タグボートが昨年8月に開催したIndependent Tokyoには150名のアーティストが参加し、約20名のギャラリストが審査を行った。
ギャラリストに選ばれた上位順に15名のアーティストがニューヨークにあるコマーシャルギャラリーで昨年11月に約1週間のグループ展を開催したのだ。
この展覧会はよくあるマンハッタンから離れたマンションの一室を使った貸しスペースで展覧会を開催するといった類のものとはまったく一線を課すものである。
異なる部分は、それが海外出展の夢を見るために一回だけの展示で終わるのか、それともニューヨークに行って、世界のトレンドとマーケットを見て、その後継続的に海外に打って出る力を付けることができるかということの違いである。
さて、海外で展示するときに、アーティストがずっと自分の出展作品の前にいて顧客対応したり、自分の作品をどう見てくれるかをずっと観察する人がいる。
正直言って作家がいたら売れるということでもないし、ギャラリーはオープニングパーティーの時こそ多くの顧客でにぎわうがそれ以外はパラパラとしか顧客は来ないので、実際にアーティストが顧客と直接コミュニケーションできる時間は少ない。
アーティストの英語が堪能ならばまだしも、片言程度の英語力でその場所にいても大してプラスになることはないだろう。
それよりも特にアートの本場であるニューヨークに行くならば、その場所でアートマーケットがどのように動いているかを知り、自分の位置づけを確認することのほうが何倍も重要だ。
つまり、現地に行くことで、今後どうやって海外展開していくかの考え方や動機付がとなるものがないと意味がないと思うからである。
前回のタグボートのニューヨークのグループ展でも参加アーティストには徹底して、チェルシーのギャラリーを一日100軒回ってアートマーケットの全体像とトレンドを肌で感じてもらうこと、現地で活動をしているアーティストのスタジオを訪問して、どのように海外でやっていくかを知ってもらうこと、次の展示場所となりえるところを訪問したり現地のキュレーターと会うことで、まさに次につなげることを意識したプログラムを組んだのである。
こちらの参考となる内容としては以下の過去のコラムを参考
作品だけ海外で展示されても、作品はそこで何も学んではくれない。
学ぶのはアーティスト自身だ。
海外で展示することの意味は、展示をした事実をプロフィールに載せるための実績作りと自己満足のためではなく、現地で何を学ぶかなのだ。
さて、タグボートはニューヨークで展示した中で実際に現地に訪問した7名のアーティストに一連のプログラムを体験してもらった後で言ったことは、
「せっかくなので、もう一度このニューヨークで展覧会をすることにチャレンジしないか」ということであった。
もちろん、ニューヨークへの再チャレンジには資金がかかることは間違いない。
しかしお金がないことを言い訳にするのではなく、クラウドファンディングを通じて資金を集めて、実際に実現しようという話をしたのだ。
夢や希望はあっても、それに向かって最短距離で何ができるかということを考えている人は少ない。
さらに、夢を実現するためにできることをすべてやっている行動力のあるアーティストはどれだけいるだろうか。
作家が本気で海外で勝負したいかという熱意が伝われば、ネットを通じて資金を集めることは難しい世の中ではなくなってきている。
実際に、7人のアーティストはニューヨークでのグループ展を目的としたクラウドファンディングを立ち上げ、計216万円の支援を集めることができた。
支援に対するリターンは全て彼らが作る作品だ。
彼らは7月17日より、昨年11月に行ってきたホワイトボックスというギャラリースペースで現地で会った佐藤恭子さんというプロのキュレーターのプロモーションも得て、二回目の展覧会を開催することにこぎつけた。
これから先は、彼らがさらにそこで何を学び何を得るかだ。
このような出会いや機会も最初はタグボートが主催するイベント「Independent」から始まってる。
まずはそこからのチャレンジで何人かのギャラリストの目に留まったのだろうが、それもアーティスト側からの積極的なアプローチなしには始まらない。
色んなつながりが重なり合って現在の2回目の海外での展覧会へとつながっている。
全ては続けようとするアーティストの意志と、そのためにどのようなプラットフォームを活用するかにかかっていると言えよう。
7月17日にニューヨークのWhiteboxにてオープニングが開催されたのだが、その様子を以下の画像でご覧頂きたい。
初日から大勢の顧客が来場し、その中にはコレクターはもちろん、TVレポーター、大学教授、ギャラリーオーナーなどもいたそうだ。
今後のこの7人のサムライの活躍は大いに期待できるだろう。
参加アーティストは、橋本仁、佐藤誠高、岡田豊、AKI SAKAMOTO、中村綾香、島田裕美子、若田勇輔