タグボートアートフェアまで、あと1か月となった。
アートフェアという言葉を耳にすることは増えてきたが、そもそもアートフェアとは何なのか?
新しいアートフェアのフレームワークを考えていく中でアートフェアの形式は今後どのように変化していくのか?
今回は、その可能性について考えてみたい。
アートフェアは「見本市」か、それとも「商談の場」か
アートフェアはよく「見本市」として説明される。
見本市の代表的な例は、東京モーターショーなどの新製品発表の場である。企業はここで最新の技術や製品をお披露目し、ブランド価値を高める。
また、リクルーティングイベントのように、その場でのマッチングを目的とするものもある。
では、アートフェアはどうだろうか?
アートフェアもプロモーションの側面を持つが、その目的の比率は「プロモーション2割、商談8割」くらいの割合だ。
つまり、アートフェアの本質は「商談の場」なのである。
なぜアートフェアが重要なのか
アートフェアが商談の場として機能する理由は、ギャラリーの特性にある。
多くのギャラリーは個人事業主であり、複数店舗を構えていることは少ない。
さらに、大通りの1階に店舗を持つことも稀である。そのため、日常的に来場者が少なく、知名度も限られている。
だからこそ、アートフェアは重要だ。
アートフェアには多くの来場者が集まり、出展することでギャラリーの名前を広めることができる。
特に、まだ知名度の低いギャラリーにとっては、アートフェアは生命線となる。ここで売上を確保し、新規顧客を獲得しなければならないのだ。
「行商」スタイルのギャラリー
アートフェアでは、多くの来場者が訪れるため、「売れるもの」を展示するギャラリーも数多く存在する。
これは、観光地で土産物を売る店の戦略と似ている。つまり、「売れそうな作品」を前面に出し、アート初心者の顧客を取り込もうとするのだ。
この戦略のメリットは、まだアートを買ったことがない層にリーチできることにある。
彼らにとってアートフェアは、スーパーやショッピングセンターのようなものだ。多くのギャラリーを一か所で見て回ることができ、比較しながら購入することができる。
アートフェアの課題
アートフェアの課題として、顧客情報の問題がある。通常、チケット販売や受付を管理するのはフェアの主催者であり、ギャラリー側が来場者の情報を入手することは難しい。
つまり、ギャラリーがどんなに熱心に接客しても、名刺交換ができなければ、その後のフォローアップができない。
これは百貨店やショッピングモールの仕組みと同じで、顧客情報を持つのは店舗ではなく施設側である。
そのため、広告を打ち続けなければならず、「待ち」の姿勢になりやすい。過去の購入顧客リストを持つ老舗ギャラリーが有利になるのはこのためだ。
目立たないギャラリーはどうすればいいのか
ネットを活用できていないギャラリーにとって、アートフェアの会場で目立つことは死活問題である。
どのようなアーティストがいるか、どんなブランディングをするかが重要になってくる。
また、展示の仕方にも工夫が必要だ。壁一面に小さな作品を並べるような展示では、センスの悪さを疑われる可能性がある。
これからのアートフェアの可能性
これからのアートフェアは、いくつかの変化を迎えるだろう。
アーティスト自身の出展が増える
これまでアートフェアはギャラリー単位での出展が基本だった。しかし、近年ではギャラリーを通さず、自分で販売力を持つアーティストも増えている。そのため、アーティスト自身がアートフェアに出展する機会も増えていくだろう。
オンラインとの融合
アートフェアとオンラインの融合は進むと予想されるが、現状ではあまり進んでいない。
その理由は、ギャラリー側のITリテラシーの低さにある。ネットを活用するギャラリーも増えてはいるが、従来のやり方で成功してきたギャラリーはオンラインに消極的な傾向がある。
しかし、この流れは時間の問題だ。いずれはオンラインを活用しないギャラリーは淘汰され、オンラインとリアルの融合が進んでいくことになるだろう。
アートフェアは、単なる見本市ではなく、商談の場として機能している。
そのため、ギャラリーにとっては重要な販売機会であり、新規顧客を獲得するチャンスである。しかし、顧客情報を獲得しづらいという課題もあり、老舗ギャラリーが有利な状況になりがちだ。
今後のアートフェアは、アーティスト自身の出展が増えたり、オンラインとの融合が進んだりすることで、さらに多様な形態へと進化していくだろう。
これからのアートフェアがどのように変わるのか、タグボートがギャラリーとしてどのようにアートフェアを変化させていくのかを期待して頂きたい。
Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
2025年3月14日(金) ~ 4月5日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊:日月祝
※初日3月14日(金)は17:00オープンとなります。
※オープニングレセプション:3月14日(金)18:00-20:00
※3月20日(木)は祝日のため休廊となります。
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F