NFTブームが変えたアート業界
この1年のアート業界を振り返ってみると、NFTアートの勃興に始まりNFTアートの狂乱に終わる一年だっといえよう。
これを単なるバブルだと言い切ってしまうのは簡単であるが、それだけではない新たな時代の始まりととらえるのが正しいだろう。
まず、NFTアートによって、それまでアートというものに全く興味を持たない人がアートに関心を持つきっかけとなったということだ。
さらにはアートは見るだけではなく買うものだということを世の中に知らせることにもつながったのだ。
それだけではない。
アートはギャラリーに行かないと買えないという認識から、ネットで普通に買えるものだということに世の中が変わっていった。
もちろん、現在NFTアートを買っている人で現代アートに造詣がある人は少ないだろうし、投機の手段として買っているのがほとんどだろう。
初期段階でNFTに投資した仮想通貨のETH長者はさらにその資産を今回のブームで増やすであろうし、この時代の流れに遅れてしまう投資家はNFTバブルの崩壊の憂き目にあうのかもしれない。
そんなことよりも、多くの人がアートを買うことに興味を持ち、どのアートを買えばよいのかを考えるきっかけになったことの意義が大きいと思っている。
NFTをきっかけにアートを買うことに興味を持った人の中には、スマホやパソコンの中だけで展開される投機的な意味のデジタルアートには飽きて、新たにフィジカルな現代アートの投資に移っていく人もいるだろう。
そう考えていくと、これからはアートマーケットが日本の30-40代の若手の富裕層にも広がっていくことが予想される。
このようなチャンスをNFTアートからもらったギフトとして受け取り、日本の現代アート業界がその普及にまい進する時期が来たのだ。
NFTアートをバブルだのまやかしだのと一刀両断にするのは容易いが、アートに興味を持ってくれた人が増えるこの機会にほんもののアートの良さを知ってもらうように尽力することこそが重要なのだ。
グローバル市場から遠ざかる日本
そのような新しいアートの市場の拡大傾向が始まる一方で懸念点もある。
その一つは、今年の11月以降、いまだに日本が鎖国政策を続けていることである。
それによって、日本のアート市場が世界から遠ざかることには危機感を感じている。
最初にオミクロン株が発見された南アフリカ共和国においてさえ、感染者の収束が見えた現段階で隔離政策をやめているし、それに応じて米国も南アの入国の規制を解除している情勢において、世界で日本だけがいまだに鎖国政策をしているのだ。
この動きに対し、WHOは名指しで「理解不能」とコメントしている。