2023年の6月あたりから国内の現代アート市場は厳しい局面に入ったようだ。
物価上昇の一方で、社会保険料の増加、増税が進み、自由に使えるお金が減っているだけでなく、将来的な見通しも見えにくい世の中になっている。
少子化対策は名ばかりで一向に進まず、世界一の高齢化社会を若者が理不尽に支え続ける図式しかまだ見えてこない。
ラグジュアリー市場は円安を利用する海外からの観光客頼みとなっており、あれだけ高値が付いていたビンテージのスニーカー・ブームも沈静化し、現在は売れなくて在庫があまっている状況である。
このような市況の悪化が進む中で、我々はどうすべきかを考えてみることとする。
閉塞感が漂う社会と現代アート
他国ではすでに話題にものぼらない新型コロナであるが、現在、世界中で日本人だけがいまだマスクをしている国民となった。
コロナ禍以降、日本は極度の内向的思考に陥ったまま、過度な同調圧力を是とし、変革を嫌う文化が強くなっている。
このような閉塞感が漂う社会であるが、2021年、22年には現代アート市場、特にオークション市場でイラストアートを中心にプチブームが起きた。
2023年の後半には、プチブームがオークション市場で崩壊する可能性が高くなっており、サザビーズやクリスティーズでは取り扱いが難しい日本特有のガラパゴスなアート作品が痛手を負うことになるだろう。
プチブームで値上がりを見込んでアートを買い込んだ「にわかコレクター」は、そもそもアート好きでもなかったわけで、早い段階でそのような作品を手放すことになると思われる。
よいアート作品がリーズナブルに買えるチャンス
そもそもアートに興味のなかったコレクターが早々に離脱することは、購入者にとってチャンスの到来を意味する。
プチブームで高騰したアート作品は置いといて、それ以外のアート作品についてはよいものがリーズナブルに買える時期なのだ。
といのは、不況期にはオークションを梃子とした急激な作品の値上がりが成立しにくいからだ。
つまり、マーケットの逆張りを狙うことでよい仕込みができるということだ。
これはギャラリーなどからのプライマリーの作品でよいものが本来価値より安価で買えるということである。
だからこそ、オークション市場に出ていない成長が期待できる若手作家の掘り出し物を今のうちに押さえておくのが賢明であろう。
タグボートもオークションに頼らずに着実に価値を上げることのできるアーティストのプロモーションに地道に力を入れていく予定だ。
一方、セカンダリー市場では低価格のエディション作品が多数放出される可能性があるので、それを狙うのも一つの手である。
市況が悪くなってきたときこそ、賢いコレクターはお買い得を求めて買う手を休めてはならないのだ。
変わるアジアの勢力地図
こういう日本のマーケット状況ではあるが、お隣の韓国では本日(9月6日)から2つの大きなアートフェアが開幕する。
Frieze SeoulとKIAFであり、Frieze Seoulはロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルスに続いて、昨年初めてアジアで開催されたグローバルなアートフェアであり約120軒の一流ギャラリーがしのぎを削る。一方、KIAFは韓国で最も歴史の長い現代アートに特化したアートフェアで、今回は210軒のギャラリーが参加する。
ソウルのCOEXの同会場で両方のフェアが同時開催されて合計330軒のギャラリーとなり、これにサテライトのフェアも含めるとかなりの規模のアートの祭典となる。
これは3月のアートバーゼル香港とアートセントラルに次ぐ規模であり、アジアのアートの覇権争いのためにソウルがリーダーシップを発揮しようとしているのだ。
それに対して日本はどうかというと、ひとつ朗報がある。世界の4大ギャラリーのひとつであるPACEが、東京の麻布台ヒルズに開業するというニュースがあり、今後どういう展開を見せていくかに注目していきたい。
さて次週はより深堀りした内容で、日本の現代アート市場はこれからがどうなっていくのかを具体的に予想したいと思う。
■ART FAIR GINZA開催概要
開催期間:2023年9月2日(土)~9月11日(月)
Part1:9月2日(土)~9月6日(水):本日で終了
Part2:9月8日(金)~9月11日(月)
営業時間:午前10時~午後8時
Part1、Part2ともに最終日は午後6時まで
※9月7日(木)は、終日閉場
オンライン販売:Part2は9月8日(金) 午後9時からオンラインで販売開始予定。(Part1は販売中)
9月8日に午後2時以前に行かれる場合、招待状が必要ですので以下のフォームからお申し込みください。
https://forms.gle/pvFvqcCZNPmMAkZc9
※初日の10時~11時はVIP顧客のみの時間帯ですので、ご入場できない場合があります。
出展作家 (五十音順)
Part1:アンタカンタ/石井七歩/大谷太郎/大谷陽一郎/大山貴弘/小野海/片桐直樹/カネコタカナオ/Kamihasami/工藤千紘/コムロ ヨウスケ/榊貴美/シムラヒデミ/田村久美子/TARTAROS/丹治基浩/中風森滋/額賀苑子/橋本仁/林恭子/ビオレッティ・アレッサンドロ/深澤雄太/福井直子/フルフォード素馨/柳田有希子
Part2:Aira/AKIKO KONDO/有村佳奈/池伊田リュウ/石川美奈子/今関絵美/VIKI/大城夏紀/岡村一輝/オクヤマ コタロウ/北村環/木村美帆/久木田大地/毛塚友梨/小木曽ウェイツ恭子/鈴木ひょっとこ/高橋夏代/月乃カエル/都築まゆ美/中島友太/ナカムラトヲル/廣瀬祥子/ホリグチシンゴ/三塚新司/曄田依子
「ART FAIR GINZA 2023 tagboat x MITSUKOSHI」特設サイト
https://www.tagboat.com/artevent/artfair_GINZA/
公式サイト「ART FAIR GINZA」
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