本日からタグボートが福岡で開催する「Art Fair HAKATA」が始まった。
これまでアートフェアは東京にて数回開催してきたが、今回は初めての地方開催となる。
地方はコレクター層が東京と比べると格段に少ないのだが、開催に踏み切れたのはオンラインでも同時販売をするからだと言えよう。
あくまで重要なのは顧客利便性であり、顧客からしてみればアートフェアがどこで開催されても作品を買うことができればよいのだ。
一方、リアルの展示のみでオンライン販売がなければ、地方でアートフェアが開催される場合に首都圏の人はわざわざ現地まで飛行機や新幹線で出かけていかなければ買えないという不便さがある。
顧客というものは近い場所であれば積極的に現地に赴くのだが、そうでなければ普通にオンラインを使うという選択肢になるだろう。
例えば、我々はコロナ禍で遠方の人とのミーティングにはZoomなどのリモート会議システムを利用することが当たり前になった。
もちろんFace to Faceでのコミュニケーションが最も重要であり、リモート会議はそれを補完する機能でしかないことは承知の上で、リモート会議システムが我々に浸透したのは遠い距離を移動しなくてよいという利便性が上回ったからだ。
このような当たり前の顧客利便性の追求がアートの業界でまだ遅々として進んでいない。
作品を直に鑑賞できる場所があれば、そこで同時にオンラインでも購入できるという時代が早く当たり前になってほしいと思う。
さて、顧客利便性の観点からアートフェアがどのように成り立っていったかについて考えてみよう。
アートを買いたいと思ったときに、たとえニューヨークのチェルシーのように400軒ものギャラリーが集積している地区があっても全部を回るのは事実上不可能であり効率的ではない。
ギャラリー巡りには時間と労力がかかるわりにはお目当ての作品を買えるチャンスが少ないという問題があり、その解決のためには多くのギャラリーを一つの場所に集めた展示即売会(アートフェア)を開催すればよいという売り方の変化につながった結果なのだ。
さて、そのアートフェアといえども各ブースの面積には限界があり、ひとつのブースが多くの作品を展示販売することは不可能だ。
そのために、オンラインとの併用という選択肢が出てくるはずだ。
しかしながら、ネットとリアルの併用は成り立ってもオンラインだけのアートフェアというものは成り立たない。
例えば、オンライン視聴が当たり前になっている音楽業界でライブやコンサートに行く人が逆に増加している傾向があるのだが、これはバーチャルで当たり前のように見聞きできることを実際に体験したいという欲望が増えたからだと思われる。
簡単にバーチャルで視聴できるからこそ本物の質感や熱気を感じたいのだ。
これは音楽業界より一周り遅れているアート業界においても同じことが言えるのであり、ネットで作品画像を閲覧したりするだけでは十分ではなく、実際の迫力ある作品を見るのとは明らかに違うから展覧会に行くのである。
つまり、実体験とバーチャルは二律背反の関係であり、互いの足りない部分を補完してこそ利便性が高くなるのである。
Amazonや楽天では出来ない買い物体験をするためにあえて街に出かけるのであり、検索では得られない偶然性を楽しんでいるのだ。
徹底的なセレクション
これからのアートフェアに必要とされるのは、出品される作品が総花的なものではなく、より専門化されたものになるということだ。
現代アートに特化したというのは当たり前で、例えば、コンセプチュアルアート専門のフェアやストリートアート専門のフェアといった具合に進化していくだろう。
顧客はわがままであり、より簡単に自分のほしいアートを探そうとするものなのだ。
大規模な会場で多彩なアート作品を大量に見るよりも、より効率的に自分の趣味に近いアートを選べることがコレクターにとって都合がよいはずだ。
さらには専門化だけではなく、より高いクオリティの作品を厳密にセレクトしたアートフェアが望まれるだろう。
従来のアートフェアでは出展するギャラリーを選別すればよかったのだが、今後はどのような作品を出品するかまでが審査されるだろう。
キュレーションした作品によるアートフェアというのも出現するに違いない。
また、あるアートフェアにギャラリーが一度でも出展できればその後も出展が継続してできるという保証はなくなっていく。
すでに欧米の一流アートフェアではそのような動きが起きており、栄枯盛衰がすさまじい。
出品アーティストの作品が吟味され、より顧客の嗜好にフィットするようにアートフェア自体も変わっていくことでアートマーケット全体の成長へと繋がっていくのだ。
アートフェアとは顧客の利便性を追求した結果であり、複数のギャラリーによる展示即売会という古い定義では成り立たないものとなっていくだろう。
https://www.tagboat.com/artevent/artfair_HAKATA/
■個性豊かな46名のタグボートアーテストが集合!
今回出展するのはタグボートが厳選した46名のアーティスト。人気アーティストから若手アーティストまで、国内外から注目される実力派が集結。多彩な表現方法で皆様に驚きや発見をご提供する。
■展示作品はオンラインで購入可能!
■開催概要
開催期間:2022年11月23日(水・祝)~11月28日(月)
営業時間:10:00-20:00
*最終日は1階は18時終了、8階は17時終了
会場:博多阪急 1階MEDIA STAGE・8階催事場
〒812-0012 福岡県福岡市博多区博多駅中央街1−1
入場料:無料
オンライン販売:2022年11月23日(水・祝)12:00より販売開始
出展作家(五十音順)
AKIKO KONDO / ayaka nakamura / Calvin Hashi / Kamihasami / TARTAROS JAPAN / 足立篤史 / 有村佳奈 / 池伊田リュウ / 石井七歩 / 石川美奈子 / 今関絵美 / オオタキヨオ / 大谷太郎 / 大山貴弘 / 小木曽ウェイツ恭子 / 海岸和輝 / 加藤崇亮 / 北村環 / 木村美帆 / 工藤千紘 / 小池正典 / 後藤夢乃 / サイトウユウヤ / 榊貴美 / 佐藤弘隆 / 塩見真由 / シムラヒデミ / 鈴木ひょっとこ / 田村久美子 / 月乃カエル / 都筑まゆ美 / 徳永博子 / 富田貴智 / 中浦情 / 中島友太 / ナカムラトヲル / 西川美穂 / 橋本仁 / 濱村凌 / 林恭子 / ヒョーゴコーイチ / 廣瀬祥子 / 深澤雄太 / フルフォード素馨 / 三塚新司 / 宮内裕賀