前回に引き続いて、今回のコラムでは「将来的にきちんと資産になり、且つ値上がりを期待できる作品」とはどのようなものかについて考えてみよう。
将来的に資産となり値上がりが期待できる作品は、「高価格であっても売れる」作品のことである。
価格が高いだけの作品を色々なところで見かけることがあるが、残念ながら売れていなければその価値が認められていることにはならない。
古い美術の業界では売れる売れないにもかかわらず、作家歴が長いという理由で高い価格を付けて売れないまま残っている作品が多い。
値段だけが高くても売れなければ、その後も値上がりは期待できないので資産的な価値がある作品とは言い難いだろう。
価格が高い作品=クオリティが高い作品ではない
今回のコラムでは、作品の価格を継続的に上げていって資産価値を作ることの仕組みを理解していこうと思う。
最初にひとつだけ言っておくと、価格が高い作品=クオリティが高い作品という公式が必ずしも成り立つものではないということだ。
作品の価格が高くても売れ続ける仕組みが分かれば、作品の技術あるいはクオリティと作品価格には絶対的な相関関係がないことに気付くだろう。
作品価格を上げても売れるためにはそれ相応の施策がきちんとされていることが重要なのだ。
特にマーケティング施策が重要であり、そこが十分に練られていないと、上がるべき作品の価格が上がらないことになる。
さらには、セカンダリー市場における人気度合い(需要と供給)も価格に影響を大きく与えることがある。
このような様々な要因によって作品の価格が構成されることから、作品の価格はクオリティだけで決まるものではないのだ。
例えば、最初は同じような価格でスタートを切った2人の作家の作品が10年後に一方だけ高くなって何十倍も大きく差が開くことがある。
価格が上がった作家は過去の作品も評価されるので、同じくらいのクオリティだと思われた作品の価値は後になっていくらでも変わるということだ。つまり、作品価格は質だけの問題ではないのだ。
価格を上げる方法を知っている業者から買うのと、そうでない場合とでは将来的な価格の差が大きく違ってくるということだ。
これは、新入社員の時の給与はあまり変わらないが、入社する会社によって10年後には2倍、3倍の年収の差が付くようなもので、個々の能力よりも「どの器に入っているか」が重要なのだ。
ここでいう「器」とは業者が行う施策によって左右されるものであり、以下のマーケティング施策の4Pに照らし合わせて、作品の価値が上がる仕組みを理解しよう。
必要な施策とは
さて、マーケティング施策の4Pとは、商品(Product)、価格(Price)、販売促進(Promotion)、販売チャネル(Place)の頭文字を取ったものである。
これらの4Pをバランスよく調整し、マーケティング施策を立てることによって顧客のニーズを満たし価格が上がり続ける仕組みを作ることができるのだ。
特にマーケットの4P で一番重要なのはProduct、つまり作品である。
作品については技術だけではなく、過去の美術史の延長線上にない発明品、つまりコンセプトの斬新さが重要である。
また、作品そのものが放つインパクトの強さも大事である。これについては次週さらに詳しく説明しよう。
次にPriceについては、顧客が買えるラインまで価格を少しづつ上げることが重要であり、そのためにはオークションなどのセカンダリー市場でも人気を得ることも必要だ。
特にアートの価格はいったん設定すると下げることは難しい。
値下げは価値そのものが低下した意味合いがあるので、簡単に下げてしまうと以前購入した方の期待を裏切る形になるからだ。
Promotion(販売促進)については、既存顧客への訴求だけではなく新規顧客の獲得のためのメディアへの露出、SNS投稿、海外への宣伝など様々な施策をし続けなければどこかで価格は高止まりしてしまうと思ってよい。
一度売れたからと言ってそのまま売れ続けることは難しく、常に新しいプロモーションをしなければ顧客は飽きてしまい他の作家や他の商品に気が移ってしまうのだ。
最後にPlace(販売チャネル)については、世界の1%に満たない日本国内市場だけではなく海外にも目を向けるべきであるし、オンライン販売によってリアルとの融合を狙った新しいチャネルは必須だろう。
このように、高くても売れ続けていくには作品のクオリティだけではなく多くの要素の構成によって成り立つのであり、それを十分理解している業者と付き合うかどうかで将来的に大きく差がつくのである。
タグボートはアーティストの作品を少しずつ値上げをしても売れ続ける仕組みのために、顧客の利便性の最大化を狙ったアートフェアを単独で開催している。
今週末には公式サイトから販売作品が公開される予定なので事前にチェックして頂きたい。
2023年4月14日(金) 13:00-19:00 プレビュー
2023年4月15日(土) 11:00-19:00 パブリックビューイング
2023年4月16日(日) 11:00-16:00 パブリックビューイング
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