資産的に価値のあるアートを買おう
どんなアートを購入するかは個人の嗜好によるものであり、そもそも他人からああだこうだと言われる筋合いのものではない。
従い、好きなアートを予算の範囲内で買えばよいだけのことであるが、一方で購入したアートが資産的な価値があるかとなると別問題だ。
新年一発目のコラムは、1年で資産的な価値のあるアート購入の達人になるために必要な考え方を2回に分けて書こうと思う。
このコラムでは、すでに売れっ子の著名なアーティストのセカンダリー作品の売買益を狙った購入法ではなくて、あくまでこれからの成長が期待できる若手アーティストの作品の購入法である。
最近になってアートのコレクションを始めた方にとっては貴重な指針となるだろう。
オークションで情報を知る
時間さえ許せば、海外のアートフェアや美術館に行ったりして出来るだけ多くの作品を見ることで資産的に価値のあるアート作品とはどのようなものかを知ることがベストだ。
しかしながら、今の日本では渡航後の隔離政策により普通に海外に行くことは事実上難しくなっている。
そういう状況で最も早くアート購入の達人になるには、オークションなどのセカンダリー情報を知ることであり、それがもっとも効率的でかつ効果的だといえよう。
ここでの目的は、オークションに参加するのではなく、どのアーティストの作品が資産的な価値があるかの情報を得るためである。
オークションに出品されているアート作品を売買するにはある程度の資金力が必要なので、ここでは買うという行動をせずにまずはどのような作家が上がっているかを知ることが重要である。
オークション情報は冊子となっているカタログをオークション会社から直接取り寄せることもできるし、オークションのウェブサイトからオンラインカタログを閲覧することができる。すべて無料だ。
ウェブ上に出ている落札結果と、カタログに表示されているエスティメート(見積り価格)を照らし合わせてみることでどの程度価格が上がったのかは一目瞭然である。
より幅広い中から情報を分析したいのであれば、artnet.comという海外サイトに登録して調べるのがよい。
artnet.comでは、世界の1,800社のオークションから34万人のアーティストの過去数十年にわたるオークション情報を手に入れることができる。
プロのセカンダリー・ディーラーは必ずこのサイトを利用しており、利用料は年間で5万円程度で素人でもこのサイトを利用することでプロに近いデータ情報を得ることが可能だ。
ここでのセカンダリー情報の入手の主な目的は、「今、世界ではどんなアーティストが売れているか」を知ることである。
日本で売れているアーティストではなく、世界で売れているアーティストだ。
日本のアートマーケット規模だと世界の1%未満であるし、国内のローカル市場しか通用しないアーティストも数多くオークションに出品されているのであまり参考にならないと思ってよいだろう。
ここで知るべきは、世界のオークションで人気のあるアーティストの作品の持つ背景、コンセプト、新しい表現、技術といった部分なのだ。
作品のコンセプトや表現方法が他にはない唯一無二であること、新しく歴史に名を刻まれるほどにセンセーショナルであること、またはアートにおいて新しい発明をしたかなどが、知れば知るほど頭の中に整理されて理解されていくかと思う。
なぜ売れているかの理由を知ることが重要なのであり、実際に買わなくてもそれの意味を理解することで十分だ。
これからよいコレクションを作るために、受験用に過去問題を解くような気持ちで情報を集めるとよいだろう。
そうすると、これからどんなアーティストを買えばよいかの下準備ができるはずだ。
ただし、いかにこれから売れるアーティストの傾向がある程度理解できたとしても、購入する場合に作風を見て感覚的に嫌いなアートを買うことはお勧めしない。
というのは、いくら資産的な価値が上がっても嫌いな作品はずっと手元に置きたいとは思わないからだ。
好きでもない作品を買うと、手放すタイミングが早くなってしまい、よいコレクションを作ることはできない。
アートを買うのに情報をそろえておくことは重要であるが、あくまで自分の嗜好の意思に従うことも大切だ。
さて、次回は作品はどこから買うべきか、アーティストをどのように選択するのかについてお話をしたいと思う。
来週にご期待いただきたい。