アートはいかなる状況においても必要なものである。
「昭和の竜宮城」と呼ばれた雅叙園の特徴は装飾の豪華さにあるが、なかでも「百段階段」
見るだけでも十分価値のある建物なのだ。
このように伝統と豪華絢爛な装飾美を持つ百段階段は過去においても様々な美術展の舞台となってきた。
それは生け花、古美術、工芸といったものであり、百段階段と違和感なく自然とマッチする展示であった。
しかしながら、タグボートとしては今回この場所を生かしつつも現代アートとの融合を目指すこととなった。
東京都の指定文化財ゆえに各階にある和室にはいっさい釘を打つことが出来ない。
金箔や螺旋細工による漆喰など、触るべからずの仕様があらゆる部屋に施されているのだ。
しかも床は畳であり、そのスペースには現代アートが通常展示されるホワイトキューブのような自由さはないのだ。
しかしながらその不自由さの中でいかにアートの持つ魅力をいかに引き出すかというのも今回の楽しみのひとつであった。
また、現代アートを伝統的な建物に自然に融和させるにはアーティストの選別も重要であった。
今の時代を感じさせるコンセプト、インパクトのある見た目というものが現在アートでは重要である一方、そのような作品は文化財とは一見合わなさそうでもある。
ただそれは一般的な観念であり、そのような空間とのアンバランスをはかる力強さをアートには求めてきた。
例えば、過去において村上隆やジェフ・クーンズ、アニッシュ・カプーアといった現代アートの巨匠がフランスのヴェルサイユ宮殿で展覧会を開催している。
当然、ある種の違和感を持って迎えられるこの展示には、伝統を壊す行為だと賛否両論もあっただろう。
それでもアートは伝統に立ち向かうことにたじろいではいけない。
違和感をあえて作りだすことがアートの真骨頂であり、ここは伝統に臆することなく面白いアートを見せるべきだ。
巨大なオブジェ、映像作品、インスタレーションなど多彩な顔触れが来場者を待つこととなる今回の展覧会は、1か月という長丁場で開催され、そこでは展示される作品の販売もされている。
昨日からいざ作品を搬入して展示し始めると、敢えて違和感を作ろうとした作品が意外と華美な和装飾にもマッチするという想定外のことも起こってきた。
こういうことが起こるから現代アートは面白いのだ。
今回の展示に参加するアーティストは、さまざまな技法による絵画作品はもとより、漉き和紙によるインスタレーションや、写真、デジタル作品、そして立体的な作品など幅広い表現力を持つ新進気鋭の作家である。
空間との相乗効果によってそれぞれの魅力を最大限にまで引き上げるチャレンジがどのようなものかを実際に体験していただければ幸いである。
http://tagboat.co.jp/tagboat-hyakudankaidan/
展覧会名:「TAGBOAT×百段階段」展 ~文化財と出会う現代アート~
開催期間:2020年9月11日(金)~10月11日(日)
開催時間:日~木曜日・祝日 10:00~17:00、金・土・祝前日 10:00~20:00
※入場は閉館の30分前まで
入場料:当日¥1,600/前売¥1,500
※9月10日まで公式オンラインチケットにて販売
学生¥500 ※要学生証呈示、未就学児無料
会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
主催:株式会社タグボート・ホテル雅叙園東京
販売窓口:ホテル雅叙園東京(当日のみ)、公式オンラインチケット詳細はこちら