最近はデザイン思考というものがまるで流行のように世の中に浸透してきている。
書店やセミナー、大学での講義でもデザイン思考で満載だ。
デザイン思考とは、
デザインした製品を求めているクライアントやユーザーの考えを理解した上でまずは仮説を立て、最初の段階ではわからなかった解決策を考えたり問題を再定義するといった一連の問題解決の考え方のことである。
そして、机上で考えるだけではなく、行動しながら考え、より良い結果を追い求めるための問題解決の方法でもある。
元々デザインというものは、クライアントからの要望に対してどのように有用性を考えるか、ということにあることから、デザイン思考そのものはビジネスマンにも分かりやすい概念となっている。
すべてを顧客視点をもとにして作っていく考えかたであり、仕事をする場合にその思考は役に立つだろう。
そのようなデザイン思考と比較してアート思考とはどういったものだろうか。
アートはデザインとはパッと見の形は似ているものの、その目的の違いは明らかだ。
アートというものはそれを作るアーティスト個人の「思い」とか「創造性」によって生まれるものであり、そこにはクライアントの要望というものは入っておらず、個人が思い描くのものを勝手に作り出しているものなのだ。
従い、作った作品がマーケットに受け入れられるかどうかは、当たるも八卦当たらぬも八卦ということとなる。
たまたま自分が作りたい作品をアートマーケットに出して評価されれば売れてしまうということだ。
一方でデザインはクライアントありきのモノづくりのため、クライアントの要望に着実に合うものをつくっていれば確実にお金を支払ってもらえる仕組みとなっている。
デザインは創造性の源泉がクライアントにあり、クライアントがその創造性に満足しなければ、作りてはお金を得ることができない。
一方アートは、クライアントが何を考えているのかどうかはアーティストの頭の「圏外」にあり、とにかく自らが作りたいものを作っているだけだ。
つまり、本来アートというものは、その作品がすごいかどうかは本人が評価することであり、その作品が売れるかどうかの対外的評価をあてにするものではないはずだ。
つまり評価を自分自身にだけ置いているアーティストは、売れる売れないに関係なく満足できるものである。
売れるアーティストとは個人が満足した作品が万人にも受けたという結果論でしかない。
経済的な満足度で評価できないのがアートであるとすれば、売れる作品はデザイン的思考、つまりクライアントの要望に沿ったアートに近いといえるかもしれない。もちろんすべてがそうと言うことではないが。
または、アーティストが自分の意志で作ったものが多くの人から共感を呼べばアートは売れるのである。
つまり、作ったアート作品を世界中くまなく見せることができるとすれば、1万人に1人しか買いたいと思わない作品でも、世界の77億人に見てもらえれば77万人に売れるということだ。
だからこそ、アートは多くの人に見てもらう必要があるのだ。
さてデザイン思考とアート思考の違いについて大まかに理解はしていただけたかと思う。
世の中にはデザイン思考は様々なところで論じられているものの、アート思考については確固たる論調がまだ決まっていない。
そのような中で、タグボートの考えるアート思考とは何か、アート思考のもつ特徴とはどのようなものかについて次のコラムで説明しよう。