誰もがほしいと感じる傑作とよばれる作品は一点しか存在しないので貴重価値がある。
この一点物の作品が市場において、想像以上に高い評価を受けることがしばしば見受けられる。
この高すぎる評価が持つ危険性については議論されるべきことなのだ。
数多くの作品が存在する中で、人気のある作家の作品であればなんでもよいということはない。
例えばミュージシャンの場合、同じ楽曲やアルバムを何度も聴くことはあっても、その中でも特に心に残る曲は少数であるようなものだ。
同様に、同じ作家の作品でも一部の作品が特に心に刻まれるし、その作品こそが代表作の1点になるのだ。
しかし、作家の1点しかない人気作品をどう扱うかという問題が依然として残っている。オークションで高値がつくと、その価格が市場で公開された指標となり、独り歩きを始める危険があるのだ。
寡頭競争によって高騰した作品の価格が世に出回り、そのニュースが拡散すると、実際の評価以上の価値がついてしまうことになる。これは後の暴落にもつながるため、作家にとっては非常に危険である。
アートとグッズ
最も人気のある作品をどうするかについては、いくつかの方法が考えられる。
例えば、版画作品として複製することと、グッズにすることが挙げられる。
しかし、これまでアーティストがグッズを売ることについて否定的な見解を持つギャラリー関係者が多かった。
その理由は、安価なグッズを作ることで作家の価値が下がり、作家のブランドとしての価値が安っぽくなるという懸念からである。
実際、さほど有名でないアーティストのグッズが売れないという事例は多い。
一方で、先月行われたMika Pikazoの個展では、グッズが5000点も売れるという衝撃的な出来事が起こった。
1万人が来場し、5000点が売れるということは、購入率が約50%に達する。つまり、多くの来場者がアーティストの作ったものを手にして帰ったということであり、美術業界では極めて稀なことである。
国内では美術館の有名な展覧会ではグッズの購入数が多いが、ギャラリーでの来場者の購入率50%という事例は特筆すべきものである。
グッズについては、ある程度の数量が売れないと販売元が赤字になるリスクがあるが、今の時点では1点からでも製作が可能な業者も存在する。
販売数量に応じて価格を設定すれば、赤字のリスクを軽減することができるのだ。
あくまでグッズは作家の直筆サインがないものであるが、製作段階から作家が監修することで、作品に準ずるイメージのものとなるだろう。
グッズが作品を補完するビジネスになる
これまでアーティストのグッズといえば、村上隆、奈良美智、草間彌生など超有名なアーティスト以外では販売されていないことが多かった。
しかし、これからのアート業界は、作品とグッズの違いをきちんと理解した上で、取り扱うアーティストの作品を少しでも多くの人に知ってもらい、手に取ってもらうために、グッズ展開を進めることが重要な方向性となるだろう。
そうしないとアートの大衆化とそれに応じたファン層の広がりにつながらないのだ。
特に、Mika Pikazoの個展のような成功事例を参考にすることで、グッズ販売がアーティストの価値を損なうことなく、むしろその価値を広める手段となり得るのである。
さらに、アートグッズの販売はアーティストの収入源としても注目されるべきである。従来の作品販売だけではなく、多様なグッズを通じて収益を上げることで、アーティストは経済的にも安定し、創作活動に専念できる環境が整う。
グッズの売上が高まることで、アーティスト自身のブランド価値も向上し、作品の価格にも良い影響を与える可能性がある。
このように、アート業界においては、作品の一点物としての価値を守りつつ、グッズ展開を積極的に行うことで、新たな収益源を確立し、アーティストの創作活動を支援することが求められている。
市場の動向や消費者のニーズを的確に捉え、適切な戦略を立てることで、アートとビジネスのバランスを保ちながら、持続可能な発展を遂げることができるだろう。
以上のように、よい作品の貴重価値を保ちながら、アーティストがその価値を広め、経済的にも成功するためには、グッズ展開という新しい視点を取り入れることが必要不可欠である。
これからのアート業界は、作品とグッズの双方を通じて、アーティストの魅力を最大限に引き出すことが求められるのである。