緻密な線を重ねた抽象画を生み出す、鴨下容子。どこかの地形や自然現象、あるいは人物や動物のようにも見えるような形状は、ごく細いペンを操り線の密度を変化させて表現しています。
見れば見るほどに謎めいた、うごめく生き物のような線の総体。その制作の秘密と作品の奥深い魅力をご紹介します。
鴨下容子|Yoko Kamoshita |
極細のペンで描かれる緻密な線
制作に用いるペンは細ければ細いほど良いという作家は、筆圧でペンがすぐに潰れてしまうほど描き込みを加えます。
一切下描きをせずに描き始め、まるで2次元の紙面に3次元的な「空間」を構築するかのように、平面的な流れ、奥行、密度など複合的な線を重ねていくのです。
仕上がりを想定しないのは、その方が作家自身にとって必要なものを瞬時につかみとり、表現できるからだといいます。
パネル貼り・水彩紙・アクリル, 73x 51.4 x3cm, 2011
パネル貼り・水彩紙・アクリル, 65.5x 53 cm, 2021
パネルに和紙・墨汁, 27.8x 22.1 x1.8cm, 2021
頭の中で圧縮された景色
様々な見え方をするこの抽象画は、日常や自然の風景を、大胆な線で切り込んで大きくバランスを崩すようにして再解釈・再構築することで出来ていきます。
作家の目と脳が咀嚼し、まるで景色を圧縮するように描き換えられた光景。
それを作家は「風景の内側」と呼び、風景画であって風景だけではない、作家独自の表現にまで昇華しています。
パネル・アクリル, 45x 45 x3cm, 2011
パネル貼り・水彩紙・インク, 50.2x 61 x3cm, 2015
パネルに和紙・インク・アクリル, 33.4x 24.2 x1.8cm, 2021
描かれたものが見せる形
描かれているものから連想されるのは、人体の一部、複雑な地形、生い茂る森林、川の濁流…。
同じ作品を見ても人によってさまざまに姿を変えます。
惹きこまれるかのように覗き込めば、そこにまだ見ぬ何かを見つけられるかもしれません。
パネルに紙・墨汁, 16.0x 23.8 x2cm, 2021
パネルに和紙・アクリル・インク, 65.2x 53.0 x1.8cm, 2022
パネル・紙・インク, 41.2x 22.2 x2cm, 2021
鴨下容子|Yoko Kamoshita |
1982年 東京生まれ
2004年 阿佐ヶ谷美術専門学校絵画科卒業