増田恵助や鉛筆、水彩、油彩などを駆使し、柔らかな雰囲気を持つ独特の肖像画を描くアーティストです。
作家は肖像画をあくまで「平面構成」のように捉え、絵の中の要素である人物の頭部、服装、背景などを独自の組み合わせで構成し、実際には存在しない肖像を描いています。
人形町tagboat galleryにて2023年6月8日(木) ~ 7月1日(土)に個展「about a portrait」開催を予定している作家の、惹きこまれる魅力を持つ作品群をご紹介します。
架空の肖像
パネルに綿布・油彩, 41.0x 41.0 x2.5cm, 2021
作家が一貫して制作の中で取り組んでいる肖像画という主題。
写真が登場して以来、肖像画が描かれる必要がなくなった時代において、作家は新たな方法でそれを捉え直そうとしています。
絵の中の人物は極めて写実的ですが、人物の頭部やファッションは、実際にトルソーに服やアクセサリーを着用させたり、背景をデジタル上で組み合わせたりして試行錯誤し、構成した架空の肖像です。
作家はその無限の組み合わせから最適なパターンを注意深く選び出し、構成することによってどこにも存在しない肖像を描き出しているのです。
近年は特に、フランドル派や初期ルネサンスにおける細部の表現を参考にしているという細やかな描写は、まるで生きてそこに居るかのような存在感を与えています。
ghost portrait (classical redwall)
綿布にアクリル・テンペラ・乾性油, 45.5x 38 cm, 2019
certain portrait (yellow green)
パネルに帆布・油彩, 41x 31.8 cm, 2021
certain portrait (public image)
パネルに綿布・油彩, 41x 33.2 cm, 2021
絵の中にある絵
パネルに綿布・油彩, 39.0x 33.5 x2.4cm, 2022
作家が2017年から取り組んでいる「画中画」=「絵の中の絵」というテーマ。
作品の中に意図的に絵や図像を組込み、入れ子の構造になるように画面を構成しています。
たとえば人物が着用している服の柄やロゴ、背景となる壁紙の模様など。
それらの要素は決して互いに脈絡なく存在するわけではなく、呼応し合い、一分の隙も無く必然的な画面を形成しているのです。
パネルに帆布・油彩, 45.5x 38 cm, 2021
綿布にアクリル・テンペラ・乾性油, 41x 31.8 cm, 2021
綿布にアクリル・テンペラ・乾性油, 72.7x 72.7 cm, 2017
人物に映し出されるイメージ
パネルに帆布・油彩, 41x 31.8 cm, 2021
西洋絵画史における肖像画の形式を踏襲して丹念に描かれる、実際には存在しない人物像。
現代の人々が身に着けるファッションを取り入れているだけでなく、そこには時代の細やかな空気感や、温度まで投影されているかのようです。
古来の特定の人物を書いた肖像画のように、どこの誰でどんな階級であるか等、付随する情報は無く、人物は匿名性を持った純粋な存在として映し出されます。
ただ現代の人物像を描くのではない、奥深い魅力を持った肖像画は、見れば見るほど惹きこまれていくようです。
紙に水彩, 36.5x 48 cm, 2019
紙・鉛筆, 39.5x 31.7 cm, 2018
パネルに綿布・油彩, 41.0x 33.0 x2.3cm, 2022
2023年6月8日(木) ~ 7月1日(土)
営業時間:11:00-19:00 休廊日:日月祝
*オープニングレセプション:6月8日(木)18:00-19:00
入場無料・予約不要
会場:tagboat 〒103-0006 東京都中央区日本橋富沢町7-1 ザ・パークレックス人形町 1F
tagboatギャラリーにて現代アーティスト・増田恵助による個展「about a portrait」を開催いたします。
8th TAGBOAT AWARDにて小山登美夫賞を受賞した増田恵助。独特な柔らかい雰囲気に包まれているシンプルで清らかなポートレートが人気を博しています。
描かれる女性は実在する人物ではなく、手作りのトルソーに作家自ら購買した洋服やアクセサリーを被覆させ、顔のパーツを組み合わせた架空の人物像です。あるモチーフの中に同じようなモチーフが入れ子構造で入っている紋中紋という表現を用いて、角度や構図を練り、緻密に描いていきます。
西洋絵画史における肖像画の形式を踏襲して丁寧且つ細かく描かれる実際には存在しない人物は、写真技術が発展した現代においてポートレートに対する新しい位置づけを模索したプロトタイプと言えます。
tagboatでは初となる本個展では、油絵と鉛筆画を中心に展示販売致します。写実から脱したフラットな空間を生み出す作品をどうぞご覧ください。
CONCEPT
明確に作品タイトルに portrait という単語を用いたのは 2018 年の展示でした。
それまではわりと流動的で様々な構図で人物画を制作していましたが、その展
示を機に人物の上半身を斜めから捉えた肖像画の構図に絞って制作することが
多くなりました。
構図を限定的にすることで全体の色面や質感の異なるモチーフ等を作品ごとに
変えても構成としては大きく変わらず、作品はある程度の安定を保ちます。
それによって作品ごとに試せることは以前より逆に増えた感触がありました。
ここ数年はその中で少しずつマイナーチェンジを繰り返えす感じで制作してい
ます。
今回の展示ではその延長として、具象的な人物と抽象的な背景の組み合わせを
試みています。
また油彩とは違った portrait として、数年ぶりに多色刷り木版画の作品も制作し
ています。
増田 恵助Keisuke Masuda |
1981年 東京都生まれ
2004年 埼玉大学教育学部 国語専修 卒業
2006年 埼玉大学大学院 教育学研究科 美術教育専攻 修了
2010年 愛知県立芸術大学大学院 美術研究科 油画領域 修了
2012年 小豆島アーティスト・イン・レジデンス参加(小豆島町/香川)
個展
2017年
絵の中の絵(日本橋三越本店/東京)
絵の中の絵(S.Y.P/東京)
2015年
moving(ギャラリー芽楽/名古屋)
増田恵助展(伊藤美術店/名古屋)
Another Girl Another Ground(GALLERY MoMo Projects/東京)
playing(S.Y.P/東京)
2013年
water and colors (ギャラリー芽楽/名古屋)
2012年
half remembered dream (ギャラリー芽楽/名古屋)
2011年
増田恵助展(ギャラリー和田/東京)
technicolor(ギャラリー芽楽/名古屋)
主なグループ展
2014年
f(伊藤美術店/名古屋)
2013年
8th タグボートアワード入選者展・小山登美夫賞 (世田谷ものつくり学校/東京)
ワンダーシード2013(ワンダーサイト本郷/東京)
2012年
interaction vol.1(GALLERY MoMo Roppongi/東京)
2011年
ULTRA004(スパイラルガーデン/東京)
Fresh2011 4人展(伊勢現代美術館/三重)
New-laid eggs vol.2(GALLERY MoMo Ryogoku/東京)
トーキョーワンダーウォール2011(東京都現代美術館)
ワンダーシード2011(ワンダーサイト渋谷/東京)
2010年
モンブランヤングアーティストパトロネージ2010(銀座モンブラン本店)
アートアワードトーキョー丸の内2010(丸の内行幸通り地下)