今回、タグボートのビジネスモデルのひとつとして、競争を避けるということについて述べてみようと思う。
基本的にタグボートは競争を好まない。
競争が激しい分野に自ら行くことはないということだ。
誰もが狙うようなマーケットには競合も多く、そこでは価格競争なども発生する。
相当な努力をしたにもかかわらず、最終的に得をするのは1位または2位の企業くらいまでだ。
3位以下は、ビジネス効率から見ても上位とは大きな差が出てしまうため、儲かりにくい体質となる。
そうすると、大きいところが小さいところを吸収したり、小さいところ同士が合併する「規模を追求する」動きが出てくるのだ。
さて、アート業界は、他の一般企業のように事業買収は多くないが、競争に負けて廃業となる業者は多い。
なので、タグボートは基本的には他のギャラリーがやらないことをビジネスとすることにしている。
例えば、アートフェアに出展するようなことはタグボートはしない。
アートフェアには多くのギャラリーが出展して、しのぎを削っているが、そこで圧倒的に強いのはすでに売れ筋のアーティストを持っている大手ギャラリーであり、彼らは常に最も広いブースを構えて目立っている存在だ。
タグボートがこういうところに出て勝とうとすれば、もっと大きなブースと売れ筋のアーティストが必要であろうし、また大きなブースが出せるくらいに潤沢な資金を確保しなければならないだろう。
アートフェアは大手が中小のギャラリーの顧客をすべて持って行ってしまう弱肉強食の場になっており、そこでは実力の差がさらに広がる世界なのだ。
タグボートは一度だけ、第一回目のArt Stage Singaporeというフェアに出展したことがあるが、それ以降はアートフェアには一切出展しないことにしている。
タグボートはとにかく競争がない分野に行くことしか考えていない。
ある分野でオンリーワンになれるのであれば、その分野へと突き進むのだ。
従い、他の誰もがチャンレンジしないことをやり続ける。
オンラインギャラリー、若手アーティストサポート、オンラインサロン、クラウドファンディングなどもそうだ。
他のギャラリーなら絶対に手を出さなそうなところからまずは始めるのだ。
ギャラリーの事業者が聞いて「それってどうなの?」とまだ理解していない段階でチャレンジしていきたいと思っている。
幸運なことに日本のアート業界はコンサバな人が多く、新しいものに手を出したがらない。
また業界団体は烏合の衆のように集まり、集団の横並び加減を気にしている。
そういった日本のアート業界で新しいことをすると目立つのは早い。もちろん、色々と周りから言われて叩かれるも早い。
ネットギャラリーのくせにとか、ネットの分際で、みたいな。
だからこそ、タグボートは競争をしない、または競争が多いビジネスには取り組まないようにしている。
これがタグボートウェイと呼ばれるタグボートの基本理念にも明記されている。
競争は組織を疲弊させるし、勝ち負けがはっきりするので負けたときのダメージが大きい。
であれば、敢えて競争がない分野を探して勝負するということだ。
さて、アートの聖地といえばニューヨークであり、最も巨大なマーケットがあるのは米国だ。
そこでは他と比べて圧倒的に競争が激しいことは間違いない。
タグボートはニューヨークや米国のアート市場についてさほど積極的ではないのはその競争の激しさにある。
ニューヨークはあくまでアートの実験の場であり、マーケットの最先端にあるトレンドを知る場であると理解している。
ここで競争するのは難しいということを実際の展示やアートフェアを見ていくことで痛感しているからだ。
米国以外にもマーケットが拡大していて、ニューヨークよりも競争が激しくない場所がある。
中国だ。
そうなると、中国も米国に次ぐ激しい競争のマーケットとなることが予想されるが、なぜだか分からないが中国マーケットに果敢にチャレンジする日本のギャラリーは少ない。
また、米国ではArtsy、Artspace、Amazon Artといったアートのオンライン市場が活況を呈しており競合も多い中、贋作天国の中国ではあまりアートのオンライン市場は活発ではない。
このような拡大する中国向けマーケットに向けてタグボートがどのように競争を避けながらビジネス展開するかは、「競争を避けるビジネスモデル -後編-」で明らかにしていきたい。
また最近は、現代アート市場にも多くのスタートアップが起業を始めている。
ブロックチェーン技術を使った作品登録、アートの共同保有、企業向けアート、アートのレンタルなど多種多彩だ。
これらとの差別化についてより具体的な内容を「競争を避けるビジネスモデル - 後編 – 」にて公開していく。
後編はオンラインサロンの会員のみが読めるコンテンツとなっているので、興味のある人は是非お読み頂きたいと思う。