今年も香港アートウィークが始まる。
2008年から毎年訪問しているので今年で12年連続で見ていることとなる。
まさに定点観測だ。
行くたびにいつも感じるのが、九龍地区にあるM+ミュージアムのオープン予定であるが、延期に延期が続きいつまで経っても開館しない。
2020年にはオープンするらしいがこればかりはどうなるかわからない。
それはさておき、香港のアートウィークである。
アートバーゼル香港というアジア最大のアートフェアと、そのサテライトフェアであるアートセントラルという二つのアートフェアに行くことがメインだ。
なんと、アートバーゼル香港のチケットを持っているとアートセントラルにも無料で行けるし、それぞれがタクシーで5分の距離にあることから便利なことこの上ない。
この時期はアートフェアだけではなく、香港に店をもつトップギャラリーの展覧会も開催されている。
David ZwirnerやHawser & Wirhの入っているHQueens、ガゴシアンやリーマン・マウピンが入居するペダービル、ホワイトキューブとペロタンが入居するビルなどがセントラル地区の徒歩10分圏内にあり、ギャラリー周りをするのにも非常に効率がよい。
まずはアートバーゼル香港であるが、合計で250軒のギャラリーが出展する巨大アートフェアであり、出展のハードルが高いので質と量の両面で十分見る方も買う方も満足できる。
また、欧米のギャラリーとアジアのギャラリーの出展数がほぼ同じ数となっているので、欧米のトレンドとアジアの変化を一挙両得にチェックすることが出来るのだ。
毎回香港に行くことで感じる変化は、欧米のギャラリーがアジアを意識した作品を取り揃えているというだけでは難しくなり、グローバルで通用するアーティストの作品をアートフェアに出品していることだ。
アジアのコレクターも目利きが多くなり、アジア向けの具象作品では満足しないことが分かってきたということだろう。
さて、香港のアートフェアを見るということは「香港のアート市場」を観察するということではない。
香港自体は700万人の都市であり、様々なハブ機能を持っているが、市場そのものはさほど大きくない。
しかしここでは「中国のアート市場」がわかる。
中国のコレクターや市場の変化は、関税がフリーで且つゲートウエイである香港のアートフェアを見ることで理解できるのだ。
香港では最近新しくLevy Gorvyのようなトップギャラリーが進出するあど中国市場を狙った欧米のギャラリーがますます増えており、群雄割拠の状況にある。
そういう中で、中国人のアーティストの変化にも今回は注目したいところだ。
つまり、中国人アーティストたちが独自の変化をたどっていくのか、はたまた欧米のトレンドを後追いするかということだ。
もちろん、多くのアーティストがいるのでその両方が存在するのだろうが、それをつぶさに観察することで今後の大きなトレンドの流れが見えていくだろう。
その中で、日本人アーティストの存在感をどのように示していくかが課題となる。
日本からの出展ギャラリーはやはり日本人アーティストを抱えて中国市場の勝負に挑むこととなる。
しかしながら、それはアートフェアだけの限定的な会期だけで何とかなるものではない。
中国では長期的かつ濃度の高いコミュニケーションが必要であり、アートフェアといった一過性のコミュニケーションだけは太刀打ちできるものではない。
だからこそ欧米のギャラリーはばか高い香港の地価でもあえてギャラリーを出展しているのだ。
メガギャラリーの後追いには莫大な資金がかかるし、資本力において後れをとる日本のギャラリーにとっては難しい局面となるだろう。
状況をつぶさに見ていくことで、タグボートが仕掛けていくタイミングとその戦略をこの香港アートウィ―クの中で見定めていくことにしたいと思う。