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見向きもされなくなった彼らの再就職先
「ホッチキス、もう使ってないなあ」
そんなつぶやきが、現代のオフィスにはよく似合う。
会議も資料も、今やすべてがオンライン。紙が消えれば、ペンも消える。そうなると当然、ホッチキスも、クリップも、パンチ穴補強シールも、出番を失うのだ。
だが、そんな彼らに「第二の人生」を用意した男がいる。
彼の名は土屋靖之。広島生まれの東大卒。
日々は会社員として経理の数字とにらめっこをしているが、週末には別の顔を持つ──アーティストだ。
彼の作品には、主に“文房具”が使われている。
しかも、ただ並べるだけではない。
ミニマリズムのように規則正しく整列させ、ポップアートのように親しみを感じさせ、まるでレゴブロックで幾何学模様を組み立てるように、私たちの記憶の中にある文房具たちが整然と舞台に立つのだ。
コロナ禍で始まったこのプロジェクトは、「もう使われない」と片付けられていた文房具たちに、新たな役割を与える。
まるでかつての役者が、現代劇の主役に抜擢されるような鮮やかさである。
お好み焼きとExcelが教えてくれたこと
アーティストとしての道のりは、最初から順風満帆ではなかった。
実は、土屋が最初に手がけたのはカープ(広島の野球チーム)をテーマにした油彩画だったという。
次はお好み焼きの半立体作品。しかし、アートフェアではまったく注目されなかった。
「これが黒歴史です」と彼は笑う。
だがその中にも光はあった。お好み焼きの“キャベツ部分”をシュレッダーで裁断した紙で表現したところ、「文房具で絵を描く」という感覚が生まれたのだ。
その後、作品の設計にはExcelを使うようになった。
ふつう、Excelでアートを作るなんて思わない。だが、経理の仕事で培ったスキルが、ここで活きた。
どこに何を置くか、どの順番で並べるか、全体の構成を細かく管理できるツールとして、Excelはアート制作の“地図”になった。
さらに、アクリル絵具とモデリングペーストを混ぜて、まるで革のような質感を持つ立体素材を作り、それをキャンバスに貼る新しい技法も開発された。
これにより、ただの素材配置ではなく、「絵画」としての存在感が作品に宿るようになった。
文房具という“既製品”を使いながらも、そこに自らの加工と設計を加え、唯一無二の作品に仕上げていく──それはまるで、働く人の人生をリスキリングで再構築する現代社会の縮図のようでもある。
文房具も人間も、まだ終わっていない
土屋の作品は、「文房具が主役」であると同時に、「社会の変化」をも静かに語っている。
デジタル化、リモートワーク、ペーパーレス…それらの流れにより、使われなくなった文房具は、まるで社会の片隅に追いやられたように見える。
けれども、それは「終わり」ではない。新しい舞台を見つけることで、再び輝けるのだ。
この思想は、文房具にとどまらない。私たち自身にも重なる。
AIに仕事を奪われる、役職定年で行き場を失う──そんなニュースが飛び交う時代だからこそ、誰もが“第二の舞台”を持てるという希望を、土屋の作品はさりげなく提示してくれる。
そして、それを実践しているのが土屋自身である。
平日は堅実な会社員、週末は自由なアーティスト。
彼は“二足の草鞋”を履きながら、自分の中にある両極の世界をつなぎ、それをアートへと昇華させている。
それゆえに、彼の作品は単なる「文房具アート」ではない。見れば見るほど深みがあり、使い古されたはずのホッチキスや画鋲が、新たな美の言語として語りかけてくるのだ。
文房具が語りかける声に、耳をすましてみませんか
土屋靖之の作品は、懐かしくて、新しい。
そして何より、「ものの価値は、使われ方次第でいくらでも変わる」ことを教えてくれる。
その一枚を手元に置くことは、ただの所有ではない。
──もう一度、世界を見つめ直すための、静かで力強い問いかけを手に入れることなのだ。
Schedule
Public View
4/19 (sat) 11:00 – 19:00
4/20 (sun) 11:00 – 17:00
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