新型コロナウィルスの正体が明らかになるにつれ、欧米各国では様々な規制が解除となりマスクを着けて歩いている人がいなくなった。
今だに日本だけがマスク着用による息苦しさの中で生活を強いられ、鎖国政策も影響して経済は最悪のシナリオで進んでいる。
コロナ禍での同調圧力
約2年間のコロナ禍で特に顕著になったのは同調圧力という日本の文化だ。
集団において少数意見を持つ者に対して、周囲の人と同じように考え行動するよう暗黙のもとに強制させている。言葉をかえるなら「空気を読め」という圧力である。
ムラ社会はより強固になりつつあり、社員にコロナ感染者が出ると謝罪する企業が現れる異常事態まで発生した。
企業はこれまで以上に世間の意識に対して神経を尖らせるようになった。
企業が世間との認識に乖離があると、それがどんな問題にせよ「炎上」の発火点となる。
企業は常に戦々恐々とせざるを得ず、問題が少しでも起こらないようにと必死になっている。
恐ろしいのはバッシングによって分かりやすい悪者を見つけて叩くという行動が日本で常態化しており、時代は「不寛容社会」に突入している。
国際化とは真逆の反応だ。
一方で、欧米各国の経済は完全復活しており、アフターコロナの市場はウクライナ戦争中であっても絶好調だ。
このままだと現代アートの市場も同じように、世界で日本だけが置いてけぼりをくらう現象が起こるかもしれない。
昨年はコロナ禍で行き場のないマネーが一部の現代アートのオークション市場に流れ込むという状況が起きた。
しかし、日本の現代アートの国際化がこのまま進まなければブームは長続きをせず、顧客はアートより効率の良い投資案件へと矛先を向けていく可能性が十分にあるだろう。
そうするとアートのプチブームは小さいままで終了し、市場の拡大がされないままアジアの他国の背中はより遠い存在となるだろう。
アジアの国際的なアートフェア
アジアにはこれから開催されるものも含めて国際的なアートフェアが5つあると言われる。
アートバーゼル香港、台北DangDai、ART SG(シンガポール)、West Bund Art & Design (上海)、Friezeソウルの5つだ。
これ以外のアートフェアはローカル色が強く、アートフェア東京も国際的なアートフェアとは認識されていない。
日本が将来的にグローバル化の波に乗るためには国際的なアートフェアの開催が必須となるだろう。
上記のアジアにおける国際的なアートフェアは開催国の組織によるものではなく、欧米の資本とマネジメントする欧米のディレクターで動かされているのが実情だ。
でないと、欧米の有力ギャラリーがアートフェアに出展しないからだ。
アジアの他の都市と同様に、おそらく日本においても欧米主導によってグローバル化が進むことになるだろう。あくまで自国の組織ではなく、「黒船」の登場によって変わっていくである。
国内のアートギャラリーはどう動くか
日本よりずっとアート市場が大きいし売れるからといって海外のアートフェアに出展するギャラリーは増えているが、その海外でどのようにしたら他のギャラリーに勝てるのかを考えているところは少ないように思われる。
最初はビギナーズラックで海外顧客からモノ珍しさで売れたとしても、それが継続できているところは多くない。
海外のアートフェアでは、現地に根ざしているギャラリーが顧客を持っているから圧倒的に優位なのだ。
また、その現地のギャラリーよりもさらに強いのが欧米のメガギャラリーとよばれる、ガゴシアン、デヴィッド・ツイルナー、PACE、ホワイトキューブなどの世界中に拠点を持つギャラリーだ。
特に現地で有力なギャラリーが少ない場合に、欧米のメガギャラリーがアートフェアで他の出展ギャラリーを圧倒してしまうことはよくある。
メガギャラリーで取り扱うアーティストは世界中で有名であるし、特に世界で活躍しているアーティストが少ない国(香港、シンガポール、台北)などでは、圧倒的に優位となっている。
メガギャラリーにとっては、成長著しいアジア市場に店を持たなくてもその知名度で顧客が買ってくれるアートフェアは彼らにとって便利なことこの上ない。
さて、日本に国際的なアートフェアが進出したとしても、待ち受ける日本側は欧米のメガギャラリーに対峙していかなければならない。
また、日本の顧客が海外のギャラリーから作品を買わなければ、海外のギャラリーはその後は出展を取りやめるだろうしアートフェア自体もがいつか退却してしまうだろう。
そういうことが起きないように、我々のような業者は今のうちに現代アートの国際化についてしっかりと戦略を練っておく必要があるだろう。