アートを買ってみたいと思っている方からアドバイスを乞われることがよくある。
その場合、具体的にどのような作家のどの作品を買うべきかを言ってしまうと、今後はその都度買うべき作品をアドバイスし続けなければならない。
また、購入する方にしても、自分自身がどのような作品が好みであるかを完全に理解していなければ、具体的な作家名、作品名を想起するのは難しい。
このようにアートは個人の嗜好に根ざしたものであるため、何を買えばよいかという具体的なアドバイスはなかなか難しいものだ。
アートを買ってみたいと思っている人が数万円で自宅のインテリアになる作品を探している場合には「好きなものを買えばよい」の一言で済んでしまうのだが、将来的にきちんと資産になるアートで、且つ値上がりを期待できる作品となると話は別で様々な助言が必要となるだろう。
今回のコラムはシリーズとして数回にわたって、「アートを買って資産を作る」をテーマに話をしたいと思う。
アートを買うことで、ライフスタイルが豊かなになり、且つ資産にもなるという一挙両得の方法をお伝えしたい。
海外と大きく差がある日本のアートマーケット
先週開催されたアートバーゼル香港は3年ぶりにすべての感染症対策などの規制が解除されたフェアとなった。
アートバーゼル香港には177軒の国際的なギャラリーが出展し、8万8千人の来場者があったと主催者からの報告があったが、一般のチケットは約9000円と決して安くない価格にもかかわらず、それでも過去最高の人数が押し寄せたほどに活況だったということだ。
会場からほど近いアート施設である大館(タイクン)やトップギャラリーが軒を並べるH Queen’sというビルでもイベントが開催されたほか、西九龍にあるアジア最大の現代アートミュージアムであるM+は大盛況で、草間彌生の個展も人気であった。
美術館やギャラリーが網を張るようにしてアートフェアを中心としたアートの街としての空間を作り出していたのだ。
香港はここ数年は中国側の厳格なコロナ規制や民主化デモ騒動で観光客が遠のいていたが、三年も待ちに待ったコレクターがアジア各国や欧米から訪れることで完全復活を遂げた形となった。
前年まではシンガポールや上海といった都市がアジア地区のアートの覇権争いに加わったかのように見えたのだが、今回のアートバーゼル香港を見る限りでは、二都市をはねのけて香港が安定したアジアのアートの中心地であることを証明することとなった。
2022年は早々にコロナ禍から脱した欧米のアート市場が活気を取り戻して、その時期にまだ停滞していたアジアのアート市場との差が広がっていた。
台湾、中国、香港、日本といったアジアのギャラリーは欧米のアートフェアには数えるくらいしか出展しておらず、アジアが欧米に遅れをとった印象を受けたのだが、2023年になって香港をはじめとしたアジアの都市が一気にその差を詰めていくことになるだろう。
アジアのギャラリーが半数以上を占めたアートバーゼル香港であるが、そこではシティポップ系やかわいい女の子のイラストアートなどはほとんど見ることがなく、日本独特のガラパゴスな作品形態はここでも通用しないことが明らかであった。
日本のアート作品の単価
現在の日本はG7各国の最低賃金で比べるとおよそ2倍以上の差が開いている。ざっくりいうと、日本が時給1000円で欧米先進国は2000~2500円だ。
今後は英語がある程度話せれば海外に出稼ぎに行く若年層は増えていくだろう。
すでに日本は先進国とは言える立ち位置ではなく、成熟国と言うような高齢者をメインとした安定的な停滞経済に入っていることは間違いない。
他のG7との経済の差は開くばかりであり、そうなると先進国最低レベルである日本のアート市場とその他海外の差は開いていくばかりだ。
これからは日本のアート作品の単価が相対的に低くなってしまうので、欧米人から見ると買いやすいお手頃価格となるだろう。
欧米の3分の1程度で日本のアートが買えるようになると、それを狙って将来的な価値上げを意図的にする動きが始まってもおかしくはないと思われる。
相対的に安い日本のアート作品が欧米コレクターの草刈り場となり価格が高騰する前に、日本にいる我々が先んじてよい作品を買っておくほうが賢明だろう。
そに作品はすでに国内のオークション会社で落札額が上がっているアートではなくて、まだ十分に世の中に出ていないアートであり欧米で将来的に評価が上がる可能性が高いアートである。
仕込みの時は今であり、将来的にきちんと資産になるアートで、且つ値上がりを期待できる作品とはどのようなものかについて来週のコラムでさらに詳しく説明したい。
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