アートのルールは欧米主導
ご存知の通り、世界のアート市場というものは欧米を中心に動いている。
アートの価格形成、評価といったすべてのルールが欧米の常識から作り出されたものであり、我々はその決められたルールの上でゲームをしなければ戦っていくことはできない。
ルールを無視していては市場で相手にされず、大手のオークションハウスで取り扱いをされることもないのだ。
例えば、精巧に描かれたイルカのシルクスクリーン版画であるが、欧米のセカンダリー市場から評価の対象外であればオークションの取り扱いがされないのはもちろんのこと、プライマリー市場からも敬遠されることとなる。
しかも欧米で作られたアートのルールはこの20年でグローバル化しており、世界中のギャラリーやアーティストはそのルールに基づいて戦わなければならず、一方で日本独自のルールは矮小化せざるを得ない状況にある。
例えば、超絶技巧、美人画といった類のアートは日本の老舗画廊ではいまだに人気であるし、日本画の大家と呼ばれる作家も高い価格で百貨店で販売されているが、そのほとんどは海外のグローバル市場では評価の対象外となっている。
また、交換会とよばれる美術商の業者のみが参加可能な互助会的な入札システムも日本独自のルールで運用されており、海外ではそこで取引された価格は評価の範囲外だ。
グローバル化からローカル回帰へ
しかしながら、コロナ禍においてネット流通に遅れたアート業界は大きな痛手を受けており、特に人口当たりの死者が日本の20-60倍である欧米はギャラリー運営の深刻度合いもけた違いに厳しくなっているようだ。
売上は前年比大幅減となったギャラリーが多く、メガギャラリー以外の中小ギャラリーで固定費をカバーできないところは淘汰が始まるに違いない。
また、インターナショナルなアートフェアは、出展ギャラリーや来場者が見込めないことから中止を余儀なくされる動きはまだ続くだろう。
主催者側が開催したくてもメインスポンサーが消極的にならざるを得ないからだ。
これによって、アートの国際交流はこの1、2年ではほぼ皆無となり、海外に出向くことで売り上げを作っていた国内販売比率の低いギャラリーも苦境に立つこととなる。
そうなると当然、自国での販売に再度目を向けることとなり、これまで進んできたグローバル化に一旦ストップがかかることになるだろう。
これによって中国をはじめアジア各国の後追いであった日本市場も自国のマーケットの掘り起こしに躍起にならざるを得ない。
まだ日本のアート市場は米国の80分の1、中国の40分の1と先進国では極端に小さく、まだまだ成長余力があるのだ。
すでに30-40台のプチ富裕層を軸として新しい日本のアート市場のテコ入れは始まっているが、周回遅れを挽回するまでには時間がかかるだろう。
ローカル化の終焉
結論としては、コロナ禍が収束するかどうかに関わらずアート市場のローカル化は一時的なもので終わるだろう。
そもそもアートのような言葉による解釈を必ずしも必要としない商品のグローバル化は止めようがないからだ。
一旦せき止められた流れはその分、勢いが逆に増すことになるだろう。
早い段階で我々はコロナとの共生を始めることとなり、集団免疫の獲得が徐々に進むことで世の中の安心感も拡大していくと予想される。
一方、ネットによるオンライン販売についてはグローバル化を補完する手段であったものから、グローバル化を牽引するものへと変わっていくだろう。
コロナ禍において、オンラインが時間と距離をやすやすと超えていくことを知ったギャラリーは、リアル展示にプラスしてオンライン販売をすることが当たり前へとなっていくだろう。
また、コロナ禍によってアート市場が欧米主導からアジアへと移っていくと言う人もいるようだが、そんなことはありえない。
あくまで欧米主導が一時的に弱まるだけであり、コロナの死亡者数が少ない東アジアの購入層が世界全体で見ると相対的には盛り上がるだろうが、あくまでルールは欧米が作っており、それが崩れることもないと思われる。
世界の潮流がコロナ禍で大きく変わることを心配するまでもなく、早い段階で大きな揺り戻しが来るだろうし、さらにアート市場が成長することになるだろう。
リーマンショックのときもそうであったが、アート市場は全体としては拡大方向にあるので、一時的な不況から市況が取り戻すのにさほど時間がかからないだろうと確信している。
【メディア情報】
フジテレビ「Kinki Kidsのブンブブーン!」でタグボートの取り扱いアーティストをご紹介!
2021年1月16日(土)11:05 – 11:50
「色んなアートを見たい!」をテーマにTAGBOAT代表の徳光健治がアート好きな東山紀之さんにタグボートの取り扱いアーティスト5名をご紹介します。
今回は、徳永博子 岩岡純子 鮫島大輔 鈴木ひょっとこ 井口エリー
となります。ご期待ください。