コロナウィルスのワクチン接種が進むにつれ重症者数の抑制が進むこととなりそうだ。
メディアによる執拗なまでの煽り報道が減少すれば、早晩コロナ騒動は収束へと近づくこととが予想される。
コロナ禍が終わりを迎える一方で、以下のような事柄はすぐに元通りに戻らないだろう。
・リモートワークに慣れて業務効率が上がった職業はそのままオフィスに戻らなくなる
・外食の習慣が減った人はそのまま内食を継続して外との付き合いが減る
つまりコロナ禍で習慣化されたことは以前の生活に戻ることはないのである。
従い、今年になって政府主導で進められた都市部の禁酒令や自粛要請はコロナの収束以降も長期にかけて飲食業界やエンタメ業界の破壊へとつながり、しかもその期間に給付金は支払われないのだ。
コロナ禍においては何か新しいことが起きるというより、すでに起きていた変化がより劇的に現れることとなった。
それは、経済的な不平等が激化したということだ。
それは比較的同質性の高いと言われる日本でも欧米同様に大きな経済の不平等が広がり、その傾向はそのまま継続することになるだろう。
さて、アート業界についてはどうなっていくだろうか。
予測されることは以下の3つである。
1)アート販売の国内回帰が終わる
2)グローバル化がさらに進む中、中国の注目度が高まる
3)セカンダリー市場の右肩上がりの成長が鈍化する
具体的にどのようなこととなるのかをひとつずつ見てみよう。
1.アート販売の国内回帰が終わる
この1年半の間に渡航が事実上制限されたために、海外のアートフェアで作品を出品したり、購入することができなくなった。
ギャラリーは国内顧客の獲得に力をいれることとなったが、それでも緊急事態宣言中には休業要請に応じて展示の中止や延期を余儀なくされてコレクターの足が遠のいたのは事実である。
販売の一部をオンラインに変えたところもあったが、調子がよかったのは昨年の5月まででネット販売のマーケティング手法に慣れないギャラリーはその後すぐに売上が落ち込むことになったようだ。
この落ち込みを回復させるためには、コロナ禍で経済の持ち直しに時間がかかる国内よりも、素早いワクチン接種対応で経済の回復が早かった海外へと販売をシフトするギャラリーは多いだろう。
アート販売の国内回帰はこの2年くらいで終わり、海外へとベクトルの向きを変えることになるのは間違いない。
2.グローバル化がさらに進む中、中国の注目度が高まる
上記のように、今後は一変してアート市場のグローバル化が進むだろう。
経済の回復が早い米国は今後も市場を牽引するだろうが、このコロナ禍でも経済成長が続いた中国の市場は見逃せない。
中国の特にネット販売の市場はさらに拡大しており、このパイの取り合いには欧米のギャラリーも参加することになるだろう。
マーケットとしての中国も魅力的であるが、同時に中国の素晴らしいアーティストがドンドン生まれている。
マーケットが拡大するとその地で育ったアーティストも成長するからだ。
これまで国内のギャラリーは中国人アーティストの販売についてはほぼ手つかずであり、今後はこの分野にも大きな可能性があると言えるだろう。
3.セカンダリー市場の右肩上がりの成長が鈍化する
コロナ禍の最中に国内のオークションハウス市場は、30-40代の富裕層がイラスト系のアーティストを中心に大きく拡大することとなった。
若年層が増えた理由として、オークション参加がオンラインでも可能なことがある。
もう一つは、使わずにあまったお金の使い先として、株式、不動産、金、仮想通貨といったもの以外に、アートが投資として新しく浮上してきたことが大きい。
その場合にイラストアートのような初心者にとって分かりやすい表現方法として好まれたのは言うまでもないだろう。
投資するアートとして、オークションハウスに出てくる作品はある程度有名で、一定のクオリティが担保されているので安心して買うメリットがあることから、セカンダリー市場がこの1年半で急拡大したのだ。
一方で、コロナ後の国内での経済の復活は欧米や中国と比べると、そのスピードは遅々として進まない恐れがある。
これまでの政府の対応やマスコミ報道を見ても、恐怖を煽る以外の具体的なメッセージが発せられたためしがないし、さらにはオリンピック赤字によって一気に不景気に進む可能性も十分にある。
そうすると、国内経済はグローバルで見ると相対的に逓減していき、株式、不動産などの国内投資が減少することも予想される。
そうするとせっかくここまで沸騰した国内のセカンダリー市場の拡大も止まってしまうこともありえるのだ。
そのような、将来の市場拡大の芽をつまないようにするためには、すでに国内にあるセカンダリー市場の問題をつぶしておく必要も出てくるだろう。
実は日本ではセカンダリー市場そのものが小さいのではなく、かなりの部分が業者内取引(交換会)で消化されていることが問題なのだ。
現在の日本では、同じ業者内で利益の取り合いをしている場合ではなくなってくるだろう。
業界内のクローズド化された社会を一般にも広げるべきであり、交換会をオープンにすることでコレクターが誰でも参加できると面白い展開になりそうだ。
セカンダリーとプライマリー市場はつながっているのであり、良好なアート市場を作るためには、「健全な競争」と「情報公開」が必要なのである。