Cryptopunksが人気のわけ
前回のコラムでは、投資・アート・コミュニティを合体させた新たな「NFTクラブ」のようなものとして、BAYCをご紹介した。
そのほかには、Cryptopunksという人気のNFTアートがあるが、こちらも「そもそもアートなのか?単なるイラストでは」といったような作品である。
CryptoPunksはLarva Labs社が制作したわずか24×24サイズのピクセル(ドット絵)で作られた極めて単純なデジタル作品であるが、世界最古のNFTアートであるということが最大の特徴だ。
作品は5つの人間(元になる顔)と92種類のアクセサリーの組み合わせで作られており、すべてが異なるデザインである1万点のNFTが無料で配布されたのである。
今や著名人や大手企業が保有しているほど人気で、希少な組み合わせの作品ほど高値で取引されている。
世界最古のNFTアートというプレミア感によってCryptopunksは希少価値が高く、NFTの中では骨董品のような扱いをされているようだ。
コレクターの中では所有すること自体がステータスとなっているので、所有者の多くが売却せずに保有した期間が長かったことが要因で今のような価格まで高騰したようだ。
特に昨年8月にはクレジットカード会社のVISAがCryptoPunksを49.5ETH(当時約1,700万円)購入して話題となり、今でも高い価格で取引がされている。
NFTと通常のアートの価値付けの違い
こうなってくると、Cryptopunksはアートというよりも、趣味性の高いコレクションアイテム(※)やガジェットといったほうがよいだろう。
つまり純粋なアートとしての価値ではなく、世界最古のNFTという希少性で価値が付いているということだ。
前回のコラムで説明したBAYCといい、今回のCryptopunksにしても、アート作品としての価値とは違うところで価格が決められていることは言うまでもない。
もちろん通常のアートの価格にも希少性や人気度というものはオークションでは重視されるが、一方でNFTはアート本来の楽しみ方と違うと理解してよいだろう。
アートには、鑑賞する面白さだけでなく、コンセプトを楽しんだり、作品のもつ創造性、インパクト、将来的に美術史に残る文脈の位置づけというものが価値として重視される。
一方、NFTアートは基本的には最初からオークションで売買されることから、希少性と人気度だけで決まってしまうことになる。
最初は安くても希少性さえあれば、人気を上げる仕掛けによって大きく変わってくるのだ。
ここでいう「人気を上げる仕掛け」こそがNFTのもつ「ストーリー展開」であり、これが最も重要であることがこれまでのアートのような「作家の世界観を重視する」といったものとは全く違うということを理解しておこう。
NFTアートはこれからどうなるのか
NFTの人気を上げるためにはストーリー展開が重要であり、例えば、そのNFTがどのように誕生したのか、どのような背景があって作られたものなのかといった部分に気を使うことが大切となってくる。
BAYCのようにコミュニティを中心としたNFTは特に、それをもっている保有者との関わりがストーリー展開として必要となるだろう。
NFTの保有者のみがアクセスできるDiscord(コミュニケーションアプリ)によるコミュニティがこれからはNFTと共にどんどん形成されていくだろう。
NFTは資格や修了証、土地の所有権のように唯一無二であることを証明するのに有効なので、それをデジタルアイテムに関連付けた形で販売されることが増えていくだろう。
さて、もう一度アートに話を戻すと、NFTのもつ唯一無二の証明以外のもう一つの特徴として二次販売の履歴が追えることがある。
誰かがそのNFTを売買するたびに、設定した販売手数料がアーティストの懐に入る仕組みを作ることができるのだ。
これはこれで便利な仕組みなのだが、これの持つ意味合いとしては、「転売されるたびに儲かる、流動性が高まれば高まるほど制作者の利益が増える」ということなのだ。
より何度も転売される作品がアーティストにとってはよいNFTということになり、短期間に転売されることを嫌う従来のアート業界とは真逆の商品なのだ。
しかし一方で、リアルのアートは高くて買えないけれどその画像データをNFTとして購入することで、リアルの作品の価値の上昇とともにNFTの価値を期待するといった買い方は今後増えていくだろう。
我々が考えるに、NFTが従来のアートのような認識で販売できるのは、映像作品、またはAR(拡張現実) やVR(仮想現実)といったテクノロジーを活用した作品であり、その分野においてはコピー商品の乱立を防ぐことができるだけでなく、デジタル映像作品の優秀な部分をアートとして追及することができるし、その分野に期待したいと思う。
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