１０月５日に競売大手サザビーズのオークションで落札された直後に額縁に仕掛けられたバンクシーの作品がシュレッダーで裁断されたニュースはまだ耳に新しいだろう。

この事件のもつ企みや真意についてはさておき、このような事件が起こったことでバンクシーの名前が世の中に広く知れ渡ったことは間違いない。

さらにその後、バンクシーの裁断された作品は希少価値がアップすることで再販価格はかなりの値上げが期待されるだろうが、その他の作品にもよい影響がでるだろう。

バンクシーの企みはオークションのシステムをあざ笑うかのような行動であったが、それが作品の価値を上げることにつながることを知りつつ行動に移したのかもしれない。

これについては、タグボートとしても世界中の各国で開催されるオークションやアートフェアで、どのように価格が変化するのを細かく見ていきたいと思う。

また、2016年にはZOZO TOWNを運営する前澤友作氏がバスキアの大型作品６２億円で落札したことがニュースとなり、さらに昨年５月にはやはりバスキアを１２３億円で落札したことで話題となった。

前澤氏は2016年のオークションではバスキアだけでなく、ブルース・ナウマン、アレクサンダー・カルダー、リチャード・プリンスといった作品も買っていたようだ。

もちろんそれでけでなく、前澤氏は、アンディウォーホル、マーク・グロッチャン、クリストファー・ウール、ロイ・リキテンスタイン、トム・ウェッセルマン、ロバート・インディアナなどのコレクションがある。

米国や英国出身のポップアートやストリートアートをメインとしたコレクションであり、日本人アーティストの購入は少ないようだ。

前澤氏のバスキアの買い物については、業界関係者からの話では「明らかに当時の相場より高く買っている」のは事実であろう。

100億円を超える買い物について「欲しいから」といった純粋な動機もあっただろうが、それ以上に周りのアドバイザリーも含めて損得勘定を無視しているわけではないだろう。

まず言えることは、前澤氏の相場を読む才覚だ。

2008年のリーマンショックで現代アートのオークション市場は約40%ほどの落ち込みがあり、実際の売買価格も半額ほど急落したのだが、2011年以降の最近の相場では圧倒的に米国人アーティストの作品の取引が多くなっておりその価格も上がり続けているということだ。

それに対して日本人アーティストにオークション売り上げランキングは相変わらず、草間彌生、奈良美智、村上隆の御三家がベスト100に入っているが、それ以外では杉本博司くらいが上位にいるくらいだ。

最近になって五木田智央や名和晃平がメインのオークション市場に出てきてはいるが、中国人アーティストの躍進数があまりに多いので日本人アーティストは陰に隠れているように見えてしまう。

それを考えると、マーケット全体の相場を見ながら米英出身のアーティストをセレクトしているのは資産運用の意味では非常に賢明だろう。

さて、以下に記したのが、歴代のオークション落札額のTOP25位のランキングである。

1990年に大昭和製紙の斎藤了英氏が購入したゴッホとルノワールが長い期間ワールドレコードだったのだが、2000年以降は100億円超えの落札額も珍しいことではなくなってきた。

これで見ると、実は前澤氏の購入したバスキアは25位以内に入っていないことがわかる。

しかしながらよく見ていただきたい。

25位以内のオークションランキングの作家はすべて第二次大戦（1945年）以前に生まれたアーティストであるということだ。

その意味するところについて、次回じっくりと説明しよう。

＜歴代　オークションの作品販売ランキング＞