ユニクロのTシャツを求めて開店前の店舗の前で列をする中国の人たちーー。
たかがTシャツのためになぜ争奪戦が起きるのか、と不思議に思った人もいるかもしれない。
このTシャツこそが現代アートのアーティスト、カウズがユニクロとコラボしたTシャツシリーズだ。
特に今回はカウズが自身のインスタグラムで「最後のコラボ」だとにおわせたため、
いつも以上に多くの人がTシャツに殺到することとなった。
そして今夏、富士山の麓には、巨大キャラクターが寝そべっている。これもカウズの作品だ。
カウズの作り出すキャラクターを目にする機会は増えている。
過熱ぶりは今年のオークション結果を見ても明らかだ。
4月、サザビーズ香港で日本人ファッションデザイナーNIGOのコレクションが競売にかけられ、
カウズの”The Kaws Album”(2005)は予想落札価格の15倍の約16億円で落札された。
作家のオークション過去最高額の衝撃的な更新となった。
また、直近のオークションを見ても予想落札額の上限を超えて落札される作品が多い。
カウズの”The Kaws Album”(2005)
米国のニュージャージー州出身のカウズは、ニューヨークに移って グラフィティー・アーティストとして活動していた。
そこからおもちゃとアートを融合させたアート・トイやファッションブランドとのコラボレーションでの 成功に後押しされ、
ハイアートとローアートを癒合させた現代アートの旗手として、まずは欧米のコレクターが作品収集を始めた。
そしてその後、日本を含むアジアにも人気が飛び火した様子だ。
実際、昨年、原宿カルチャーに焦点に当てた11月3日のSBIアートオークションで
カウズなどの作品が競売にかけられ、30代や40代の比較的若いコレクターが集まっていたようだ。
そしてカウズを皮切りに、ストリート・アートと関連があるアーティストへの関心が高まっている。
例えば日本でも、スプレー缶を巧みに使って絵画を制作しているMADSAKI、
ストリート・カルチャーの影響を受けているKYNEらの作品が それぞれオークションで高値で落札されている。
TAGBOATとしても、こうしたストリート・アートの作家と作品を 引き続き紹介していきたいと考えている。
Madsaki Kyne
最近、カウズに関連してもう1つ話題になったが、
約10年間所属していたギャラリー、ペロタンとの別離だ。
そしてニューヨークのスカーステッド・ギャラリーがカウズの唯一の代理人になった。
ペロタンは村上隆やMr.、加藤泉ら日本の著名作家も所属する有力ギャラリーで、
カウズが「現代アーティスト」として飛躍するのに貢献したとも言われている。
ストリート・アート系の作家の作品が十分に美術作品として認められるようになり、
作家がギャラリーを選べるようになってきたということかもしれない。
いずれにしても、従来のアーティストとは異なる独自の道を切り拓いてきたカウズが
次に繰り出すのはどんな手なのか、世界中が固唾を飲んで見守っている。