4月15日から5月20日まで36日間の「アート解放区」が今年も日本橋の三越前で開催される。
昨年はコロナ禍で展示ができなかったアーティストを救うプロジェクトの一環として、日本橋界隈の5か所のエリアの商業施設や未使用のビルの一室を借りて、アート作品を展示する空間を一か月間作り上げた。
それでも残念ながら昨年は会期中に緊急事態宣言が発令され、一部の商業施設では展示が不可能となってしまった。
また、コロナ禍以前では、代官山や銀座にある解体前のビルをアーティストに開放して展示するイベントを行ってきた実績を持っている。
なぜ解放区なのか
そもそもタグボートが主宰する「アート解放区」の理念とは、アーティストにとって生きづらい世の中を変えていくために、アーティストが心身ともに解放できる空間を作っていくことである。
場所やサイズなどの環境によって制約されることなしに自由に伸び伸びと制作したものを展示できる環境を作っていきたいと考えている。
タグボートの場合、阪急メンズ東京で常設のギャラリーを持ってはいるが、150名を超える取り扱いアーティストがいるので、個展、グループ展をひと通りやるだけでも10年以上はかかることとなる。
一般のギャラリーとは取り扱いアーティストの数がけた違いに多いからこそ、アーティストにはネットだけではなく実際に展示をする空間を作っていかなければならないのだ。
そこでやみくもに展示空間を増やすだけでは十分ではなくて、こだわるべきはスペースの立地である。
商業集積地、その中でも一等地でなければアート作品の展示を多くの方に見てもらい、販売に至ることは難しい。
分かりにくい場所でひそかに展示をしていても、訪れるファンや購入意欲という点では現実的にうまくいかないことが多い。
例えば、ギャラリー内で100名のアーティストに0号サイズの小作品をずらっと並べてグループ展としているようなところはあるが、そのような狭小空間の中で小さな作品を見せるだけでは、アーティストの世界観を感じることはできないと思われる。
我々は単に取り扱いアーティストに展示の場を与えるだけではなく、多くのファンに見てもらう立地と世界観を表現できるスペースの両方を満たすことを必要条件としているのだ。
オンラインとリアル展示は表裏一体
今後、ネットだけで販売するオンラインギャラリーは展示ができないことが理由で離れていくアーティストは多いだろう。
アーティストはネットに作品が掲載されることだけを目標に制作し続けているわけではない。
あくまでリアルの場所で展示ができることをモチベーションとして作品を作っている作家が多いことを理解しなければならない。
また、ギャラリースペースで展示販売するだけでは実際に観に行けるファンの数が限定されることから、オンラインでも買えるようにすることは重要である。
顧客にとっては展示会場でもオンラインでも自分の都合のよい方法で買えればよいのであり、どうしても実物を見たい人や物理的に行くことができない人の両方を取り込もうとすれば、オンラインとリアル展示は同時に実施することが求められるだろう。
アーティストの持つ可能性を最大限に広げようとすれば、どうしても取り扱いアーティストの数を絞り込み、少数精鋭の作家だけをプロモーションするのが一般のギャラリーのやり方である。
そうすることによって、数人の食べていけるアーティストが誕生するだろうが、それだけでは日本のマーケットが根本的に変わることにはならないだろう。
欧米はおろか、アジアの国からも周回遅れとなっている日本のマーケットでは、通常のやり方では背中を追うだけで近づくことすら難しいのが現状である。
富裕層の数では決して少なくはない日本だからこそ、アートマーケットが拡大できる伸びしろがあると我々は思っており、そこに機会があるのだ。
思い切った戦略転換が今の日本には求められており、市場の活性化にはなるべく多くのアーティストを解放させる仕組みが必要になっていくだろう。
アート解放区 日本橋2022
【開催概要】
日程 2022年4月15日(金)~5月20日(金) 11:00~19:00
※月曜定休 (4月18日、4月25日、5月9日、5月16日)
※5月2日(月) は開催します。
会場 三越前福島ビル (東京都中央区日本橋室町1丁目5-3 福島ビル 1F)
■出展アーティスト
ayaka nakamura / 井口エリー / 池伊田リュウ / 石井七歩 / 石山あゆみ / 今中信一 / 岩岡純子 / MKstudio / 大谷陽一郎 / 大渕花波 / 片桐直樹 / 加藤崇亮 / 川上秀行 / 木原健志郎 / 木原幸志郎 / 毛塚友梨 / 古西穂波 / 清水智裕 / JunKjapunk / 鈴木ひょっとこ / 月乃カエル / 豊田涼介 / 中浦情 / ナカムラトヲル / 濱村凌 / ヒョーゴコーイチ / フルフォード素馨 / 柳早苗 / 吉田樹保 / 渡辺佑基 / ワタナベリョウ / CALVIN HASHI (※一部変更になる可能性がございます)
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