アートは工業製品とは違い、個人が作るものである。
また、アートは個人の世界観を表現するために作られるため、それが世の中に役立つかといった有用性を気にする必要もない。
このような特性をもつアートが最初に販売される場所や作品をプライマリーと言い、取り扱うギャラリーはプライマリーギャラリーと呼ばれる。
一方、ギャラリーから買った購入者が持っていた作品を再販売する場合、その作品をセカンダリーとよぶ。
セカンダリーを販売するのは主にオークションハウスやセカンダリーディーラーである。
プライマリーもセカンダリーも同じアート作品ではあるが、アーティストとの関係は大きく違う。
プライマリーでは販売時にアーティストに作品代として販売額の半分ほどが支払われるが、セカンダリーは販売しても仕入先のコレクターに作品代は支払われるがアーティストに一切お金は払われない。
一部フランスなどの国で追及権という法律があり、オークションハウスでの販売時に数パーセントの手数料がアーティストにも支払われることもあるが、多くの国で適用されているわけではない。
このように、アートを最初に売買するプライマリーと購入後に再販するセカンダリーでは、ビジネスの有り様に大きな違いがあるのだ。
プライマリーとセカンダリーの違いを端的にいうと、プライマリーが人のビジネスであり、セカンダリーがモノのビジネスであるということだ。
プライマリーの世界では、ギャラリーがアーティストとの間でどのような作品を作り出品するかを話し合い、アーティストをプロモーションするために尽力を尽くす。
つまり、作家の成長と人気度合いに基づいて作品価格をじわりと上げていきアーティストとしての価値を上げるのがギャラリーの仕事だ。
作家個人をプロモーションする意味では、ギャラリーとは芸能プロダクションのようなビジネスと言えよう。
つまり、作品というモノよりもアーティスト個人を売り込む仕事ということだ、
一方、セカンダリーでは作品がモノ扱いされる。
セカンダリー作品はサイズ、絵柄とともに記号化され、カタログ化されてインデックスに保存されていく。
アーティストを個別にプロモーションするのではなく、セカンダリーとして販売する場所に質の高い作品を数多く集めるとともに顧客が買いやすい場を作りあげることが重要となる。
個別のアーティストをプロモートすることはあくまでギャラリーの役割であり、ギャラリーによってプロモートされた作品を売買することがオークションハウスやセカンダリーディーラーの役割ときっぱりと分けられているのだ。
このように、人間のコミュニケーションからアーティスト「個人」の価値を上げるプライマリーの仕事と、そこから出てきた作品を「モノ」の価値として上げていくセカンダリーはその目的が違うのであり、どちらもなくてはならないものである。
プライマリーとセカンダリーはそれぞれが相互作用として働くことで、アーティストとその作品の価値を上げることにつながっているのだ。
さて、プライマリーで販売される作品の価格は、ギャラリー側がアーティストの経験年数、サイズ、素材、制作期間、人気度から総合的に決めるのであるが、素材ではなく付加価値部分が価格全体の90%を占めている。
そのために購入側から見るとギャラリーが販売している価格が妥当であるかは判断しづらいという問題がある。
一方でオークションハウスで落札されるセカンダリー作品は、価格が需要と供給の関係で決まってしまうので市場に連動しており非常に分かりやすい。
オークションハウスが提示するエスティメート(見積価格)という基準があるにはあるが、最終的には購入者による競りで落札される価格は、そのほとんどが人気度によるものだ。
オークションハウスで高値で落札されると、ギャラリー側も安心してプライマリー価格を上げることもできるため互いに共存共栄している。
ギャラリーはアーティストの価値を上げ、オークションは作品の価値を上げることに集中すればよいのだ。
従い、我々がギャラリーの立場でプライマリー作品を販売する場合にもアーティスト個人のキャラクターや才能を重視することが多い。
現在作っている作品も重要であるが、そのアーティストが将来的に作るであろう作品にも期待をするのだ。
プライマリーは人を扱うビジネスであるからこそ、展覧会では作品を見せるだけでなくアーティストの考え方やキャラクターを購入者に知ってもらうチャンスでもあるのだ。
タグボートが取り扱いをするアーティストはそのような才能を持った人たちをセレクトしているのであり、アートだけではなく様々なことにチャンレンジする力、世の中に対応できる柔軟性、多くのことを知識として取り込む包容力を重視している。
そういったアーティストの才能を多くの人に知ってもらおうと考えているのだ。
現在、阪急メンズ東京で開催中の落合陽一も才能の塊を持つアーティストの一人である。
是非、この機会にご覧いただければ幸いである。
<開催概要>
開催期間:2022年9月28日(水) ~ 10月11日(木)
※最終日のみ1Fは15時閉場、7Fは20時閉場
会場:阪急MEN’S TOKYO 1F main base、7Fタグボート
(〒100-8488 東京都千代田区有楽町2-5-1 阪急MEN’S TOKYO 1F main base、7Fタグボート)
http://tagboat.co.jp/yoichi_ochiai/
落合陽一氏は東京を拠点に活動するメディアアーティストで、境界領域における物化や変換、質量への憧憬をモチーフに作品を展開している。
2010年に本格的な作家活動を開始し、これまで国内外での個展やグループ展、写真集の刊行など、精力的な活動を行ってきた。
今回の個展では実験的な試みとして、インタラクティブな新作「ヌル即是色色即是ヌル」を発表する予定です。
また、今回展示するNFTを素材としたアート作品の一部は、オンラインとオフラインのハイブリットでの販売を予定している。
世界が注目する若き才能を、ぜひ会場でご覧いただきたい。