく。
いきなり広まることはないかもしれないが、そのぶん応援の気持ちが強いファンが集まる。
これは、地面を歩きながら少しずつ前に進んでいくようなやり方だ。
どちらが正解というわけではない。でも、アートという世界は、じわじわと染み込むように広がっていくことが多い。
だから地上戦のほうが向いているアーティストも多いのではないだろうか。
そしてもうひとつ、大切なことがある。それは「人がバズる」という現実だ。
SNSでは、「作品」よりも「人」に興味が集まることが多い。
どんなにすばらしい作品でも、作者がどんな人なのかが伝わらないと、あまり話題にならないことがある。
逆に言えば、その人がどんな思いで作品を作っているか、どんな人生を歩んできたのか、というストーリーが見えると、応援したくなるのだ。
だから、ただ作品をアップするだけではなく、自分自身をどう見せるかも大切になる。
恥ずかしがらずに、自分の考えや悩み、失敗や成功を少しずつ伝えていくことが、ファンをつくる近道なのだ。
それでも、どんなに発信しても、すぐに人気が出るとは限らない。
だからこそ、クラウドファンディングのように、まだ売れていない段階から応援してくれる「初期ファン」を大切にすべきだ。
たったひとりでも「あなたのことを信じている」と言ってくれる人がいれば、その言葉は何よりも力になる。
最後に忘れてはいけないのが、やはり「作品」そのものの力である。
本当に売れ続ける作品――いわば「鉄板作品」を持つことが、アーティストとして長く続けていく鍵になる。
その作品を見て「欲しい」と思う人が増えれば、その人たちが自然とSNSなどで広めてくれる。それがまた新しいファンを呼ぶのだ。
鉄板作品をつくるのは簡単ではない。
試行錯誤しながら、自分の作風の幅を広げて、いろんな表現を試していく。
その中で、ある日突然「これだ!」という鉱脈に当たることがある。その瞬間を待つには、あきらめずに掘り続けるしかない。
一度見つかった鉄板作品は、10年、いや20年も売れ続けるかもしれない。
そうなれば、アーティストはその作品で収入を得ながら、新しい挑戦にも取り組める。
そうしてこそ、「売れるアーティスト」でありながら「表現し続けるアーティスト」でいられるのだ。
アートの道はけっして簡単ではない。
でも、空中戦と地上戦、人と作品、その両方を見つめながら、自分らしいやり方を見つけていくこと。
それが、知ってもらえるアーティストになるための一歩なのである。
5月29日(木)からayaka nakamuraの個展が開催!
ayaka nakamura「Awakening」
2025年5月29日(木) ~ 6月17日(火)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日の5月29日(木)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:5月29日(木)18:00-20:00
※5月30日(金)はセミナー開催のため、18:00閉場となります。
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
▼ayaka nakamura個展「Awakening」の展覧会情報はこちら