若い世代で現代アートを初めて買うという人がここ最近増えてきた。
すでに買いたいアート作品が決まっていればよいのだが、これまでアートを買ったことがない人にとってはどの作品を選べばよいか分からないだろう。
その場合、買いたいアートをどのように見つけたらよいかについて初心者向けにお教えしたいと思う。
もちろんここでの手法が絶対というわけではないし、それぞれが思い思いで購入すればよいだろう。
しかしながら、せっかく買うのであれば将来的に価値の上がる作品を保有されるほうがよいと我々は考える。
評価が上がる作品が自分の買いたい作品となる確率を上げるための合理的な方法というのは確実にあるからだ。
さて、まず一つめの原則として、飾る場所を気にせずに作品を買うということがある。
展示する場所の周りのインテリアから選ぼうとすると作品が限定されてしまうからだ。
引っ越しや新築に合わせて部屋の空いた壁を埋めるために絵を飾ることが目的となってしまうと、本来の質の高い作品をコレクションするという目的とはかけ離れてしまうことがある。
周囲のインテリアにマッチする作品となると抽象画やモノトーン作品がどうしても選ばれてしまうが、そうなると作品そのものがインテリアの一部となってしまうのだ。
必ずしも部屋にマッチするスタイリッシュなアート作品の評価が高くなるわけではない。
そもそもアーティストはインテリアに合うことを意図して作っているわけではなく、自分自身の世界観の中で制作をしているものなのだ。
インテリアに合う作品を選ぶやり方はコレクションの幅を狭くしてしまうのである。
ということで結論として、アート作品を買う場合にどこに飾るかを前提としないことは重要である。
買った後に飾るかどうかを考えればよいのだ。
インテリアにマッチするアートを選ぶのではなく、本能的にその作品を好きかどうかで選ぶほうが質の高いコレクションとなるだろう。
そのためには、まずは数多くの作品に触れておくことによって、自分自身の趣味嗜好を知ることが重要だ。
特に、買える作品を大量に見ることが重要であり、美術館で買えない作品を見るよりもだんぜん効率がよい。
どの作品を買うかという目的をもって作品を鑑賞するのと、漠然と作品を見るとでは感性の鋭敏さに違いが出るからだ。
買える作品を数多く見る方法としては、ギャラリーをハシゴして廻るという方法もあるが、それにはかなりの労力を使うことになる。
従い、多くのギャラリーが一堂に集まるアートフェアに行って一気にアートに触れるのが効率的だろう。
とは言いながら、昨今はアートフェアの開催が減っていることから多くの作品を見ることができない状況だ。
そういう場合には、オンラインによってウェブサイトにある作品画像に大量に触れるという方法がある。
オンラインであれば時間や場所を気にすることなく、いつでも大量のアートを見ることができるというメリットがあるのだ。
同時に、オンラインで見るだけではなく、なるべく現物のアートを見ることでリアルとバーチャルの差を少なくすることができればなおよいだろう。
大量の作品を見たあとは一瞬頭の中がカオス状態となるのだが、それがよいのだ。
カオス状態になったあとに少しずつ頭の中が整理されていくと自分自身の趣味嗜好というのが明確に分かっていくだろう。
徐々に自身の好みが客観的にどのようなものかが理解できていくことになる。
その後は、好みのアーティストがどのようなアーティストであるかをつぶさに調べることだ。
実はここが重要であり、どんなアーティストかという人なりを知らずに買うというのはリスクが大きい。
オンラインで見るなら、作家の略歴だけでは十分ではなく、作家のインタビュー、作り方やコンセプトの説明、動画などを見ておいたほうがよいだろう。
なぜそこまでするかというと、作品を買うということは作家自身の感性を買うということであり、単純に商品としてのアートを買うことではないからだ。
作家の将来性に期待するのであれば、本来は作家に直接会うのがよいだろう。
そこまですると作品の購入は、投資家が起業家に投資するようなものと似たことになる。
ビジネスモデルに投資をするというより、企業経営者の人柄や熱意に賭けるようなものだ。
作品が気になったら、まずはどんな作家なのかを調べてみよう。個人的に気に入る作家であれば買った方がよいし、ちょっと気になるならやめたほうが無難だ。
作家が成長するかどうかは作品の評価に直接関わることであり、今の作品がよくても作家自身が伸びなければ、作品の価値は上がらないのだ。
従い、ギャラリーのウェブサイトで作家の情報が少なければ、作品が気に入ってもまだ買うのは控えた方がよいかもしれない。
十分に作家のことを理解した上で買うのはもっとも気に入った作品を買うことになるということを覚えておこう。
さて、次回は作家に制作を依頼するコミッションワークという買い方について詳しく説明したいと思う。
自分が思ったような作品が買える可能性もあるのだが、それにはルールと遊び心が必要だからだ。
次週に期待いただきたい。