アーティストは新型コロナウィルスの影響を受けて3月~5月の間にギャラリーが展覧会を中止しただけではなく、アートフェアにも出展できなかったこともあり、人によってはほぼ現金収入がゼロの人もいるようだ。
作品販売だけでは食べていけないため、アルバイトと兼任で生計を立てているアーティストも多いのだが、コロナの影響でそこでの収入も断たれている場合も多い。
飲食、観光、宿泊、エンタメといった業種と同じように、アートも典型的な不要不急と言われるこの時期において、絶体絶命の危機にさらされているアーティストは少なくない。生活自体がままならなくなったアーティストが出てきているのだ。
その一方で、収入が途絶えたアーティストに対する様々な支援策が各都道府県で始まるようだ。
例えば東京都の場合、アーティストの作品による動画を募集し、きちんと表現活動をしていることが証明され、且つその活動が東京都の判断による芸術活動と認められた場合に4000名を上限としてアーティストに10万円が支給されるという制度だ。
ただし、東京都がいう「アーティスト」とは音楽、舞台、伝統芸能を含んでおり、美術関連はその一部にすぎない。
日本にいる自称芸術家20万人のうち半数の10万人が東京に住んでいるといわれており、受給者4000名のうち美術部門がもし2000名だとしても都内のアーティスト全体の2%しか支給されないためハードルは高い。
そういう環境の中でもアーティストはこの時期は自宅にいる時間が長いため、作品を制作するしかない状況だ。
つまり、コロナ時代には売るべき作品が世の中にいっぱい出てきているといえよう。
この時代に外出できないことで自分と向き合う時間を得たアーティストの作品は圧倒的に面白くなる傾向にある。
以前のコラムでも書いたように、これから始まる大不況ではこれまで見たこともない価値観を持ったアーティストが出てくることは間違いない。
そのような面白いアーティストが次々と出てくるこの時期は購入者にとってはありがたいことだ。
同時にアートは様々なエンターテインメントの中でも、フローではなくストックできる貴重なものだからこそ、不況の時代にも手元に置いておきたいものの一つなのだ。
つまり、音楽、演劇、映画などの文化がフロー(目の前を流れていく)であるのに対し、アート作品はストック(資産として蓄積される)なのである。
音楽、演劇、映画などはその時だけを楽しむ刹那的なものであるが、アートは作品を見て楽しむだけでなく、価値が上がった作品を売って資産的利益を生むことまで出来るのだ。
そこがアートが通常のエンターテインメントと違うところでもあるのだ。
さて、アーティスト支援を考えたときに、ギャラリーで購入するとアーティストには購入額の50%が払われるという分かりやすい料率がある。
音楽のCDや演劇のチケットを買うこととは割合の面でも支援の意味が違うと言えるだろう。
しかしながら、オークションで作品を購入する場合にはアーティスへの支援にはならない。
コレクターがギャラリーから作品を購入したときに作品の50%のお金が作家に支払われるが、その作品をオークションに出すときには手数料はオークション会社に入るだけでアーティストには1円も支払われないからだ。
従い、この時期にアーティスト支援の意味も込めてアートを買うのであれば、ギャラリーから買うということになる。
今月から政府からの特別定額給付金10万円を受け取る人の中で、生活に困ってない人、年金生活者、給与が全く減らない人がいれば、是非アーティストの支援のためにアートを買うということを考えて頂きたい。
国や地方自治体が行うアーティストの支援というものは、アーティストが給付金をもらったとしても、それが生活の足しにはなっても、アーティストのキャリアにはつながらないからだ。
できれば、アーティストにとっては作品を買ってもらい、その作品を家に飾って楽しんでもらうことがキャリアアップにつながる。
作品が売れたという実績が残ることは作家にとって大きいのだ。
例えば、そのアーティストが出世したときに、回顧展などでは過去に販売したコレクターから作品を貸し出してもらうこともあるように、まずはコレクターに作品を持ってもらうことが重要なのだ。
タグボートのようなオンラインでの販売の場合、売れたことがウェブ上ではっきりわかるので、作家にとっても販売そのものが実績として残ることになる。
アーティストにとっては給付金はその場をしのぐのに必要なお金であっても、支えてくれるファンができるわけではない。
キャリアを作っていくためにはやはりアートを買うことが最大の支援になるのだ。
以下の通り、10万円以下でも非常に魅力的な作品が多い。予算の範囲内でクリックすれば素敵な作品を出会うこともあるだろう。