縮まらない海外との格差
国内のアート市場は2020年にはコロナ禍の行動制限によってギャラリーに訪れる顧客が激減したことが原因で、全体的に2-3割ほど市場が減少したものと思われる。
しかしながら、2020年後半から2021年、22年にかけて国内アート市場はオークションなどのセカンダリー市場が隆盛となったことでプライマリー市場も持ち直し、2022年は2019年より全体のマーケットは拡大する結果となった。
しかしながら、長期的な視点で見ると、ここ数年の現代アートのプチブームは万々歳といえる状況ではない。
増えたといっても、まだまだ日本のアート市場は脆弱なのだ。
国内のローカル色が強く、欧米で売れている作品とは作風が異なっているので、近いうちに頭打ちが生じる可能性がある。
コロナ禍でマーケットが拡大してきたにもかかわらず、欧米市場とリンクが進まない現状では成長するアジア市場からもそっぽを向かれることだってありえるのだ。
海外との格差がなかなか縮まない状況ではあるが、今年7月に多くの期待を抱えてTokyo Gendaiというアートフェアがパシフィコ横浜にて開催される。
全部で79軒のギャラリーが出展するがそのうち国内ギャラリーは29軒で、海外勢は50軒という組み合わせのこれまでにない国際的なアートフェアが初めて日本で開催されることとなる。
とはいうものの、実情を調べると海外ギャラリーのうち世界の五大ギャラリーとよばれるGagosian、David Zwirner、Hauser &Wirth、Pace、White Cubeは出展しないということだ。
以下の表のとおり、香港、シンガポール、ソウル、上海などアジアの有力都市のアートフェアでは、メガギャラリーがどの程度出展するかの指標がそのフェアとしての格式とブランド力になるのだが、残念ながらそれは今回のTokyo Gendaiでは実現は難しかったようだ。
また、中堅どころの海外のギャラリーが多く出展する影響を受けて国内ギャラリーは出展数が制限されたようである。
来年も国際的なアートフェアであるTokyo Gendaiが開催されるのであれば、ぜひ五大ギャラリーの一角が出展できることを期待したい。
【アジアの各都市のアートフェアの最近の五大ギャラリーの出展状況】
長期保有がアートの原則
上記のような海外と日本とのアート市場の格差を縮めるためには、コレクター側も買い方を知っておく必要がある。
つまり、作品をギャラリーで買うだけではアート市場はさほど広がらず、それをセカンダリー市場で売買することによってプライマリーとセカンダリーの歯車が回りだし市場を拡大する牽引力となるのだ。
そういうことが欧米では普通に行われており、それがアート市場の拡大につながっている。
海外のコレクターは、ギャラリーで購入したアートは長期保有が将来の売買で有益であることを知っているので、基本的には購入後2,3年くらいで作品を手放すことは少ない。
株や債権などの有価証券は売買手数料がアートに比べると小さいので、短期間の売買で利ザヤを稼ぐことが可能であるが、アートはそのような金融商品とは違うことを欧米のコレクターは理解しているのだ。
一方で、国内の最近のコレクターはオークションで値が上がり始めるとすぐに作品を手放すことが多く散見される。
ギャラリー側ではなるべく長期保有してくれる顧客を選べればよいのだが、こればかりは選別が難しいのが現状だ。
購入したアートを短期間で売らざるを得ない理由としては一般的に「3D」=death(死)、divorce(離婚)、debt(負債)と言われる。
保有者が亡くなられた時や離婚した場合に受け継いだ方が資産である作品を売却するということだ。
また会社が倒産の危機となったときに所持していた作品を泣く泣くオークションで売却することもある。
いずれにしても悲劇の最中に行われることである。
それ以外に短期間で売る理由というのは、「作品に飽きた」「作品が気に入らない」であり、あまりプラス要因でない場合が多い。
だからこそ、作家からすると短期間での売却はマイナスなイメージを持ちやすいということである。
逆に長期保有後に売却するという行為については、作家を含めギャラリーからもとやかく言われることではなく、セカンダリー市場によって作品の価値を高め、市場を拡大することにもつながるのだ。
またセカンダリーとしてオークションに出すことは作品の現在の市場価値を知る指標にもなるので、決して購入した作品を売却することは悪いことではない。
上記のように購入した作品は5年または10年経つまでしっかり保有することは大事であり、そうすることが愛されるコレクターであるということを理解していただきたい。
さて、タグボートは今週末から独自のアートフェア「tagboat Art Fair」を開催するのだが、すべてアーティストの新作のプライマリー作品である。
およそ1600点の展示作品からご購入いただいた作品についてはなるべく大事に長期所有してほしいし、売却を検討する際には必ずタグボートに相談するようにしていただきたい。
「タグボートの取り扱いアーティストの作品は購入時よりも高く販売する」ということは明記してあり、安心してご購入できるシステムがあるということを理解して頂きたいと思う。
2023年4月14日(金) 13:00-19:00 プレビュー
2023年4月15日(土) 11:00-19:00 パブリックビューイング
2023年4月16日(日) 11:00-16:00 パブリックビューイング
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