地方の美大在学中から、プロのアーティストへのチャレンジを始める学生は非常に少ない。
首都圏の美大であればまだよいが、地方だと周りから情報が集まってこないので、何をすれば分からないまま作品の制作だけをして大学を終えてしまうことが多いようだ。
その点、飯島秀彦は愛知県立芸術大学に在学中から次のステップをきちんと考えて行動を始めていたところが他とは違うところだ。
おそらく名古屋にとどまったままでは、彼のような好スタートを切ることはできなかっただろう。
さて、プロの作家からすれば、アーティストとして食べていくためには、美大在学中からアート市場で揉まれていくことが大事だと思うに違いない。
一方、美術大学では、アートの制作についての教授からの指導はあるものの、アーティストとして食べていくための処世術を教えてもらうことはない。
卒業後に就職する場合に、美大時代に身に着けたスキルを発揮できる会社もあるかもしれない。
しかし、美大のときに積んだ技術のほとんどはアーティストになるためのものであり、それ以外の仕事では役に立たないことのほうが多いのだ。
また、卒業後にアーティストになることを決めていれば、早い段階で自身をプロデュースする手法を探っていくことが望ましいだろう。
というのは、大学卒業の段階で、ある程度のファンを作っておかなければ、作品を売って生活するのは難しいからだ。
展覧会を貸しギャラリーで開いたところで、知り合いくらいしか来てくれないし、結局アルバイト生活がメインとなり制作をする時間が限られてしまうのが現実である。
飯島秀彦のチャレンジ
飯島秀彦がアーティストとして大きく羽ばたく舞台として選んだのがIndependent Tokyoであった。
今からちょうど1年前のIndependent Tokyo 2022に彼が出展をして、188ブースの中で見事にグランプリを獲得した。
まだ愛知県立芸術大学に在学中のことである。
そこから1年後の、今年8月3日から、ついにタグボートのギャラリーで個展を開催するようになる。
これだけを聞くと、美しいシンデレラストーリーのようにも見えるが、現実はそんなに簡単なものではない。
作家としてひとり苦しみながら結果を出していくことは、具体的な数値で分かるものではないので非常に難しいのだ。
特に、Independent Tokyoでは、25名の審査員全員の合計点で賞が決まることから、それらを計算づくで作品を制作し展示することなど出来るものではない。
飯島秀彦がIndependentでグランプリを獲得後のインタビューでは、
「今まで、自分自身で展示をするという経験が少なかったので、作家それぞれの世界観を限られたブースの中で、作品の数、配置などをどう工夫して展示して表現しているのか、勉強になった。二日間ということもあり、作家さんがほぼ在廊しているので、他の作家さんに作品のことを直接聞いたりもした。」
と語っている。
二日間を効果的かつ貪欲に吸収しようとしていることがよく分かる。
戦略的にイベントに関わっていったからこそ勝利をもぎ取ることができたのだろう。
飯島秀彦の当時のインタビューはこちらのページからも確認できる
タグボートの個展で表現する世界観
飯島秀彦の作品は、必ずモチーフにテディベアを用いている。
それも、破壊され、朽ちているぬいぐるみの姿だ。
表面的に見えるかわいらしさの裏側には、夢と現実を突きつけるようなものがあることを感じさせる作品である。
面影を少しだけ残しながら、引き裂かれ、傷つけられたぬいぐるみの姿は一度見たら忘れられないインパクトを持っている。
また、緻密なペン画によって「儚さ」を表現をする中で、ぬいぐるみの顔をあえて消すことによって、複雑な感情を曖昧にしようとしている。
怖いほどのネガティブなぬいぐるみの背景には、敢えてヴィヴィッドな色彩とすることで、人間の心にある光と影の濃淡をはっきりさせようとしているかのようだ。
今回のセンセーショナルな個展によって、人間の心の葛藤にある世界観を来場者の脳裏に刻ませることになるのは間違いない。
是非、期待してご来場頂きたい。
飯島秀彦 Hidehiko Iijima |
飯島秀彦 個展「BRANCH」
2023年8月3日(木) ~ 8月19日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊日:日月祝
入場無料・予約不要(どなたでもご参加いただけます)
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
グランプリの副賞として開催される本個展では、約20点の新作を展示・販売致します。
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【日程】
2023/8/5(土)11:00~19:00
2023/8/6(日)11:00~18:00
【会場】
東京ポートシティ竹芝 3F 東京都立産業貿易センター浜松町館
(浜松町駅)
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