鴨下容子は1982年東京生まれ。2004年阿佐ヶ谷美術専門学校絵画科卒業後、本格的に絵画制作を始めました。
細いペン先を自在に駆使した緻密な描線が特徴的な抽象風景画を描きます。そこに描かれる風景は、人体の一部のようにも、
鴨下容子|Yoko Kamoshita |
ー絵を描き始めたのはいつ頃ですか?
物心がついた頃から絵を描くのが好きでした。父が時々迷路やあみだくじを描いてくれたものを遊んだり真似して描く時間を楽しむ子供で、当時から写実的に描くよりも線を描くことが好きだったのだと思います。
ーアーティストを目指そうと思ったのは何時頃ですか?きっかけはなんですか?
学生時代から制作する作品は展示、発表することで完成すると思っていました。その頃から変わらない描きたいものがあって、ここで離れなければより理想とする絵にきっと近寄れるはずだと社会人になってからもひっそりと長く描き続けてきました。一時期ギャラリーにお世話になり展示しておりましたが、絵が描けない時期が長くあり制作は進まずにいました。その頃、タグボートのindependentに参加し、展示を通してこれまで描いてきたものに興味を持って頂けるという実感を久々に得ることが出来ました。それからこれからも本格的に作品を発表していきたいと思い現在に至ります。
阪急MEN’s TOKYO tagboatで開催されたグループ展「CORE Part6」展示風景(2022年6月14日~30日)
ー作風が確立するまでの経緯を教えてください。
元々は静かな日常の風景、山や川の風景画を好んで描いていました。そこからまず自身に心地好い風景を描き出した後に大きくバランスを壊す線を描き込み、そこから改めて再構築をする描き方に辿り着きました。そこへ今は抽象的に自然物や生き物、無意識から生まれる圧縮されるような空間などを描き足し【風景画だが風景だけでは無い絵】という今の作風に辿り着きました。
ー作品を発表し始めたのは何時頃ですか?発表するまでにどういった経緯がありましたか?
作品の発表は学生時代に友人とGEISAIという発表の場で多くの方にご覧頂いたのが最初だと思います。それから同じイベントに個人で数回展示をした際に、当時ギャラリーの方にお声をかけて頂き、企画展示に参加させて頂きました。
パネル貼り・水彩紙・インク, 27.2x 22.1 cm, 2020
ーアーティストステートメントについて語ってください。
線を使い空間に大地と生命などを含んだ風景画を描いています。流動的な大きな流れと密度と奥行のある土地、そこへ山や木や川、生き物、そうでないものを同じ場所に描き込んでいます。見る人それぞれに違うものを見つけて、絵の中を歩きまわって貰いたいと思いながら描いています。抽象画は近寄り難い絵になることもあるので私なりに絵の中に入りやすい親しみやすいタイトルやなんとなくでも線を目で追えるような表現を入れていますが難しいです。
ー作品はどうやって作っていますか?技法について教えてください。
基本的にパネルに紙を貼りペンとインク、墨汁やアクリルで描いています。紙は洋紙、和紙、版画紙。ペンの圧で深く沈み込むような厚みのある紙や個性的な素材感のある紙を好みます。下書きはせず、直接描きはじめて空間を作ります。大体の規模は想定しますが出来上がりは考えません。その方が安定感のないリアルな風景を描けて、今必要なものをすぐに表せると考えています。
パネル貼り・水彩紙・インク, 33.4x 24.2 cm, 2020
ー作品制作で困難な点や苦労する点を教えてください。
単色の線画を基本に長く描いてきました。実は彩色が大変苦手で色が着くと完成までの時間が大幅に伸びます。全く慣れません。
作品タイトルは私が作品に最後に持たせるお守りのようなものと思っています。数日頭を抱えやっとの思いで考えたものを作品に持たせて発表しています。タイトルは作品内に入り込んだ後で大事な役割を果たすものなので付けること自体は嫌いではありません。
ー今後の制作において挑戦したいことや意識していきたいことを教えてください。
大きな作品を作りたいです。小さい画面の作品を中心に描いてきたので線描でどれだけできるかわかりませんが最後まで描き上げて展示出来たらと思います。身体が入り込めるようなサイズの風景を描いたことがないので、今後描ける機会があればハラハラドキドキ描きたいと思います。
パネル貼り・和紙・インク, 51.5x 36.4 cm, 2017
鴨下容子|Yoko Kamoshita |
1982年 東京生まれ
2004年 阿佐ヶ谷美術専門学校絵画科卒業