この一年半にアート業界で変わったこと
新型コロナウィルスが流行する前であった2020年2月からもう1年半が過ぎた。
メディアの煽動も相まって人々の生活様式は一変し、以前とは明らかに違うスタイルや物事の捉え方に我々は慣れてしまっている。
コロナ禍の状況を俯瞰的に理解してビジネスにつなげていく者は益々富んでいくこととなり、コロナ禍でワイドショーが煽る恐怖心に乗っかる人たちとの情報格差がそのまま所得格差につながっている。
コロナ禍の影響は人々の心情までを脅かすことにつながり、自粛を余儀なくされ時間をもてあます民衆が、著名人の起こすトラブルに対してこぞって牙をむき普段の鬱憤に対して溜飲を下げることとなった。さらには若年層の自殺者は11年ぶりに増加に転じている状況だ。
一方、アート市場はどう変わっただろうか。
コロナ禍で旅行や飲食などのエンタテインメントを楽しむことができなかった富裕層の中でも、特に30-40代の経営者層が現代アートを買い始めるようになっており、コレクターの低年齢化が一気に進んでいる。
アートを資産として捉える富裕層の若年化は購入する作品のジャンルにも変化を及ぼすこととなった。
イラスト作家やストリート系のアート作品に火が付いて注目を浴び始めたのだが、その動きはこのコロナ禍に顕著となった。
若年層のコレクターはアートをインテリアとして楽しむと同様に投資対象ともしているのが特徴だ。
また、コンセプトの面白さや美術史における文脈よりも、見た目のインパクトやカッコよさが重視される傾向にある。
タグボートは5年ほど前からアートの投資的価値についてその重要性を語っていたが、当時はそれに対する同調的な意見は少なかったのだが、今の若いコレクターは、アートの投資的な価値を当たり前のこととして捉えているのが印象的だ。
新しいコレクターが買う現代アートはラッセンなどのインテリア・アートとは一線を画す作品であることを認識しており、オークションなどのセカンダリー市場に出ている作家を積極的に購入する傾向にある。
つまり、新しいコレクターは、コマーシャルギャラリーという存在がアーティストの価値を上げるための仕事をしており、さらには作家の供給量を上回る需要がある場合に価格が上がるという理論を理解しているのだ。
彼らからすると、アートの価値は従来の美術評論家による上からの評価で決まるものではなく、一般的な購入者や鑑賞者などの人気度にもとづいた需要と供給によって作られるという見解をもとにアートを買っているのだ。
彼らは、例えば欧米でのKAWSやBanksyといったストリートアートの影響が日本国内でもその潮流を受けると察知しており、日本流のストリートアートを買ったり、日本流のサブカルチャーをイラスト系のアートとして捉えているのかもしれない。
そのような若いコレクターにとっては従来のファインアートの枠から飛び出している作品のほうが人気が高いと言えるだろう。
確かに今はオークションハウスの落札価格が好調ということもあり、彼らが買うアートの多くは値上がりの可能性が高いであろう。
しかしながら、長期的な観点から見るとアートだったらどの作品でも価値が上がる訳ではない。
アーティストの中でも一部は作品の制作をやめることもあるし、それによって価値がなくなってしまうこともある。
新型コロナの影響で日本国内の経済が戻らずに長期的な不況となることもありえるので、そこから日本株の暴落を受けてアート作品も暴落するかもしれないのだ。
不況下でも価値が下がりづらいアートをどのように収集するかといったことが、これからの若い世代のコレクターにとっては重要であるし、それには知識が必要となってくるだろう。