グローバル化がとまらないヨーロッパ
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の準々決勝で日本はイタリアと戦うのだが、イタリアはサッカーのイメージが強く野球のイメージを持つ人は少ないだろう。
ヨーロッパの強豪国といえばオランダくらいしか思いつかず、東アジア、北米、中米といった環太平洋地区が圧倒的に強いのが野球の世界だ。
イタリアの選手のほとんどは自国でプレイしておらず、米国のメジャーや3Aの選手として活躍をしている場合が多い。
そもそもイタリアには野球ファンが少ないので、才能のある選手は野球のマーケットのあるところで試合をしに行くしかないのだろう。
東アジアは自国のプロリーグがあるのでそこでプレイする選手がほとんどだが、ヨーロッパの選手からすればどこの国でプレイするかはさほど問題ではなく、活躍できるところであればどこにでも行くということだ。
このヨーロッパのグローバルなマーケット感覚はアートでも同じであり、ギャラリーは国境を意識せずに売れるところであればどこにでも展示をしに行くのだ。
最先端のアートがニューヨークで生まれ米国の巨大なアート市場が形成される一方で、55年前に世界初のアートフェアという形態はドイツのケルンで始まり、最大規模のアートフェアがスイスのバーゼルにあるようにグローバル化の先鞭をつけるのはヨーロッパが多い。
米国は自国のマーケット規模が大きいため作家やギャラリーが米国内だけで販売を完結できるが、ヨーロッパはグローバルを狙わなければ自国のマーケットだけでは十分ではないことがその要因だ。
日本はヨーロッパから学ぶべきことは、日本のアートマーケットが小さいすぎるがために他国のマーケットへ行くか、または他国のコレクターを自国に引き込むことだ。
そのための手段のひとつとしてアートフェアを活用するのだということを我々は知らなければならない。
アートフェアによる購入層の拡大
今年のアートフェア東京2023の閉幕後のレポートでは、来場者が昨年の44,000人から56,000人と27%も増えたとののこと。
コロナ禍が終了して安心して来場できたこともあろうが、それよりも一般の人がアートを購入する場として「アートフェア」の認知が広がったことが大きい。
アートを買う場が百貨店や画廊だけでなく、多くの選択肢の中から効率的に買えるアートフェアというものがあり、初心者にはメリットが大きいことが広く浸透してきたのだろう。
また今年は韓国や台湾からの観光客が戻ってきたので、そういったアジアのインフルエンサーやインスタグラマーなどがアートフェアを宣伝することでさらに効果が大きくなってきている。
従い、アジアで人気のオークション銘柄はアートフェア東京でも強く、日本独自のシティポップやイラストアートの隆盛はオークションだけに限らずプライマリーにまで広がっている状況だ。
一方、海外から出展しているギャラリーは日本ではあまり作品が売れないという傾向がある。
これはアートフェア東京の前身であるNICAFの時からそうであり、国内コレクターにとって認知が少ない外国のアーティストの作品を好んで買うことが少ないからだ。
しかしながら、アートフェアがグローバルに成長していくためには購入顧客であるコレクターも幅広く海外のアーティストの作品を買うことが重要だ。
そうしないと、世界の一流のギャラリーを集めた国際的なアートフェアを日本で開催したとしても、出展ギャラリーから「日本は売れない」という悪評がついてしまうと、最終的にアートフェア自体の開催が終わってしまうかもしれないのだ。
今年の7月にパシフィコ横浜で海外のトップギャラリーが出展するTokyo Gendaiにおいて、海外出展ギャラリーが展示する外国人アーティストが日本で売れるかどうかが焦点となる。
海外の出展ギャラリーは日本での購入者リストを持っていないし、国内のアートメディアを活用したプロモーションがまだ十分にされていない。
日本のコレクターは英語で書かれたアートメディアを読むこともないので、事前に海外ギャラリーの情報を仕込むことも難しいのだ。
このような正念場に立たされている日本でのアートフェアであるが、香港、ソウル、シンガポール、台北とアジアの主要都市を席巻している国際的なアートフェアの拡大の流れを東京で止めることだけは避けたいものだ。
アートを海外に流出させるだけではなく、流入する国であることも重要なのだ。
タグボートはインバウンドによる来日観光客が増えて認知が拡大するこのときを狙って、現地の展示作品はすべてオンラインでも買える仕組みを作っている。
全展示作品がオンラインで買えるアートフェアは世界初でもあり、顧客利便性を徹底的に考えた上で実施している施策といえよう。
顧客は世界中にいるので、物理的に来れない顧客のためにできることは情報の開示と購入方法の多様化である。
約90名の厳選したアーティストによるアートフェアに期待していただきたい。
2023年4月14日(金) 13:00-19:00 プレビュー
2023年4月15日(土) 11:00-19:00 パブリックビューイング
2023年4月16日(日) 11:00-16:00 パブリックビューイング
〒105-7501
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https://www.tagboat.com/artevent/tagboatartfair2023/
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