タグボートを紹介されるときには、オンラインギャラリーと言われることがほとんどである。
しかしながら、弊社ではオンラインで作品を売るというのはあくまで手段だと考えており、少なくとも我々の目的ではない。
我々がやりたいことは、一人でも多くのアーティストが食べていける環境を作ることだ。
その手段の一部としてオンランでアートを売ることをやっているだけなのだ。
とは言いながら、アーティストが食べていけるようになるには作品が売れることが最重要であり、多くのコレクターが若手アーティストの作品を買うことが日常になる世界を作らなければならない。
言うは易しだが、実現にハードルはかなり高く、難しいからこそやり甲斐があると思っている。
タグボートは2017年にギャラリースペースを人形町のオフィスに併設し、さらに今年の3月から銀座の阪急メンズ東京にギャラリーを移転した。
とは言うものの、これだけではまったく十分ではないと考えている。
ギャラリースペースがあっても、直接タグボートが取り扱いをしている100人以上のアーティストがいて、彼らからしてみると毎月展覧会を開催してもこのままでは個展の順番はいつまで経っても回ってこない。
100人が一回りするのに10年はかかってしまうのだ。
従い、今年の後半よりタグボートは自社取り扱い作家を国内外のリアルのスペースで展示することに力を入れていく。
アートフェアに出展するのではなく、自らが主宰して企画する独自の展覧会を開催するのだ。
これからの2年で、ひとつのギャラリーとして取り扱い作家の作品を展示するスペースの面積と期間は最大級となるだろう。
さらに、アーティストのコミュティも同時に作っていく予定である。
すでに1万人ほどのアーティストとの接点はあるのだが、それでもまだ十分とは言えない。
日本には自称も含めるとアーティストは10万人いると言われており、その中に優秀な才能を持った人が必ずいるはずだ。
そのような才能を埋もらせることなく開花させるために、できることはすべてやっていく予定だ。
我々はこのような事業をボランティアや公共事業としてやっているわけではない。
また、スポンサーについてもらい彼らの意図する目的に沿ってアートの事業をやることも予定していない。
あくまで、作家の才能を見出し、その才能を世の中が認めて、且つ収益が出る事業体をつくることだ。
それは最近のアート系スタートアップ企業が言っているようなインターネットのプラットフォームの中で顧客のニーズとアート作品を「マッチング」させるといったようなものでは決してないし、そんなことが自動的にできるわけがない。
個別のアーティストに対するファン作りを丁寧にやっていかなければ無理だ。
インターネットで出来ることはあくまで補助的な役割であり、実際にはこの目で作品を鑑賞し、アーティストと実際に会って話を交わすことでしかファン作りはできないと思っている。
その下地作りのためにインターネットを活用するのであり、手段と目的を一緒にしてはならない。
顧客からすればオンラインとオフラインの境目は曖昧になり、どちらでもスムーズにアクセスできることが望ましいだろう。
現在、アート購入の便利な手段としてはアートフェアという販売見本市がメジャーになっている。
様々な都市で多くのアートフェアが開催されており、コレクターにとってはギャラリーの展覧会に行かなくても、多くの作品の中から好きなアートを選ぶことができる利便性と鑑賞の醍醐味があることはご存知だろう。
しかしながらアートフェアはあくまで年に一回の祭典であり、そこで出品しているギャラリーやアーティストと話をする機会は限られている。
タグボートは、オフラインとオンラインの両側からアートフェアという形態をより利便性の高いものに変えれないかと思案している。
遅くとも再来年の春にはそれを実現すべく知恵を働かせているところだ。
タグボートが何を考えているのかは次のコラム「日本のアートフェアの未来」の中で触れていきたいと思う。