リアル展示のスペースは重要
タグボートには150名を超えるアーティストが在籍している。
取り扱いをしている作家数が他のギャラリーと比較すると多いので、阪急メンズ東京のギャラリーだけではすべてのアーティストの作品を展示することはできない。
タグボートの場合、基本的に全アーティストのリアル展示を1年に1回以上することにしているので、かなりの量の展示場所の確保が必要なのだ。
もちろん場所はどこでもよいというわけではない。
都心の一等地で多くの人に見てもらえるスペースであることが必須だ。
もちろんオンラインだけの販売であればリアル展示の場所は不要かもしれないが、それでは所属しているアーティストがよい作品を制作するモチベーションにはならないと我々は考える。
つまりオンラインだけでは良い作品が集まらないのだ。
アーティストはあくまで展示を目的として作品制作をしているので、ウェブ掲載だけでは中途半端な品揃えになってしまう恐れがあるだろう。
アーティストのスカウト方法
さて、タグボートに所属するアーティストは年々増えているのだが、そのアーティストをどのようにスカウトしているかについて知りたい人は多いだろう。
オンライン専属のギャラリーの場合、あまり作品を選別せずにスカウトメールをアーティストに大量に送っている業者も多いと聞くが、そのやり方では一定のクオリティを担保することはできないだろう。
タグボートでは、主に以下の方法で新しいアーティスト常にを探している。
もちろんアーティストから作品ファイルのデータがメールで送られてくることも多く、すべてに目を通してはいるが、そういったルートからアーティストをスカウトすることは極めて少ないのは事実である。
【アートを見つけるルート】
SNS、特にInstagramでアーティストを見つけることが主流の時代になってきた。
多くのアーティストはInstagramに自身の作品を投稿することが当たり前になっているので、そこから面白い作風を探すことが多い。
SNSの世界ではイラストレーターとアーティストの区別がなく、従来のファインアートという定義にこだわることにも意味はなくなっている。
一方、萌え系イラストは可愛く描くことが重要なのでTwitterがその主戦場となっているが、現在の若年層にとっての新しい潮流を読み取る上では、そこでの活躍ぶりをチェックする必要も出てきている。
本日タグボートからデビューする「佐藤しな」については、Twitterの投稿画像で見つけたアーティストであるが、巷に氾濫する萌え系イラストとは完全に一線を画す異質な存在であった。
これからはイラストレーターがアートの世界で活躍することが増えていることはKYNEなどのイラスト作家からの人気からも理解できるかと思う。
スマホに流れるタイムラインの中でこのような才能のあるアーティストに偶然出会うことができるのもSNSの特徴だろう。
また、タグボートアワードという当社主催の公募展を過去15回やってきたのだが今年から開催を中止することとした。
その理由として、公募展式の1点だけの出品作では本当の作風やコンセプトが分かりにくいのと、実際に作家と直接話してみることの重要性を感じていたからだ。
また近年は他のギャラリーでアーティストスカウトを目的とした独自の公募展を始めるところが増えてきたので、競争を避ける当社としては自社アワードやめることとした。
一方で、8月6,7日に当社が開催するIndependent Tokyoのようなアーティストがブース出展する形式のイベントでは、複数の作品や映像、インスタレーションなど展示全体で評価できるし、さらにアーティストと直接コミュニケーションできるので非常にスカウトには効果的だ。
Independent Tokyoでは、タグボートだけではなくほかの20名を超えるギャラリストや美術関係者が集まり、一種のスカウト合戦のようになっている。
SNSや他のギャラリーでの展示を見ていると、美大出身者がアーティストにおける割合は少しずつ低くなっている印象を受ける。
すでに米国ではアーティストが美大出身者である確率が50%を切っていると言われており、必ずしも美大がアーティストの登竜門ではなくなっている。
タグボートも毎年、美大の卒業制作展に訪問してスカウトをしているが、時代の潮流の先を行くアーティストは美大出身者以外から見かけることが多くなったと感じる。
表現が多様化する中で、我々はこれまでのステレオタイプのスカウト方法ではよりよいアーティストを見つけることは難しくなり、SNSのようなオンラインによる作家発見に加えてオフラインで実際に本人と会うハイブリッド式の方法が主流となっていくだろう。
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